「エンディングノートを書いておきたいけれど、書店で見た市販品は項目が多すぎて気後れした」「手元のノートで自分なりに作ってもいいのかしら」。終活の話題が身近になってくると、こんな迷いを抱える方が増えてきます。お茶の席で友人から「うちはもう書いたわよ」と聞いて、少し焦った方もいるかもしれません。
先に結論をお伝えすると、エンディングノートは自作でまったく問題ありません。法的な効力を持たないノートなので形式の決まりがなく、家にある大学ノートでも、パソコンのWordでも、あなたが書きやすい形で作ってよいのです。むしろ自作のほうが、自分の暮らしに合った項目だけを選べるぶん、最後まで書き上げやすいという面があります。
この記事では、自作するときに用意するもの、最初に埋めたい「7項目」、途中で挫折しない進め方、遺言書との違い、保管場所と家族への伝え方までを順番に整理しました。読み終えたころには「今夜、1項目だけ書いてみよう」と思えるはずです。
・エンディングノートを自作してよい理由と、市販品・アプリとの違い
・ノート1冊で始められる「最低限の7項目」と書き方のコツ
・遺言書との違い、自作ノートでできること・できないこと
・家族が困らない保管場所と、伝え方の4つの手順
エンディングノートの自作は「アリ」どころか続けやすい選択肢

自作でも役割はきちんと果たせる
エンディングノートは、手作りでも市販品と同じ役割を果たせます。書く目的は「万が一の際に家族が迷わないようにすること」と「自分の想いを家族へ確実に伝えること」の2つで、どのノートに書いたかは関係ないからです。
そもそもエンディングノートは、生前に自分の思いを整理して家族に伝えるためのノートで、法的な効力を持ちません。遺言書のように厳格な書式が求められないため、市販のひな型を使っても、PCやスマホで作っても、手書きのノートでも、どの書き方でも大丈夫とされています。
たとえば「銀行はどこに口座があるか」「葬儀は家族にお任せでいい」「ありがとうの一言」。この3つが書かれているだけでも、残された家族の負担は大きく変わります。立派な装丁かどうかより、必要な情報が書いてあるかどうかが大切です。
ただし「自由に書ける」ということは、「抜けやすい」ということでもあります。市販品なら印刷されている項目を、自作では自分で思い出して書き出さなければなりません。この記事の後半で紹介する7項目を目次代わりにすると、抜けを防げます。
市販品・テンプレート・アプリと比べてどう違う?
作り方は大きく分けて、市販品を買う、自作ノートに書く、無料テンプレートを使う、アプリで作る、の4通りです。どれが正解ということはなく、手間と自由度のどちらを優先するかで選び方が変わります。
市販されているエンディングノートは、だいたい500円から2,000円前後が相場です。項目が最初から印刷されているので迷いにくい反面、「うちには関係ない」ページも多く、空欄の多さに気が重くなる方も少なくありません。
無料テンプレートは、PDFやWord、Excel、Canvaなどの形式で公開されていて、必要なページだけを選んで印刷できるのが特長です。アプリは質問に答えていくだけで形になり、編集もしやすい一方、スマホ操作に慣れていないと家族が開けないという心配も残ります。
比べてみると、自作ノートは「費用がほとんどかからない」「項目を自分で決められる」「手書きの温かみが残る」という3点で強みがあります。以下の表は、選ぶときの目安として当ブログで整理したものです。
| 作り方 | 費用の目安 | 自由度 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 自作ノート(手書き) | 手持ちのノートでOK | ◎ | 書く項目を自分で選びたい人 |
| Word・Googleドキュメント | 印刷代のみ | ◎ | こまめに書き直したい人 |
| 無料テンプレート・自治体版 | 無料(印刷代のみ) | ○ | ひな形があると安心な人 |
| アプリ | 基本無料のものあり | △ | スマホ操作に慣れている人 |
| 市販品 | 500円から2,000円前後 | △ | 項目の抜けを防ぎたい人 |
※高齢者あんしんノート調べ。自由度は「項目を自分で足し引きできるか」で比較
