「6月は行事が少なくて、壁面飾りのネタが浮かばない」「あじさいくらいしか思いつかないけれど、毎年同じでは芸がない」。デイサービスや介護施設で壁面を担当していると、6月はそんな行き詰まりを感じやすい月です。ご自宅で親御さんと季節の飾りを作ろうとして、手が思うように動かない姿を見て手が止まってしまった、という方もいらっしゃるでしょう。
結論からお伝えすると、6月の壁面飾りは「工程を塗る・切る・貼るの3つに分けて分担する」だけで、握力が落ちた方も目が見えにくい方も全員が参加できます。材料は110円ショップの折り紙・花紙・画用紙の3点でほぼ足ります。特別な道具も、器用さも必要ありません。
この記事では、6月の壁面飾りとして高齢者と一緒に簡単に作れる8つの案を、材料と手順つきで紹介します。あわせて、2026年の父の日や夏至といった6月の行事の日付、色や配置で見栄えを上げるコツ、翌年も使い回す片づけ方までまとめました。作りながら昔話に花が咲く、そんな時間の作り方までお持ち帰りください。
・110円材料で作れる6月の壁面飾り8案(あじさい・かたつむり・てるてる坊主ほか)
・手が動かしにくい方でも主役になれる工程の分け方と道具選び
・2026年の父の日・夏至・時の記念日など6月の行事の日付と飾りへの活かし方
・見栄えが決まる配置と色のルール、翌年5分で復活させる片づけ方
6月の壁面飾りを高齢者と作るなら、まず「3つの工程」に分ける

壁面飾りづくりでいちばん多い失敗は、「一人ひとりに1個ずつ完成させてもらおう」とすることです。折る・切る・貼るをすべて一人で担うと、手先の力や視力に差がある集まりでは必ず取り残される方が出ます。工程を分けてしまえば、その日できることだけを担当してもらえます。
塗る・切る・貼るに分けると、握力が弱い方も最後まで参加できる
介護施設向けにあじさいの壁面飾りを紹介している介護食堂(マイナビ)の記事でも、工程を「塗る」「切る」「貼る」の3つに分け、力を発揮しやすい方にそれぞれ担当してもらう進め方が推奨されています。理由は単純で、3工程は必要な身体機能がまったく違うからです。切るにはハサミを握る力と両手の協調が要り、塗るには筆やのりを持つ指先の細かい動きが要り、貼るには位置を見定める視力と判断力が要ります。
実際の割り振りは、たとえば10人のグループなら、ハサミが使える方3人に花びらの切り出し、色ぬりが好きな方3人に台紙の背景、位置決めが得意な方4人に貼り付けを、といった具合です。1つの飾りを10人で作ると考えると、1人あたりの作業は10分程度で終わります。短時間で済むぶん、集中力が続きにくい方でも「最後まで参加した」という手応えが残ります。
注意したいのは、工程に上下をつけないことです。「切るのは難しいから、あなたは貼るだけ」という言い方をすると、担当を軽く見られたと受け取られます。「貼る位置を決める人がいないと、この飾りは完成しません」と役割の意味を先に伝えてから配ると、雰囲気がまるで変わります。
材料は110円ショップの3点でほぼ足りる|折り紙・花紙・画用紙
6月の壁面飾りに必要な材料は、折り紙・花紙(お花紙)・画用紙の3点が基本です。ダイソーの折り紙は税込110円で、「ぜんぶちがう50色おりがみ」は50枚入り、「両面折紙」は36枚入りといった構成になっています(2026年時点)。商品によって枚数は10枚から50枚まで幅があるので、あじさいのように同じ色をたくさん使う飾りでは、単色パックのほうが結果的に安く済みます。
予算の目安を出しておくと、10人規模のグループで模造紙1枚の壁面を作る場合、折り紙2袋・花紙1袋・画用紙2〜3枚・のり2本で、合計660〜880円ほどに収まります。1人あたり100円を切る計算です。ハサミ・のり・両面テープは施設や自宅にあるものを使い回せますから、毎月かかるのは紙代だけと考えて問題ありません。
気をつけたいのは、折り紙の「質感」です。片面だけ色がついた安価なタイプは、あじさいのように折り重ねる飾りだと裏の白が見えて仕上がりが締まりません。あじさいや傘など重なりが出るモチーフは両面折り紙、かたつむりの渦のように片面しか見えないモチーフは単色折り紙、と使い分けると同じ110円でも見え方が変わります。
- ☑ 折り紙(青・紫・水色の単色パック+両面タイプ)
- ☐ 花紙/お花紙(白・ピンク・水色)
- ☐ 画用紙(台紙用の白と、葉に使う緑)
- ☐ のり(スティックのりとテープのりの両方)
- ☐ 先の丸いハサミ、ばね式ハサミ(握力が弱い方用)
- ☐ マスキングテープ(壁を傷めずに貼るため)
