「母の物忘れが増えてきたけれど、介護認定って受けられるのかしら」「父は杖をつけば歩けるのに、要介護2と言われた。基準がよくわからない」。親や配偶者の介護が視野に入ってくると、まず引っかかるのが「何を基準に要介護度が決まるのか」という疑問ですよね。役所の説明を読んでも専門用語が多く、かえって不安になった方も多いのではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、介護の認定基準は「病気がどれだけ重いか」ではなく、「その人にどれくらい介護の手間がかかるか」を、全国共通のものさしで測る仕組みです。調査員による74項目の聞き取りをもとにコンピュータが「要介護認定等基準時間」を推計し、それを医療や福祉の専門家が見直して、要支援1から要介護5までの7段階(と非該当)に振り分けます。
この記事では、厚生労働省の公開資料をもとに、7段階の基準時間、調査で見られる74項目、一次判定と二次判定の違い、要支援2と要介護1の境目、40〜64歳が対象になる16の特定疾病、そして申請・更新・不服申し立ての流れまで、お茶を飲みながら話すような気持ちで順番にほどいていきます。
・要支援1〜要介護5を分ける「基準時間」の具体的な区切り
・認定調査の74項目と、調査当日に気をつけたいこと
・要支援2と要介護1が同じ基準時間でも分かれる理由
・申請から結果までの日数、有効期間、納得できないときの審査請求
介護の認定基準とは?「病気の重さ」ではなく「介護の手間」で決まる

要介護度は「どれくらい手助けが必要か」の物差し
要介護認定は、その方に介護サービスがどれくらい必要かを判断するものです。厚生労働省の説明では、介護保険制度は寝たきりや認知症などで常に介護が必要な状態(要介護状態)や、家事や身支度などの日常生活に支援が必要で、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合に、サービスを受けられる仕組みだとされています。
なぜ「手間」を測るのかというと、介護保険は税金と保険料で支え合う制度なので、「必要な人に必要な分だけ」届ける必要があるからです。本人や家族の「大変さ」の感じ方は人それぞれですが、それだけで決めると地域や担当者によって結果がばらついてしまいます。
具体的には、介護の手間を「要介護認定等基準時間」という分単位の数字に置き換え、その長さで要支援1〜要介護5に区分します。たとえば基準時間が110分以上なら要介護5、25分以上32分未満なら要支援1という具合です。
注意したいのは、この「分」が1日の実際の介護時間ではないことです。ここを誤解して「うちは1日中付きっきりなのに」とがっかりする方は少なくありません。詳しくは次の章でお話しします。
病名が重くても要介護度が低く出ることがある
意外と知られていないけれど、要介護度は病気の重さと必ずしも一致しません。厚生労働省のページにも、はっきり「その方の病気の重さと要介護度の高さとが必ずしも一致しない場合があります」と書かれています。
厚生労働省が挙げている例がわかりやすいので紹介します。アルツハイマー型の認知症で体は比較的元気な方の場合、徘徊などの行動のために介護の手間が多くかかることがあります。一方で、すでに寝たきりの方に認知症の症状が加わった場合、病状としては進んでいても、徘徊などは起きないため、介護の総量としては大きく増えないことが考えられる、というのです。
実はこれが、「歩ける親のほうが寝たきりの親より要介護度が高く出た」という、一見ちぐはぐな結果の正体です。結果を見て「おかしい」と感じたら、病気の重さではなく「毎日どんな場面で手を貸しているか」という物差しで、もう一度眺めてみてください。
ただし、医療面の管理が多い場合(点滴の管理など)は、後で触れる「特別な医療」の項目で手間として反映される仕組みもあります。病気が無関係というわけではない点は押さえておきましょう。
基準は全国一律、住んでいる町で変わらない
認定の基準そのものは、どこに住んでいても同じです。厚生労働省は「要介護認定は介護サービスの給付額に結びつくことから、その基準については全国一律に客観的に定める」としています。
これは、要介護度によって使えるサービスの量(支給限度額)が決まるためです。同じ状態なのに東京と地方で要介護度が違えば、受けられる支援に差が出てしまいます。そこで、調査項目も判定のコンピュータシステムも全国共通になっています。
判定を行う場所は、保険者である市町村に置かれた「介護認定審査会」です。認定調査員は市町村の職員のほか、指定居宅介護支援事業者などに委託されることもあります。
一方で、申請書の様式、窓口の名前、郵送受付の可否、更新の案内のタイミングなど「手続きの細かな運用」は市区町村ごとに少しずつ違います。基準は全国共通、手続きはお住まいの役所の案内を確認、と分けて考えると混乱しにくくなります。
要介護認定の流れは「認定調査+主治医意見書 → コンピュータによる一次判定 → 介護認定審査会による二次判定」の二段階です。基準は全国一律に客観的に定めるとされています。(出典:厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」)
要支援1〜要介護5の7段階、基準時間の「25分」「110分」は何を意味する?