市販品の具体的な選び方は、別の記事で詳しく比べています。

「そろそろエンディングノートを1冊」と思って売り場に立ったものの、無料でもらえるものから2,000円を超えるものまで並んでいて、結局手ぶらで帰ってきた。そんな経…
こんな人には自作が向いている
自作が特に向いているのは、「市販品を買ったけれど白紙のまま引き出しに眠っている人」と「家族構成や財産がシンプルな人」です。必要な項目だけで作れるので、ページをめくるたびに空欄が目に入るストレスがありません。
理由は単純で、市販品は幅広い人向けに作られているからです。ペットを飼っていない人にペットのページは不要ですし、持ち家でなければ不動産の欄はほぼ使いません。空欄が多いと「まだ半分も書けていない」と感じ、それが挫折の原因になりがちです。
具体的には、夫婦二人暮らしで子どもが遠方にいる方、趣味の仲間や地域のつながりが多く連絡先を詳しく残したい方、自分史や思い出の写真を中心にしたい方などは、自作のほうが書きたいことに集中できます。
一方で、何から書けばいいか見当がつかない方、相続関係が複雑な方は、ひな形のある市販品や自治体版から入るほうが安心です。「まず市販品で全体像をつかみ、足りない部分を自作ページで補う」という組み合わせも、無理のないやり方です。
ノートは何でもいい?手書きとパソコンの上手な使い分け
手書きなら「差し替えできるノート」を選ぶ
手書きで作るなら、ルーズリーフやリングノートのように、あとからページを差し替えられるものがおすすめです。エンディングノートは一度書いて終わりではなく、口座を解約した、連絡先が変わったなど、書き直す場面が必ず出てくるからです。
綴じノートに書くと、修正のたびに二重線や修正テープだらけになり、読む家族が「どちらが最新なのか」迷ってしまいます。ルーズリーフなら、古いページを抜いて新しく書き直すだけで済みます。
用意するものは、ルーズリーフとバインダー、項目ごとに分けるインデックスシール、クリアポケット数枚、鉛筆と消しゴム、ボールペン程度です。クリアポケットには保険証券のコピーや、家族に見せたい写真を入れておけます。文字の大きさに不安がある方は、罫線の幅が広いタイプを選ぶと書きやすくなります。
ひとつ気をつけたいのは、表紙に「エンディングノート」と大きく書くかどうかです。家族に見つけてもらいやすくなる一方、来客の目にも留まりやすくなります。表紙は家族にだけ伝わる名前にしておく、といった工夫も一案です。
- ☐ ルーズリーフまたはリングノート(差し替えできるもの)
- ☐ バインダーとインデックスシール(項目ごとの仕切り)
- ☐ クリアポケット(証券のコピーや写真用)
- ☐ 鉛筆と消しゴム(下書き用)
- ☐ ボールペン(清書用)
パソコン派はWordやGoogleドキュメントが便利
パソコンに慣れている方なら、WordやGoogleドキュメントで作るのも立派な自作です。書き直しが簡単で、項目の追加や並べ替えも自在にできるため、「更新しやすさ」では手書きより有利です。
無料テンプレートの多くはGoogleドキュメントやWord形式でダウンロードでき、パソコンで編集やカスタマイズができるようになっています。Microsoftのオフィス向けテンプレートにもエンディングノートが公開されていて、画像や文章をデジタル上で簡単に更新できます。
おすすめの使い方は、パソコンで作った内容を年に一度印刷し、紙でも保管しておく方法です。見出しだけパソコンで作って印刷し、中身は手書きで埋める「ハイブリッド型」なら、パソコン作業が苦手な方でも取り組みやすくなります。
注意したいのは、データだけで保管するケースです。パソコンにパスワードがかかっていれば、家族はファイルを開けません。ファイル名を「終活」などにしても、どのフォルダにあるか伝わっていなければ見つからないこともあります。デジタルで作るなら、紙の控えとセットにしておくと安心です。
無料テンプレートや自治体版を「部品」として使う
自作といっても、すべてを白紙から書く必要はありません。無料テンプレートや自治体のエンディングノートから、使いたいページだけを抜き出して自分のバインダーに綴じるのが、手間と自由度のバランスがよい方法です。