工作そのもののアイデアをもっと広げたい方は、110円の材料で作れる別ジャンルの作品もまとめています。

デイサービスのレクを任されたとき、あるいは家で過ごす時間をもう少し豊かにしたいと思ったとき、「工作でもしてみようか」という選択肢が浮かびます。ところが実際に探し…
台紙は模造紙1枚が基準|貼り替えを前提にレイアウトする
台紙のサイズは模造紙1枚(およそ横110cm×縦80cm)を基準にすると、廊下でも食堂でも据わりがよく、材料の量も読みやすくなります。これより大きくすると1回で仕上がらず、翌週に持ち越して熱が冷めてしまいます。逆に画用紙1枚程度まで小さくすると、10人で分担する作業量がなくなります。
台紙は最初から「空白を残す設計」にしておくのがコツです。背景の空や雨の線は先に職員が描いておき、参加者が作ったあじさいやかたつむりを後から貼り足していく形にすると、当日の作業が「貼るだけ」に集約され、時間内に必ず完成します。参加者が増えても、空いているところに足していけばいいので破綻しません。
もう一つ実用的な工夫が、台紙に直接貼らずマスキングテープで仮どめしておく方法です。あとから位置を直せますし、7月に切り替えるときも、あじさいだけ外して風鈴に差し替えれば台紙を作り直さずに済みます。壁に貼る際も、画びょうではなく貼って剥がせるテープを使えば、退去時や模様替えのときに壁紙を傷めません。
6月に壁面を作る意味は「思い出を語る時間」にある
6月は梅雨で外出の機会が減り、行事も少ない月です。だからこそ、壁面飾りづくりが季節を感じる数少ない入口になります。2026年は、奄美が5月3日ごろ、沖縄が5月4日ごろ、九州南部が6月1日、関東甲信と東海が6月7日に梅雨入りしたと気象庁が発表しました。窓の外が雨続きでも、壁の中に季節を作ることはできます。
作業中の会話には、回想法と呼ばれる関わり方の要素が自然に含まれます。回想法は1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラーが提唱した心理療法で、懐かしい写真や道具、音楽を介して昔の経験を語り合うものです。5〜6人程度で行うグループ回想法という形もあり、デイサービスや特別養護老人ホームのレクリエーションとして広がってきました。
あじさいを折りながら「実家の裏庭に大きな株があった」、てるてる坊主を作りながら「運動会の前の晩に軒先に吊るした」という話が出てきたら、そこが本番です。作品の出来より、その一言を拾って広げるほうが、その日の時間としては価値があります。飾りは会話のきっかけを作る道具だと考えると、多少ゆがんでいても気になりません。
気象庁は、梅雨入り・梅雨明けの「平年」を1991〜2020年の30年平均として公表しています。発表時点の日付は速報値で、後日確定値として見直されることがあります(出典:気象庁「梅雨入りと梅雨明け」)。掲示物に日付を書き込むなら、「〇年6月7日ごろ」と「ごろ」を添えておくと後で直さずに済みます。
定番のあじさいから始める3案|折り紙・花紙・紙コップ
6月の壁面といえばあじさいです。定番すぎると感じるかもしれませんが、作り方を変えるだけで印象は大きく変わります。ここでは難易度の違う3つの作り方を紹介します。同じ壁面に3種類を混ぜて貼ると、それだけで奥行きが出ます。
案1:折り紙の四つ折りあじさい(所要15分・ハサミを使う人向け)
もっとも失敗が少ないのが、折り紙を四つ折りにして小花を量産する方法です。15cm角の折り紙を4等分に切り、その1枚をさらに四つ折りにして、開いた角を少し丸く切るだけで4枚花びらの小花が1つできます。これを20〜30個作り、台紙の上でこんもりした塊に貼り集めると、あじさいの房になります。
この方法が高齢者向きなのは、1回のハサミ操作が短いからです。曲線を長く切ると手が震えてずれますが、角を落とす程度なら数秒で終わります。切る係の方には7〜8cm角の紙を10枚ほど渡し、「角を丸く落とすだけ」とだけ伝えれば、説明を繰り返す必要もありません。青・紫・水色・ピンクを混ぜると、単色より生き生きして見えます。
仕上がりを一段よくするコツは、小花の中心に爪楊枝や指の腹で軽く押しくぼみをつけることです。平らなままより影ができて、遠目に立体的に見えます。ただし押しすぎると紙が破れるので、力が入りやすい方には省いてもらってかまいません。全部の小花に施す必要はなく、半分ほどで十分です。
案2:花紙のふんわりあじさい(所要10分・ハサミが使えなくても作れる)