7段階の区切りを一覧で確認
まず結論として、7段階の境目は基準時間で次のように決まっています。要支援1が25分以上32分未満、要支援2と要介護1がどちらも32分以上50分未満、要介護2が50分以上70分未満、要介護3が70分以上90分未満、要介護4が90分以上110分未満、要介護5が110分以上です。
おおむね20分刻みで段階が上がっていく設計ですが、要支援1だけ幅が狭く、要支援2と要介護1は同じ帯を分け合っています。この「同じ帯なのに2つに分かれる」点が、この制度で一番わかりにくいところなので、後の章で詳しく取り上げます。
高齢者あんしんノートでは、厚生労働省の資料をもとに、区分ごとの基準時間と、どちらの給付の対象になるかを1枚の表に整理しました。
| 区分 | 要介護認定等基準時間 | 給付の種類 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 25分以上32分未満 | 予防給付 |
| 要支援2 | 32分以上50分未満 | 予防給付 |
| 要介護1 | 32分以上50分未満 | 介護給付 |
| 要介護2 | 50分以上70分未満 | 介護給付 |
| 要介護3 | 70分以上90分未満 | 介護給付 |
| 要介護4 | 90分以上110分未満 | 介護給付 |
| 要介護5 | 110分以上 | 介護給付 |
高齢者あんしんノート調べ(出典:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」、2026年9月時点で確認)
基準時間が25分に届かない場合は「非該当(自立)」となり、介護保険のサービスは使えません。ただ、市区町村の介護予防の教室や見守りなど、別の支えにつながれることもあるので、非該当でも地域包括支援センターに相談してみる価値はあります。
「50分」は1日の介護時間ではない
ここは一番の誤解ポイントです。基準時間は、実際に家庭で行われている介護の時間とは異なります。厚生労働省も「あくまでも介護の必要性を量る『ものさし』」だと明記しています。
なぜ実時間と違うのかというと、基準時間は「1分間タイムスタディ」という特別な方法で集めたデータから推計した数字だからです。施設に入所・入院している3,500人の高齢者について、48時間にわたって、どんなお世話がどれくらいの時間行われたかを細かく記録し、そのデータと照らし合わせて算出しています。
つまり「要介護2=1日50〜70分の介護で足りる」という意味ではありません。在宅で家族が付き添っている時間は、夜中のトイレ誘導や見守りを含めれば、その何倍にもなることがよくあります。
また、基準時間は訪問介護や訪問看護など、在宅で受けられるサービスの合計時間と直接連動するわけでもありません。「50分と出たから、ヘルパーさんは50分」ではないので、サービスの量はケアマネジャーと一緒に考えていくものだと覚えておきましょう。
基準時間を組み立てる5つの分野
基準時間は、ひとつの数字に見えて、実は5つの分野の合計です。厚生労働省の説明では、直接生活介助、間接生活介助、BPSD関連行為、機能訓練関連行為、医療関連行為の5分野について時間を算出し、それに認知症加算を合わせたものをもとに、要支援1〜要介護5に判定されます。
言葉がかたいので、家庭の場面に置き換えてみます。直接生活介助は入浴・排せつ・食事など体に直接触れるお世話、間接生活介助は洗濯や掃除などの家事援助、BPSD関連行為は徘徊への探索や不潔な行為の後始末といった認知症に伴う行動への対応、機能訓練関連行為は歩行訓練などのリハビリ的な関わり、医療関連行為は呼吸管理や褥瘡(床ずれ)の処置などです。