ダウンロード版のテンプレートは、必要なページだけを選んで印刷できるため、費用をかけずに自分仕様のノートを組み立てられます。Canvaのようにイラストつきのテンプレートからデザインを作れるサービスや、PDFやExcel形式で自分史つきのノートを配布しているサイトもあります。
全国100以上の自治体もエンディングノートを配布していて、PDFでダウンロードできるものと、市役所などで冊子を受け取れるものがあります。自治体版には地域の介護サービスや地域包括支援センターの情報が載っていることもあり、「いざというときの相談先」のページとしてそのまま使えます。
ただし、テンプレートを何種類も印刷すると、同じ項目が重複して混乱のもとになります。ベースを1つ決めて、足りないページだけ別のものから足す、というルールにしておくと整理しやすくなります。無料で入手できる先は、こちらの記事で一覧にしています。

「そろそろエンディングノートを書いてみようか」と思ったとき、多くの方が最初につまずくのが「どれを買えばいいのか分からない」という壁です。書店に並ぶノートは1冊2…
「どこまで書くか」は最初に決めなくていい
自作を始めるときに、ページ構成を完璧に設計する必要はありません。書きながら「この項目も要るな」と気づいたら足していけばよく、それができるのが自作ならではの良さです。
葬儀関連の資料を扱う専門サイトでも、自作の方法として「ノートに書き記す」「Wordなどでパソコンで作る」「自治体の配布物を活用する」「無料ダウンロードサイトを使う」の4つが紹介されていて、どれか1つに決める必要はないとされています(葬儀ラボ:エンディングノートの無料ダウンロード)。
実際、最初は連絡先とお金のことだけを書き、翌年に思い出の写真ページを足し、その次の年に家族へのメッセージを書き加える、という育て方をしている方もいます。ノートは完成品ではなく、少しずつ育てていくものと考えると気持ちが楽になります。
ただ、「いつか全部まとめて書こう」と先送りにしてしまうと、結局1ページも書かないまま時間が過ぎてしまいます。構成は後回しでかまいませんが、書き始める日だけは決めておきましょう。
最初に埋めたいのはこの7項目だけ

お金のこと:口座・保険・借入は「場所」を書く
最初に書いておきたいのは、銀行口座、証券、保険、不動産、借入金といった資産に関する情報です。家族が一番困るのは、「どこに何があるのかわからない」状態だからです。
終活支援のコラムでは、市販のノートは項目数が多く全部埋めようとすると挫折しがちなので、「家族が困らないために最低限必要な7項目」から始めることがすすめられています(エンディングノートの書き方)。その筆頭がこの資産情報です。
書き方の目安は、金融機関名・支店名・口座の種類までです。「〇〇銀行 駅前支店 普通口座(年金の振込先)」「△△生命 医療保険(証券は書斎の引き出し)」のように、何のための口座か、書類がどこにあるかを添えると、家族が手続きを進めやすくなります。
ここで大切なのは、暗証番号は書かないことです。ノートが第三者の手に渡ったとき、口座情報と暗証番号がそろっていれば悪用されるおそれがあります。暗証番号は別の方法で伝えるか、「必要になったら〇〇に聞いて」と書くにとどめましょう。
キャッシュカードや通帳の暗証番号は書かないのが基本です。自作ノートは市販品のような目隠しシールがないため、そのまま読める状態になります。また、ノートを通帳や印鑑と同じ場所にしまうのも避けましょう。ひとまとめに持ち出されると被害が広がります。
連絡先:「誰に知らせてほしいか」まで書く
2つ目は、友人や以前の職場の仲間、趣味のサークルなどの連絡先リストです。家族は本人の交友関係をすべて把握しているわけではないため、このページがないと訃報を伝えるべき人に伝わらないことがあります。
書くのは、名前・関係性・連絡先の3点です。最近はLINEやFacebookだけでつながっている知人も多いので、その場合は「LINEの表示名は〇〇」のように、どのサービスでどんな名前なのかも書き添えておくと、家族が探しやすくなります。
自作ならではの工夫として、「入院したら知らせてほしい人」「亡くなったら知らせてほしい人」「落ち着いてから知らせればいい人」のように、連絡のタイミング別に分けておく方法があります。家族は誰にいつ連絡するか迷う場面が多いので、この仕分けがあるだけで負担が減ります。