ハサミを持てない方がいるグループでは、花紙(お花紙)を使う方法が向いています。花紙を4〜5枚重ね、じゃばらに折って中央を輪ゴムか針金でとめ、端を丸く整えてから1枚ずつ立ち上げていくだけです。切る工程がなく、指先でつまんで開く動作が中心になります。
この「1枚ずつ開く」作業は、握力より指先のつまむ力を使うため、力が落ちた方でもゆっくり続けられます。1つ開ききるのに3〜4分かかりますが、急がせる必要はありません。開き方が甘くても、複数を寄せて貼ると隙間が埋まって見栄えします。10人で作れば10個のふんわり玉ができ、それだけで壁面の主役になります。
注意点は、花紙が薄く破れやすいことです。爪が伸びている方や、力の加減が難しい方が引っ張ると、途中で裂けてしまいます。あらかじめ「破れても味になります」と伝えておくのと、予備の花紙を多めに用意しておくのとで、場の空気が違ってきます。破れた花紙は小さくちぎって雨のしずくに転用すれば無駄になりません。
案3:紙コップのあじさいリース(所要20分・数人での共同作業向け)
立体感を出したいときは、紙コップを縦に4〜5等分に切り開いて花びら状にし、外側に反らせてあじさいの一房に見立てる方法があります。中央に小さく丸めた花紙を詰め、複数を円形に並べてリースにすると、平面の壁面飾りとは違う存在感が出ます。玄関やエレベーターホールなど、人が立ち止まる場所に向いています。
紙コップを切る工程は硬さがあるため、職員や家族が下ごしらえをしておくのが現実的です。参加者には、色を塗る・花紙を詰める・並べて貼るという柔らかい工程を担当してもらいます。絵の具よりも、水性ペンやクレヨンのほうが乾き待ちがなく、その場で次に進めます。
やりがちな失敗は、リースの土台を段ボールなどで重く作ってしまい、壁に貼れなくなることです。土台は画用紙を輪にしたものか、紙皿の中央をくり抜いたもので十分です。軽く仕上げておけば、マスキングテープでも落ちません。
「あじさいは何色に塗ればいいの」と聞かれたら、こう答えられます。あじさいの花の色は、アントシアニンという色素とアルミニウムイオンが結びつくと青、結びつかないと赤(ピンク)になります。アルミニウムは土のpHが5.5以下でイオン化し始め、4.5以下でほとんどがイオン化するため、酸性の土では青、アルカリ性ではピンクに寄ります。つまり「正解の色」はなく、育った土で決まるということ。だから壁面でも青と紫とピンクが同居していておかしくありません。なお、もともとアントシアニンを含まない白いあじさいは、土を変えても色が変わりません。
あじさいの色は「土のpH」で決まる|正解がないから混色でいい
意外と知られていないのですが、あじさいは同じ株でも植えた場所によって色が違います。上の知恵枠のとおり、色を決めているのは花の側ではなく土の側です。近所の家では青く、お寺の境内ではピンクだった、という記憶が食い違うのは、どちらの記憶も正しいからです。
この話は、作業中の会話の種として使い勝手があります。「昔うちのあじさいは青かった」「うちはピンクだった」という話は、住んでいた土地の話につながり、家の間取りや庭の話に広がっていきます。色の正解を決めずに、青・紫・ピンク・白を全部混ぜて用意しておくと、それぞれが自分の記憶の色を選べます。
色を混ぜる際の実用的な目安は、青系と紫系を全体の7割、ピンクと白を3割にすることです。6月らしい落ち着きを保ちながら、単調にならない配分になります。赤や黄色といった暖色を入れると梅雨の空気から離れてしまうので、暖色は次の項で紹介するかたつむりやカエルなど、小さなモチーフに回すときれいにまとまります。
雨の日が楽しくなる3案|かたつむり・てるてる坊主・傘

あじさいだけでは壁面が単調になります。そこに雨のモチーフを足すと、一枚の風景として物語が生まれます。ここで紹介する3案は、いずれも所要10分前後で、ハサミの使用量も少なめです。
案4:うずまきかたつむり(所要10分・線をなぞるだけ)
かたつむりの殻は、画用紙を丸く切り、外側から中心に向かって渦巻き状に切り込むだけで作れます。切り終えた渦を少し引き伸ばして中心を浮かせると、立体的な殻になります。胴体は別の画用紙を丸く切って貼り、目玉は丸シールか手描きで十分です。
この案の利点は、あらかじめ職員が鉛筆で渦の線を引いておけば、参加者は線をなぞって切るだけで済むことです。自由に切る作業は迷いが生まれますが、なぞる作業は迷いません。認知機能の低下がある方でも、線という手がかりがあれば手が動きます。1人1匹作って、壁面のあちこちに散らして貼ると、探す楽しみのある壁面になります。