この構造を知っておくと、「体は動くけれど、目が離せない」タイプの介護も、BPSD関連行為や認知症加算として数字に反映される余地があるとわかります。
ただし、各分野の時間は家族が申告した数字を足し算するわけではなく、調査結果からコンピュータが推計します。「うちは毎晩2時間かかっている」と伝えても、その時間がそのまま積まれるわけではない点には注意が必要です。伝えるべきは時間より「具体的な場面と頻度」です。
調査員は何を見ている?74項目の聞き取りと3つの評価軸

基本調査74項目は6つのまとまりでできている
認定調査は、市町村などの調査員が自宅や施設を訪ねて、本人の心身の状態を確認するものです。厚生労働省の認定調査員テキストによると、一次判定は基本調査74項目の結果から、要介護認定等基準時間や中間評価項目の得点を算出して行われます。
74項目は、次のまとまり(群)に分かれています。第1群「身体機能・起居動作」13項目、第2群「生活機能」12項目、第3群「認知機能」9項目、第4群「精神・行動障害」15項目、第5群「社会生活への適応」6項目、そして「過去14日間にうけた特別な医療について」12項目です(第1群の麻痺と拘縮は部位ごとに数えるため、合計が74項目になります)。
具体的には、寝返り、起き上がり、歩行、立ち上がり、つめ切り、視力・聴力(第1群)、移乗・移動・えん下・食事摂取(第2群)といった体の動きから、日課の理解や場所の理解(第3群)、物忘れや同じ話をするといった行動(第4群)、薬の内服や金銭管理(第5群)まで幅広く聞かれます。
調査票には、全国共通の基本調査のほかに、現在使っているサービスや家族状況などを聞く「概況調査」、基本調査の選択肢に収まらない事情を書く「特記事項」があります。家族が伝えた具体的な困りごとは、主にこの特記事項に記録されます。
調査の項目と選び方の基準は、厚生労働省「認定調査員テキスト2009改訂版」(PDF)で公開されています。分厚い資料ですが、気になる項目だけ拾い読みするのも一つの手です。
「できる・できない」だけで決まらない3つの評価軸
74項目は、すべて同じ尺度で聞かれるわけではありません。評価軸は「能力」「介助の方法」「障害や現象(行動)の有無」の3つで、各項目がどれかの軸に沿って選択肢を持っています。
「能力」は、その動作を本人が実際にできるかどうか。たとえば片足での立位や視力などです。「介助の方法」は、何らかの手助けが必要な場合に、どの程度の介助が行われているか。移乗や食事摂取などが該当します。「障害や現象(行動)の有無」は、麻痺や拘縮、物忘れや徘徊などの行動があるかどうかを見ます。
この区別が大事なのは、答え方で結果が変わりやすいからです。「介助の方法」の項目では、「本人ができるかどうか」ではなく「実際にどう介助しているか」が問われます。家族が先回りして手伝っているのに「本人もやればできます」と答えると、実態より軽い選択肢が選ばれかねません。
一方で、実態以上に重く伝えるのはおすすめしません。調査員は複数の項目や主治医意見書と突き合わせて確認しますし、何より本人に合わないサービス計画につながります。「普段の、いちばんよくある姿」を正直に伝えるのが、結局いちばんの近道です。
調査当日、本人が張り切ってしまう失敗
認定調査でよく聞く失敗が、本人が調査員の前で「しっかり者」を演じてしまうケースです。
状況:普段は入浴に見守りが必要で、薬の飲み忘れも多いお父さん。調査員が来ると背筋を伸ばし「風呂も薬も自分でやっています」と答え、別室の娘さんは口をはさめないまま終了。結果は想定より軽い区分でした。