ただし、住所録をまるごと書き写す必要はありません。年賀状のやりとりだけの方まで含めると量が膨らみ、途中で手が止まります。まずは「絶対に知らせてほしい人」を数人書くところからで十分です。
医療・介護と葬儀・お墓の希望は「迷い」も書いていい
3つ目と4つ目は、医療・介護の希望と、葬儀・お墓の希望です。延命治療を望むかどうか、認知症になったときにどこで過ごしたいか、病名の告知を受けたいかなどを書いておくと、家族が判断を迫られたときの手がかりになります。
葬儀とお墓については、規模、宗教や宗派、埋葬方法を書いておきます。ここで知っておきたいのは、「家族にお任せ」という書き方も立派な意思表示だということです。「特に希望はないので、みんなが無理のない形で」と書いてあるだけで、家族は「これでよかったのか」と悩まずに済みます。
書き方の例としては、「延命治療は、回復の見込みが少ない場合は望まない」「家族葬で、親しい人だけで」「実家のお寺にお願いしたい(〇〇寺、宗派は〇〇)」といった一文で十分です。菩提寺がある場合は、お寺の名前も書いておくと家族が連絡に困りません。
医療の希望は、そのときの体調や考え方で変わるのが自然です。「今はこう考えているけれど、迷いもある」と正直に書いてかまいません。書いたからといってその通りにしなければならないわけではなく、家族と話し合うきっかけとして使うのがよいでしょう。
パスワード・依頼事項・メッセージは短くていい
残る3つは、パスワード・ID、依頼事項、家族へのメッセージです。どれも長く書く必要はなく、要点だけで家族の助けになります。
パスワード・IDは、スマホのロック、ネット銀行、メールなどへのアクセス情報です。一度に全部書こうとせず、段階的に記録していくのが現実的です。依頼事項には、ペットの引き取り先のお願い、動画配信や新聞などのサブスク解約、SNSアカウントの処理など、続ける必要のない契約を一覧にしておきます。
サブスクは本人以外が気づきにくく、解約されないまま引き落としが続くことがあります。「毎月引き落とされているもの」を書き出しておくだけでも、家族の手間は大きく減ります。
そしてメッセージは、短い一言でも意味があります。「ありがとう、楽しかったよ」の一行を、何年も読み返す家族もいます。改まった手紙のように構える必要はありません。スマホのパスワードは紙に書くと漏れる心配もあるため、ノートには「ヒント」だけ書き、答えは信頼できる家族に口頭で伝えるなど、方法を分けるのも一案です。
- ☐ ①資産情報(口座・証券・保険・不動産・借入)
- ☐ ②連絡先リスト(名前・関係性・連絡先)
- ☐ ③医療・介護の希望(延命治療・告知など)
- ☐ ④葬儀・お墓の希望(「家族にお任せ」も可)
- ☐ ⑤家族へのメッセージ(短い一言でOK)
- ☐ ⑥パスワード・ID(段階的に記録)
- ☐ ⑦依頼事項(ペット・サブスク解約・SNS)
途中で手が止まらない、書き進め方のコツ
1日1項目、鉛筆で下書きから始める
書き上げるコツは、完璧を目指さないことです。1日1項目程度のペースで進め、最初は鉛筆で下書きをする。このくらいの気楽さで始めた人のほうが、結果的に最後まで書き上げています。
エンディングノートは、自分の死や老いと向き合う作業でもあります。一度に何ページも書こうとすると、気持ちが重くなって手が止まりがちです。1日1項目なら、7項目でおよそ1週間。お茶の時間に15分ほど机に向かうだけで、無理なく一通りそろいます。
鉛筆の下書きをすすめるのは、書いているうちに考えが変わるからです。葬儀の希望も、書き始めは「家族葬」と思っていたのが、昔の仲間の顔が浮かんで「やっぱり声をかけてほしい」と変わることもあります。消せる状態にしておけば、気軽に書き直せます。
ただ、鉛筆のまま何年も置いておくと、こすれて読めなくなることがあります。内容が固まったら、ボールペンで清書しておきましょう。清書した日付をページの隅に書いておくと、いつの時点の考えなのかが家族にも伝わります。
- Step1: ノートに7項目の見出しだけ先に書き、1ページずつ仕切る