注意点は、渦を細く切りすぎると途中でちぎれることです。線を引く段階で、渦の幅を2cm前後と広めにとっておくと、ハサミがぶれても切り離れません。それでもちぎれてしまったら、短い渦のままでも小さなかたつむりとして成立します。「失敗ではなく子どものかたつむり」と言い換えると、その場が和みます。
案5:顔を描かないてるてる坊主(所要5分・全員が1個ずつ作れる)
てるてる坊主は、丸めた新聞紙やティッシュを白い紙・布で包み、首を輪ゴムでとめるだけです。所要5分で、ハサミものりも使いません。作業量が少ないので、時間が余ったときの追加メニューとしても使えます。作った数だけ壁面上部から吊るすと、それだけで賑やかになります。
ここで一つ、会話が弾む豆知識があります。てるてる坊主の起源は中国の「掃晴娘」という、箒を持った娘をかたどった切り紙人形とされ、江戸時代の文献でも類似が指摘されています。そして本来は顔を描かずに吊るし、晴れたらお礼に顔を描いて供えるのが習わしでした。作業前にこの話をしてから「では顔は描かずにいきましょう」と進めると、由来を知る時間と作る時間が一続きになります。
注意したいのは吊るす向きです。逆さに吊るしたてるてる坊主は雨を呼ぶと言われます。壁面に貼るときも、まっすぐ下を向く形にしておくのが無難です。梅雨の時期に「雨を呼ぶ向き」で飾ってしまうと、気にされる方が出てきます。細かいことのようですが、意味を知っている方ほど気になる部分です。
案6:折り紙の傘(所要10分・組み合わせて相合い傘にも)
傘は、折り紙を三角に折って端を少し丸く切り、開いて半円状にし、持ち手を細く切った画用紙で足すだけで作れます。開いた傘の中央から放射状に線を描き入れると、骨組みらしく見えます。1人1本作って並べると、壁の下半分がぐっと6月らしくなります。
傘は配置の自由度が高いのが利点です。あじさいの下に置けば雨宿り、上部に並べれば雨模様、かたつむりの隣に小さく置けば物語が生まれます。2本を並べて柄を近づけると相合い傘になり、それだけで笑いが起きることもあります。夫婦で通われている方がいる場では、名前を入れるかどうかは本人に確認してからにしてください。
失敗しやすいのは、持ち手を細くしすぎて折れてしまうことです。持ち手の幅は1cm以上とっておくと、貼るときにちぎれません。また、傘の骨線を定規で引こうとすると手が震えて曲がりますから、フリーハンドで引いてもらってかまいません。多少曲がっているほうが手作りらしい味になります。
壁面づくりでいちばん多い失敗が、液体のりを塗った上にすぐ次のパーツを重ね、紙が波打ってよれてしまうことです。原因は、水分を含んだ紙が乾く過程で縮むこと。特に花紙や薄い折り紙は影響が大きく、完成直後はきれいでも翌日にはしわだらけになります。対策は3つです。(1)薄い紙にはスティックのりかテープのりを使い、液体のりは画用紙など厚手だけに限る。(2)重ねる場合は下のパーツを貼ってから5分ほど置く。(3)どうしても急ぐときは、のりを全面ではなく中央の一点だけに付ける。一点どめなら紙が自由に伸縮できるので、よれません。
6月ならではの行事を飾る2案|父の日と時の記念日
6月は祝日がなく行事が少ない月だと思われがちですが、暦を見ると意外に材料があります。ここでは壁面に取り入れやすい2つの行事の飾りと、添えるだけで季節感が出る小ワザを紹介します。
案7:父の日のネクタイ飾り(2026年は6月21日)
2026年の父の日は6月21日(日)です。父の日は6月の第3日曜日なので毎年日付が変わり、掲示物に日付を書く際は確認が必要になります。飾りとしては、折り紙で作るネクタイが定番です。折り紙を縦に細長く折り、上部を三角に折り返して結び目を作れば、5分ほどでネクタイの形になります。
ネクタイ飾りが場に合うのは、話題が具体的だからです。「どんな柄のネクタイをしていたか」「ネクタイを毎朝結んでもらっていたか」といった話は、働いていた時代の記憶に直結します。男性利用者が少ない場では「お父さん」でなく「お世話になった人」に広げると、参加しづらさが減ります。ネクタイに一言メッセージを書き込んで壁面に貼る形にすれば、そのまま職員へのねぎらいの掲示にもなります。
配慮が必要なのは、父親との関係が良好でない方や、早くに父親を亡くした方がいる場合です。「お父さんに感謝を伝えましょう」と一律に呼びかけるのではなく、「6月の第3日曜は父の日です。誰か思い出す人がいたら書いてみてください」という開き方にすると、無理なく参加してもらえます。書かない自由も残しておくのが大切です。