- Step2: 1日1項目、書きやすいもの(連絡先やメッセージ)から鉛筆で埋める
- Step3: わからない項目は「要確認」と書いて飛ばし、先へ進む
- Step4: 一通り書けたら家族と一緒に読み返し、内容が固まった部分をペンで清書する
書きやすい項目から手をつけていい
7項目の順番どおりに書く必要はありません。むしろ、書きやすい項目から始めるほうが、手が止まりにくくなります。
資産のページは、通帳や保険証券を引っ張り出して確認する作業が必要で、1項目目としては少し腰が重い部類です。反対に、連絡先リストや家族へのメッセージは、ペンを持てばその場で書けます。最初の数日で「書けた」という手応えを得ると、残りの項目にも取り組みやすくなります。
たとえば、1日目に友人の連絡先、2日目に家族への一言、3日目に葬儀の希望、4日目以降に資産や契約の確認、という順番です。通帳や証券を探す日は、平日の昼間など時間に余裕のある日に回しましょう。
書けない項目があっても気にしないことです。「保険証券が見当たらない」「延命治療についてはまだ決められない」といった場合は、その旨をそのまま書いておけば十分です。空欄より「未定」と書いてあるほうが、家族には状況が伝わります。
家族と一緒に書く時間を作る
ひとりで書き進めるのが難しいときは、家族と一緒に書く時間を作るのがおすすめです。家族にとっても、本人の考えを直接聞ける貴重な機会になります。
理由は2つあります。ひとつは、家族が知っている情報で空欄が埋まることです。「そういえばあの保険は何年か前に解約したよね」と、本人より家族のほうが覚えていることもあります。もうひとつは、書いた内容を家族が事前に知っておけるため、いざというときの行き違いが減ることです。
お盆やお正月、孫の誕生日など、家族が集まる機会に「ちょっと相談があるんだけど」と切り出すと、重い空気になりにくくなります。全項目を一緒に書く必要はなく、医療や葬儀の希望など、家族の意見を聞きたい項目だけで十分です。
ただし、家族の意見に引っ張られすぎないことも大切です。「子どもに気を使って本心と違うことを書いた」というのでは、ノートの意味が薄れます。家族の意見は参考にしつつ、最後は自分の言葉で書きましょう。
よくある失敗①:市販品の真似をして全項目を埋めようとする
自作でよくある失敗が、市販品の目次をそのまま書き写し、全項目を埋めようとして途中で投げ出してしまうケースです。せっかく自作を選んだのに、市販品と同じ壁にぶつかってしまいます。
ありがちなのは、「自分史」「趣味」「好きな食べ物」「思い出の場所」まで最初からページを作ってしまうパターンです。見出しだけ書いたページが何十枚も並び、空欄を見るたびに「まだこんなに残っている」と気が重くなって、いつの間にかノートを開かなくなります。
原因は、「エンディングノートとはこういうもの」という市販品のイメージに合わせてしまうことです。対策は、最初は7項目だけのページを作り、書き終えてから「書き足したい」と思った項目を追加していく順番にすることです。
状況:ルーズリーフに見出しだけのページを大量に作り、空欄の多さに気が重くなって1か月後には開かなくなった
原因:最初から全項目をそろえようとした
対策:最初のページは7項目だけ。自分史や趣味のページは、7項目を書き終えたあとの「ごほうび」として追加する
自作ノートは遺言書の代わりになる?できること・できないこと
エンディングノートに法的な効力はない
自作であっても市販品であっても、エンディングノートには法的な効力がありません。東京弁護士会の解説でも、エンディングノートには法的効力はなく、財産を移転させる効果はないと明記されています。
遺言書は、法律で定められた要件を満たして書かれていれば、原則として相続人はその内容に従うことになります。一方、エンディングノートに書いた内容には法的な拘束力がありません。形式についても、遺言書には厳格な要件があり、決められた形式以外で書くと無効になりますが、エンディングノートはどのような書き方でもかまいません。
つまり、エンディングノートは「家族への申し送り帳」であり、「法的な約束」ではない、ということです。自作だからといって効力が下がるわけではなく、そもそも市販品も含めて法的効力を持たないものだと理解しておけば十分です。
具体的な判断が必要な場合は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
東京弁護士会の解説では「エンディングノートには、法的効力はありません。財産を移転させる効果はありません」とされています。また、公正証書遺言であれば公証役場で遺言書を保管してもらえるため、紛失しても安心と紹介されています。(出典:東京弁護士会「エンディングノートと遺言の違い」)
財産の分け方を残したいなら遺言書を別に用意
財産の分け方について希望がある場合は、エンディングノートとは別に遺言書を用意する必要があります。ノートに書いただけでは、その希望が法的に実現されるとは限らないからです。
たとえば、エンディングノートに「財産はすべて長男に渡してほしい」と書いても、それは法的な遺言としては認められず、相続は民法の規定に従って進められることになります。本人は伝えたつもりでも、家族の間では「ノートにはこう書いてあった」「でも法的には違う」と、かえって話がこじれることもあります。
財産の分け方を法的に有効にしたい場合は、自筆証書遺言や公正証書遺言など、正式な遺言書を別に作ることになります。どの方式がよいか、どう書けばよいかは状況によって異なるため、専門家に相談しながら進めるのが安心です。
エンディングノートのほうには、「遺言書を作ってあります。保管場所は〇〇です」と書いておくのがよい連携です。ノートが遺言書の「案内板」になれば、家族が遺言書の存在に気づかないという事態を防げます。
実は「法的効力がない」からこそ書けることがある
意外と知られていないのですが、法的効力がないことは、エンディングノートの弱点であると同時に強みでもあります。形式に縛られないので、遺言書には書きにくい「気持ち」や「暮らしの希望」を自由に書けるのです。
相続税の専門家による解説でも、エンディングノートは法的な強制力を持たないため記載内容に制限がなく、老後にどんな施設に入りたいか、延命治療、葬儀方法の意向など、亡くなる前の希望も含めて自由に書けることが利点として挙げられています。
遺言書は基本的に「亡くなった後の財産の話」ですが、エンディングノートは「元気なうちから亡くなった後まで」をカバーできます。「入院したら毎朝のラジオを聞かせてほしい」「庭の梅の木は残してほしい」といった、遺言書には向かない小さな願いこそ、エンディングノートの出番です。
自作ノートなら、こうした自分らしい項目を好きなだけ足せます。法的な部分は遺言書に任せ、ノートは気持ちと暮らしの記録に専念する。この役割分担で考えると、両方の良さが生きてきます。
どこにしまう?保管場所と家族への伝え方
「盗まれにくい」と「見つかりやすい」のバランス
保管場所を選ぶときは、「盗難にあいにくい場所」と「いざというときに見つかりやすい場所」という2つの条件のバランスを考えます。この2つは相反するため、ノートの中身によってどちらを優先するか決めるのがコツです(終活サポート:エンディングノートの保管場所)。
財産情報が中心のノートなら、安全性を優先して人目につきにくい場所に。延命治療や葬儀の希望が中心なら、急な入院などのときにすぐ取り出せるよう、見つけやすさを優先します。
よくある保管場所としては、仏壇、本棚、食器棚、机の引き出しなどが挙げられます。仏壇は家族が手を合わせる場所なので気づいてもらいやすく、本棚なら背表紙に紛れて目立ちにくい、というように、それぞれに向き不向きがあります。
自作ノートなら、ノートを2冊に分けるという手もあります。医療・葬儀・メッセージの「すぐ見てほしい冊」は見つけやすい場所に、資産やパスワードの「慎重に扱う冊」は別の場所に。1冊にこだわらない柔軟さも、自作の強みです。
避けたほうがいい保管場所
一見安全そうでも、避けたほうがよい保管場所が3つあります。貸金庫、他人に預けること、そして暗証番号を本人しか知らない金庫です。
まず貸金庫は、本人以外が開けるときに煩雑な手続きが必要になるため、必要なときに中身を確認できない可能性があります。入院中や亡くなった直後にこそ見てほしい医療や葬儀の希望が、手続きの間に間に合わなくなってしまいます。