案8:時の記念日の大時計(6月10日・数字の切り貼りが中心)
6月10日は時の記念日です。画用紙で大きな円を作り、1から12までの数字を切り貼りして長針・短針を付ければ、壁面の中心に据えられる大時計になります。数字を切る人、貼る人、針を作る人と分担でき、位置を決める作業には計算と判断が入るため、手先だけでなく頭も使うレクリエーションになります。
この記念日は、由来を話すと場が静かになる話題でもあります。時の記念日は1920年(大正9年)に東京天文台と生活改善同盟会によって制定されました。『日本書紀』に、天智天皇10年4月25日に漏刻(水時計)を新台に置き、初めて時を知らせる鐘鼓を鳴らしたという記載があり、これを現在の暦に当てはめると671年6月10日にあたることが由来です。詳しくは奈良文化財研究所 飛鳥資料館の解説でも紹介されています。
注意点は、数字の配置を間違えやすいことです。12・3・6・9の4つを先に貼ってから間を埋めると、ずれません。また、実際に動く時計と並べて掲示すると「時計が2つあって紛らわしい」と混乱される方もいます。飾りの時計は、あえて針を外して数字だけの飾りにする、あるいは掲示位置を実際の時計から離すという工夫が要ります。
- Step1: 15cm角の折り紙を縦半分に折って開き、中心線に向かって両端を折る(細長い帯になる)
- Step2: 上端を三角に折り返し、その少し下で左右を斜めに折って結び目を作る
- Step3: 下端を左右から斜めに折り、ネクタイの剣先の形に整える
- Step4: 白い画用紙で襟の形を切り、ネクタイの上に重ねて貼る
- Step5: ネクタイの面に一言メッセージを書き、台紙に並べて貼る
夏至・衣替え・夏越の祓を添えると、6月の壁面に深みが出る
2026年の夏至は6月21日17時25分です(国立天文台の暦要項による)。奇しくも同じ日が父の日にあたるため、2026年の6月21日は「一年で昼がいちばん長い日」と「父の日」が重なります。東京では夏至の日の出が4時25分ごろ、日の入りが19時00分ごろで、昼の長さは約14時間35分。冬至の約9時間45分と比べると4時間50分ほど長い計算です。太陽を大きく描いて隅に貼るだけでも、この話ができます。
6月1日の衣替えも、壁面の話題に向いています。「衣替え」という言葉は平安時代の宮中行事「更衣」に由来し、明治6年に新暦が採用された際、6月1日から9月30日が夏服、10月1日から翌年5月31日が冬服と定められました。これが学生服から一般に広がり、今の習慣になっています。着物や制服の話は、それぞれの時代の暮らしの話に直結します。
月末の6月30日には夏越の祓があります。1年の半分にあたるこの日に、半年で溜まった厄を祓う神事で、起源は大宝律令(701年)の神祇令にさかのぼるとされます。神社の茅の輪をくぐる風習は室町時代にはあったと伝えられ、三角形のういろうに小豆をのせた和菓子「水無月」を食べる習慣も残っています。壁面の隅に小さな茅の輪を作って添えると、「くぐったことがある」という方の話が出てきます。
8案を難易度と所要時間で比べる早見表
ここまで紹介した8案を、手の力の要り具合と所要時間で並べたのが下の表です。当日の参加者の顔ぶれを思い浮かべながら、上から2つ、下から1つといった組み合わせで選ぶと、全員に出番が回ります。
| 飾り | 主な材料 | 所要時間 | 手の力 |
|---|---|---|---|
| 案1 四つ折りあじさい | 折り紙 | 15分 | 中(ハサミ) |
| 案2 花紙のあじさい | 花紙・輪ゴム | 10分 | 小(つまむだけ) |
| 案3 紙コップのリース | 紙コップ・花紙 | 20分 | 中(下切りは職員) |
| 案4 うずまきかたつむり | 画用紙 | 10分 | 中(線をなぞる) |
| 案5 てるてる坊主 | 白紙・輪ゴム | 5分 | 小(丸めて包む) |
| 案6 折り紙の傘 | 折り紙・画用紙 | 10分 | 中(折る+切る) |
| 案7 父の日のネクタイ | 折り紙・画用紙 | 15分 | 小(折るだけ) |
| 案8 時の記念日の大時計 | 画用紙 | 20分 | 中(切る+配置) |
※10人規模のグループで分担した場合の目安(高齢者あんしんノート調べ)
手が動かしにくい人も主役になれる|参加の工夫と安全対策
壁面づくりで置き去りにされやすいのが、麻痺のある方、握力が落ちた方、視力が弱い方です。道具と声かけを少し変えるだけで、この方々が中心に立てます。ここでは立場や状態別の工夫をまとめます。
握力が弱い方・片麻痺の方の道具選び
握力が落ちた方には、ばね式(自動で開くタイプ)のハサミが役立ちます。閉じる力だけで切れるので、開く動作の負担がなくなります。片麻痺で紙を押さえられない方には、滑り止めマットを机に敷き、紙をマスキングテープで軽く固定してから作業してもらうと、片手で切れます。
のりも見直す価値があります。スティックのりはキャップを外す動作に力が要り、液体のりは量の調節が難しくなります。テープのりであれば、押し当てて引くだけで済み、指も汚れません。1本300円前後と液体のりより高くつきますが、1本で何度も使えますし、途中で「手が汚れた」と作業が中断しないぶん、結果的に時間が節約できます。
やってしまいがちなのは、道具を配ったあとに手を出しすぎることです。切りにくそうにしていると、つい代わりに切ってしまいたくなりますが、そこで手を出すと役割が消えます。時間がかかっても、その方のペースで進めてもらい、時間内に終わらない分は翌週に回す設計にしておくと、無理に手を出さずに済みます。
目が見えにくい方には「大きく・濃く・触れる」の3原則
視力が落ちた方には、パーツを大きくすることが最優先です。あじさいの小花を7〜8cm角ではなく12cm角で作れば、輪郭が見えます。線を引く場合も、鉛筆ではなく黒の油性ペンで太く描くと、コントラストがついて追いやすくなります。台紙の背景を白にして、パーツを濃い色にするのも同じ考え方です。
もう一つ有効なのが「触れる素材」を混ぜることです。花紙のふんわりした感触、画用紙のざらつき、折り紙のつるつるした表面は、見えなくても手で違いがわかります。「今持っているのが花紙です、ふわっとしていますね」と言葉を添えながら渡すと、素材の把握が進みます。完成した壁面も、車いすや椅子から手が届く高さに一部を配置しておくと、触って確かめられます。
注意点は、見えにくさを本人が言い出しにくい場合があることです。「見えますか」と直接聞くより、「この色、少し薄いですかね」と作品の側に問題があるかのように尋ねると、答えやすくなります。返答を聞いてから太いペンに替えれば、本人の負い目にはなりません。
誤飲・けがを防ぐ|小さいパーツとハサミの管理
安全面で押さえたいのは、小さいパーツとハサミの2点です。ビーズ、丸シールの台紙、輪ゴム、爪楊枝といった小物は、認知機能の低下がある方が口に運んでしまう恐れがあります。テーブルの上には、その工程で使う分だけを小皿に出し、使い終わったら回収するのが基本です。まとめて袋のまま置かないだけで、リスクは大きく下がります。
ハサミは、先が丸いタイプを選び、使わない時間は職員が預かる運用にします。作業に集中しているときは問題が起きにくく、休憩や配茶のタイミングで放置されたハサミが危険になります。「配茶の前に道具を回収する」と手順に組み込んでおくと、抜けません。
接着剤も見落としがちです。強力な接着剤や瞬間接着剤は皮膚がくっつく事故につながるため、壁面づくりでは使わない前提で設計します。紙同士なら、のりと両面テープで足ります。紙コップのように接着しにくい素材を使う場合も、両面テープを厚めに使えば固定できます。
悪気なく「〇〇さん、上手ですね」と一人だけを褒めると、その場では和みますが、次回から参加しなくなる方が出ます。原因は、作業が「評価される場」に変わってしまうこと。うまく作れない自覚がある方ほど、評価の場を避けます。対策は、褒める対象を出来映えから行動に移すことです。「〇〇さんが色を選んでくれたから、この壁面がまとまりました」「渦を切るのを引き受けてくださって助かりました」と、貢献の中身を言葉にします。全員に一言ずつ、必ず別々の観点で声をかけると決めておくと、偏りません。
壁面づくり以外のレクリエーションと組み合わせたいときは、道具のいらない座位でできる遊びも用意しておくと、体調に合わせて切り替えられます。

デイサービスや介護施設でレクリエーションを任されたとき、あるいは久しぶりに帰省した実家で親と過ごす時間ができたとき、「立ってもらうのは不安だけれど、じっと座って…
飾り付けで見栄えが決まる|配置・色・貼り方のコツ
同じパーツを使っても、貼り方ひとつで仕上がりは変わります。ここでは、専門的なデザインの知識がなくても再現できる3つのルールと、壁を傷めない貼り方を紹介します。
「主役1・脇役3」で配置すると、素人っぽさが消える