次に、友人や知人に預ける方法は、紛失や盗難のリスクがあるうえ、長い年月のうちに関係が変わる心配もあります。そして、自宅の金庫に入れても、暗証番号を本人しか知らなければ、家族は金庫を開けるのに苦労します。
「大事なものだから厳重に」と考えるほど、家族が取り出せない場所にしまいがちです。エンディングノートは、家族に読んでもらって初めて役に立つものだということを忘れないようにしたいですね。
| 向いている保管場所 | 避けたい保管場所 |
|---|---|
| 仏壇(家族が気づきやすい) 本棚(背表紙に紛れて目立たない) 食器棚・机の引き出し(家族が日常的に開ける) | 貸金庫(本人以外は手続きが煩雑) 他人に預ける(紛失・関係変化のリスク) 本人しか番号を知らない金庫 |
家族への伝え方は4つの手順で
保管場所を決めたら、家族に伝えるところまでがセットです。伝え方は、①ノートの存在と場所を伝える、②大事な内容は相談しておく、③なぜそう希望するのか理由を説明する、④元気なうちに相談する、の4つの手順で考えると整理しやすくなります。
特に大切なのは①です。どれだけ丁寧に書いても、存在を知られていなければ読まれません。「リビングの本棚の右端に、青いファイルがあるからね」と、具体的に伝えておきましょう。
③の理由の説明も、見落としがちなポイントです。「家族葬にしてほしい」とだけ書いてあると、家族は「親戚に何と言われるか」と悩むかもしれません。「みんなに負担をかけたくないから」という理由が添えてあれば、親戚への説明もしやすくなります。
そして④の「元気なうちに」。体調を崩してからでは、話し合う余裕がなくなることがあります。重い話と構えず、「こんなの書いてみたんだけど」と見せるくらいの気軽さで十分です。
よくある失敗②:誰にも言わずにしまい込んでしまう
もうひとつよくある失敗が、丁寧に書き上げたのに、誰にも伝えずにしまい込んでしまうケースです。本人は「いずれ見つかるだろう」と思っていても、家族が見つけるのは葬儀も相続の手続きも終わった後、ということが起こり得ます。
後から見つかったノートは、書かれた希望が実行されないだけでなく、「本当は家族葬がよかったのに」「この口座のことを知っていれば」と、家族のもめ事の原因になることもあります。事前に保管場所を家族に伝えていれば防げる失敗です。
原因は、「まだ書きかけだから」「見せるのが恥ずかしいから」と、伝えるタイミングを逃してしまうことです。対策は、書き終わりを待たずに「ノートを作り始めたこと」と「置き場所」だけ先に伝えることです。中身を見せるのは、もっと後でもかまいません。
状況:書斎の奥にしまったノートが、葬儀や手続きがすべて終わった後に見つかった
原因:「書き終わってから伝えよう」と思っているうちに時間が過ぎた
対策:書き始めた時点で「作っていること」と「置き場所」だけ家族に伝える。中身の共有は後回しでいい
書いた後が本番、見直しと自分らしいひと工夫
年1回とライフイベントのたびに見直す
エンディングノートは、書き上げた後の見直しが大切です。目安は年1回以上、それに加えて引っ越しや入院、家族構成の変化など、ライフイベントがあったときにはその都度更新します。
古い情報のまま残っていると、そのとおりに実行されなかったり、かえってトラブルの元になったりします。解約した口座が書かれたままだと、家族は存在しない口座を探して金融機関を回ることになりかねません。
見直しの日を決めておくと忘れにくくなります。誕生日、結婚記念日、年末の大掃除の日など、毎年必ず訪れる日に合わせるのが続けやすいやり方です。見直したページには日付を書いておくと、家族にも「これが最新」と伝わります。
ルーズリーフで自作していれば、変わったページだけ差し替えれば済みます。パソコンで作っている方は、更新のたびに印刷し直し、古い紙は処分しておきましょう。新旧の紙が混ざると、どちらが本当の希望なのかわからなくなってしまいます。
個人情報の守り方は自作ならではの課題
自作ノートで特に気をつけたいのが、個人情報の管理です。市販品には暗証番号を隠す保護シールがついているものもありますが、自作ノートでは自分で守る工夫をする必要があります。
ノートが第三者の手に渡った場合、書かれた情報が悪用されるおそれがあります(東京博善:エンディングノート作成時の注意点)。前述のとおり、暗証番号は書かず、通帳や印鑑と一緒に保管するのも避けましょう。