壁面が散らかって見える原因は、すべてのパーツを同じ大きさで均等に並べることです。目線の置きどころがなくなり、まとまりがなく見えます。対策は、いちばん大きな塊を1つ決めて、そこから小さいパーツを流していく配置です。たとえば左下にあじさいの大きな房を1つ置き、右上に向かって傘・かたつむり・しずくを小さくしながら散らす、といった具合です。
面積の目安は、主役が壁面全体の3割、脇役が2割、残り5割は空白です。この空白が季節感を生みます。意外と知られていないのですが、貼るパーツを増やすほど見栄えが悪くなるのは、この空白が消えるからです。作品が余ったら全部貼りたくなりますが、貼りきらずに残しておき、翌週に差し替えるほうが結果的にきれいに見えます。
やりがちな失敗は、パーツを壁面の四隅にきれいに配置してしまうことです。四隅が埋まると額縁のように見え、中央が間延びします。四隅のうち2か所は意識して空けておくと、視線が中央に集まります。
色は3色+差し色1色まで|6月は青・紫・緑が基調
色数を絞ると、それだけで整って見えます。6月の壁面なら、青・紫・緑を基調にして、差し色にピンクか黄色を1色だけ加える構成が扱いやすくなります。あじさいで青と紫、葉と背景で緑、かたつむりやカエルに差し色を使えば、この配分になります。
色を絞る理由は、季節が伝わりやすくなるからです。梅雨の空気は寒色で表現されます。赤・オレンジ・黄色を多く入れると秋やお祭りの印象に寄り、6月らしさが薄れます。前の項で触れた「あじさいの色は土のpHで決まる」話のとおり、青と紫とピンクは同じ株でも起きる色ですから、この3色を混ぜるぶんには自然です。
注意点は、参加者の希望を封じないことです。「赤い花を作りたい」と言う方に「6月らしくないので」と断るのは本末転倒になります。その場合は、壁面の中央ではなく端に配置する、小さく作ってもらうといった置き場所の調整で対応します。色のルールは職員が仕上げを整えるための道具であって、参加者に守らせるものではありません。
壁を傷めずに貼る|マスキングテープと掲示の高さ
賃貸住宅や施設の共用部では、画びょうやセロハンテープで壁紙が傷むことがあります。貼って剥がせるマスキングテープを台紙の裏に輪にして使うか、粘着力の弱い養生テープを使うと、剥がしたあとが残りにくくなります。大きな台紙を貼るときは、上辺2か所と下辺2か所の計4点でとめると、たわみません。
掲示の高さは、立っている職員の目線ではなく、座っている方の目線に合わせます。車いすや椅子に座った状態で見上げる位置に貼ると、首が疲れて長く眺めてもらえません。壁面の中心が、座った方の目線と同じか少し下に来るくらいが見やすい高さです。実際に椅子に座って確認してから貼ると、失敗がありません。
湿気の多い6月は、のりの効きが落ちる時期でもあります。壁が結露しやすい場所や、窓際の日が当たる場所は避け、廊下の内側の壁を選ぶと、月末まで落ちずに保ちます。落ちてしまった作品を貼り直すのは、作った本人の目に触れると気まずいものですから、貼る場所選びは最初にすませておきたいところです。
写真を撮るなら、完成直後ではなく「貼っている最中」がおすすめです。手が伸びている場面、指さして相談している場面が写ると、ご家族に見せたときの伝わり方が変わります。完成写真だけでは、誰が何をしたのかがわかりません。撮った写真は台紙の隅に小さくプリントして貼っておくと、翌年その壁面を作るときの手順書にもなります。写真の掲示や配布には本人・ご家族の同意が必要ですから、施設の運用ルールを先に確認してください。
6月が終わったら|片づけ・使い回し・翌年へ残すコツ
作るときの手間より、片づけの段階で差が出ます。ここを整えておくと、翌年の6月が驚くほど楽になります。7月への切り替えもあわせて設計しておきましょう。
パーツ単位で保存すると、翌年は5分で復活する
壁面を丸ごと保管しようとすると、模造紙が折れて筋がつき、結局使えません。剥がす段階でパーツをモチーフごとに分け、あじさいの小花、かたつむり、傘、てるてる坊主と種類別にクリアファイルか封筒に入れて保管します。封筒の表に「6月・あじさい小花・30個・2026年」と書いておけば、翌年に開けた瞬間に使えます。
この方法が効くのは、壁面づくりの手間の大半がパーツ作りだからです。貼る作業だけなら10分で終わります。翌年は、保存パーツを土台にして新しいパーツを足していく形にすれば、参加者は「新しく作る楽しみ」を保ちながら、職員は準備時間を減らせます。3年続ければ、6月の引き出しには十分な在庫がたまります。
注意点は、湿気と紙魚(しみ)です。梅雨明けまで押し入れに入れっぱなしにすると、紙が波打ったりカビが出たりします。乾燥剤を1袋入れ、床置きせず棚の上に置くだけで、状態が保てます。花紙のように薄い素材は形が潰れるので、厚紙を1枚添えて挟んでおくと安心です。