工夫としては、口座番号の下数桁だけを書く、パスワードは「ヒント」だけにする、資産のページだけ別ファイルにして保管場所を分ける、といった方法があります。どこまで書くかは、家族に伝わる範囲と、漏れたときのリスクのバランスで決めましょう。
また、使わなくなった古いページを処分するときは、そのままゴミに出さず、細かく裁断してから捨てるようにします。口座情報や連絡先が書かれた紙は、捨て方にも気を配りたいものです。
パスワードのページは「合言葉方式」にすると安心です。たとえば「初めて飼った犬の名前+結婚した年」のように、家族なら思い当たるけれど他人にはわからないヒントだけを書いておきます。ヒントの意味は、信頼できる家族にだけ口頭で伝えておきましょう。
アプリや自治体版と組み合わせる
自作ノートを軸にしつつ、アプリや自治体版を組み合わせるのも一つの方法です。紙とデジタル、それぞれの得意分野を生かせます。
たとえば、アプリの「SouSou」は基本無料で、質問に答えるだけでエンディングノートが作れ、亡くなった後に届けるメッセージ機能や追悼ページも備えています。三菱UFJ信託銀行の利用者向けの「わが家ノート」も基本無料で、資産管理やアルバム作成の機能があり、家族に見せるタイミングを自分で選べます。いずれもiPhone・Androidの両方に対応しています。
使い分けの例としては、家族への動画や写真つきのメッセージはアプリに、資産や連絡先は紙の自作ノートに、地域の介護や相談窓口の情報は自治体版のページを綴じ込む、といった分け方があります。
ただし、アプリを使う場合は、紙のノートに「アプリにもメッセージを残しています」と書いておくことが欠かせません。家族がアプリの存在を知らなければ、せっかくのメッセージも届かないからです。
自作だからこそ入れたい「自分らしいページ」
7項目がそろったら、自作ならではの「自分らしいページ」を足していくと、ノートがぐっと温かいものになります。これこそが、市販品より自作が勝るところです。
たとえば、若いころの写真と思い出のエピソード、孫に伝えたい家庭の味のレシピ、趣味の道具の譲り先、好きだった音楽のリストなど。葬儀で流してほしい曲や、遺影に使ってほしい写真を指定しておくと、家族が選ぶ手間も省けます。
自作のエンディングノートは、市販の冊子より自由度が高く、自分の生活に合った形で意志を残せます。決まった枠がないからこそ、「この人らしいね」と家族が笑顔になれるページが作れるのです。
ただし、自分らしいページを増やすほどノートは厚くなります。大切な7項目がどこにあるか埋もれないよう、最初のページに目次をつけておきましょう。終活全体の流れを知りたい方は、こちらの記事も参考になります。

「そろそろ終活でも」と口にしてみたものの、では何から手をつければいいのか。ノートを1冊買ってはみたけれど、最初のページで手が止まったまま引き出しにしまってある—…
まとめ
エンディングノートの自作は、特別な道具も費用もいりません。大切なのは、立派なノートを完成させることではなく、家族が困らないための情報と、あなたの気持ちが届くことです。
自作の良さは、自分の暮らしに合った項目だけを選べること、そして書きながら育てていけることにあります。市販品の目次にとらわれず、最初は資産、連絡先、医療・介護、葬儀・お墓、メッセージ、パスワード、依頼事項の7項目だけに絞りましょう。書きやすい項目から、1日1項目のペースで鉛筆の下書きから始めれば、1週間ほどで一通りそろいます。
書き終えたら、置き場所を家族に伝えることを忘れずに。財産の分け方など法的な効力が必要なことは遺言書に任せ、ノートには気持ちや暮らしの希望を自由に書く。年に一度、誕生日などに見直す習慣をつければ、いつでも「今のあなた」が伝わるノートになります。
まずは今夜、手元のノートの1ページ目に「家族へ」とだけ書いてみませんか。そのひと言が、エンディングノートづくりの確かな第一歩になります。
※アプリの機能や無料テンプレートの提供状況は変わることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

コメント