7月への切り替えは「傘を風鈴に替えるだけ」でいい
6月から7月への模様替えは、全部作り直す必要がありません。台紙の背景と葉はそのまま残し、傘とてるてる坊主を外して風鈴と朝顔に差し替えるだけで、季節が進みます。介護現場で紹介されている風鈴の壁面飾りは6月から8月まで使える定番で、梅雨明け前から準備しておくと切り替えが1日で終わります。
差し替え前提で作るには、最初の設計段階でパーツを台紙に直貼りせず、マスキングテープで留めておくことです。前の項でも触れましたが、この一手間が7月の作業量を半分にします。あじさいは7月上旬まで残していても違和感がないので、外す順番は傘・てるてる坊主から、と決めておくと迷いません。
やりがちなのは、月が替わった当日に慌てて全部剥がすことです。作った方が「せっかく作ったのに」と感じる場面になります。「来週から7月の飾りに替えますので、今週いっぱいはこのままで」と予告してから外すと、納得して次に進めます。外したパーツを本人に手渡して持ち帰ってもらうのも一つの方法です。
一年中使える土台を1枚作っておくと、毎月の負担が減る
毎月ゼロから台紙を作るのは負担が大きすぎます。背景の空・地面・木の幹だけを描いた「一年中使える土台」を1枚しっかり作っておき、季節ごとに葉や花、行事のモチーフを差し替える運用にすると、月々の作業がパーツ作りだけになります。土台は厚手の模造紙か、色画用紙を貼り合わせて丈夫に作るのが長持ちのコツです。
この方式のもう一つの利点は、参加者にとって「同じ場所の風景が季節で変わっていく」という連続性が生まれることです。同じ木にあじさいが咲き、秋にはもみじが色づき、冬には雪が積もる。毎月まったく別の絵になるより、変化が伝わりやすくなります。
季節ごとの差し替えパターンをまとめて知りたい方は、一年分の設計をまとめた記事も参考になります。

デイサービスや特別養護老人ホームの壁を前にして、「今月は何を貼ろう」と手が止まったことはありませんか。桜が終われば紫陽花、紫陽花が終われば花火、花火が終われば紅…
- Step1: 外す1週間前に「来週から7月の飾りに替えます」と予告する
- Step2: パーツをモチーフ別に分け、封筒に「6月・種類・個数・年」を記入
- Step3: 乾燥剤を入れて棚の上に保管(床置きと押し入れの奥は避ける)
- Step4: 土台の傷んだ箇所を補修し、次の月のパーツを貼る位置だけ決めておく
- Step5: 完成写真を1枚プリントして土台の裏に貼り、翌年の手順書にする
まとめ:6月の壁面飾りは「分担」と「110円」で誰でも作れる
6月の壁面飾りづくりでつまずくのは、たいてい「一人で1個完成させてもらおう」としたときです。塗る・切る・貼るの3工程に分けて配れば、握力が落ちた方も、目が見えにくい方も、その日できることで参加できます。作品の出来映えを競う場ではなく、季節の話をする場だと考えれば、多少ゆがんだあじさいも壁面の一部として収まります。
材料は110円ショップの折り紙・花紙・画用紙の3点で足り、10人規模でも1回660〜880円ほど。あじさい3案、かたつむり・てるてる坊主・傘の3案、父の日と時の記念日の2案、合わせて8案から、その日の顔ぶれに合うものを2〜3種類選べば1時間の枠に収まります。2026年は父の日と夏至がどちらも6月21日ですから、太陽とネクタイを並べて貼る、という遊び方もできます。
仕上げは、主役1つに脇役を流す配置と、青・紫・緑+差し色1色という色のルール。空白を5割残すことを覚えておけば、それだけで見栄えが整います。貼る高さは、立っている人ではなく座っている方の目線に合わせてください。
最初の一歩としておすすめしたいのは、次の買い物のついでに110円ショップで単色の折り紙を1袋だけ買っておくことです。青か紫を1袋。それを机に出して四つ折りにし、角を丸く切るところから始めれば、5分で最初の小花ができます。あとは同じことを繰り返し、誰かに「これ、何を作っているの」と聞かれたら、その時点でもう壁面づくりは始まっています。
なお、この記事で紹介した暦や行事の日付は2026年時点のものです。夏至の時刻は国立天文台の暦要項、梅雨入りの発表は気象庁で最新の情報をご確認ください。施設での掲示物の運用や写真の取り扱いについては、それぞれの施設のルールや自治体の方針に従ってください。

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