原因:知らない人の前では、つい頑張ってしまう、弱いところを見せたくない、という心理が働きやすいためです。家族の同席や補足の準備がないと、本人の回答がそのまま記録の中心になります。
対策:家族はできるだけ同席し、本人を否定せずに「普段はこうなんです」と補足します。本人の前で言いにくいことは、事前に書いたメモを調査員に手渡したり、玄関先で短く伝えたりする方法もあります。
もう一つ気をつけたいのは、調査の日の体調です。たまたま調子の良い日に当たると、普段できないことができてしまうことがあります。そういうときは「今日はたまたま調子が良い日で、普段は週の半分くらい介助が必要です」と、頻度で伝えると特記事項に残りやすくなります。
本人のプライドを守ることも、同じくらい大切です。目の前で「できないでしょ」と言われるのは、誰でもつらいもの。「一緒にやっているよね」「手伝うと助かるって言ってくれるよね」など、責めない言い方を選ぶと、その後の介護もうまく回りやすくなります。
家族が準備しておくと安心なこと
調査は一度きりで、時間も限られます。聞かれてから思い出すのは難しいので、事前準備が結果の正確さを左右します。
- ☐ 1〜2週間分の「困った場面メモ」(日時・内容・どう手伝ったか)
- ☐ 夜間の様子(トイレの回数、起き出し、転びそうになった場面)
- ☐ 薬の管理状況(飲み忘れ、飲み過ぎ、誰が準備しているか)
- ☐ お金・買い物・電話対応でのトラブルの有無
- ☐ 家族が同席できる日時の調整
- ☐ 介護保険の被保険者証など、役所から求められた書類
メモは「転んだ」「忘れた」だけでなく、「そのとき家族が何をしたか」まで書いておくと、「介助の方法」の項目に結びつきやすくなります。たとえば「ズボンを上げるのを毎回手伝う」「財布の中身は娘が週1回確認」といった書き方です。
離れて暮らしている子どもの場合は、同居の家族やヘルパーさん、デイサービスの職員から普段の様子を聞き取っておくと心強いでしょう。親の介護で気持ちが追い込まれている方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

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一次判定と二次判定、コンピュータと専門家はどう役割分担しているのか
一次判定は「似た状態の人のデータ」から推計する
一次判定は、認定調査の結果をもとにコンピュータが行います。厚生労働省の説明では、調査結果に従って高齢者を分類していき、「1分間タイムスタディ・データ」の中から心身の状況が最も近い高齢者のデータを探し出して、基準時間を推計する仕組みです。この方法は「樹形モデル」と呼ばれています。
コンピュータを使う理由は、判定を客観的で公平にするためです。人が一から判断すると、担当者の経験や印象で結果がぶれやすくなります。まず全国共通のデータで機械的に「目安」を出し、それを人が確かめる、という二段構えにしているわけです。
樹形モデルは、たとえるなら「はい・いいえ」で枝分かれしていく質問表のようなものです。「歩行は介助が必要か」「日課を理解しているか」といった答えに従って枝を進み、たどり着いた先に似た状態の人のデータがあり、そこから基準時間が推計されます。
なお、一次判定には主治医意見書の内容も一部使われます。調査の答えと医師の意見が大きく食い違っていると、二次判定で改めて検討されることになります。
二次判定では特記事項と主治医意見書が効いてくる
二次判定は、保健・医療・福祉の学識経験者で構成される介護認定審査会が、一次判定の結果を原案として、特記事項や主治医意見書などをもとに審査します。
ここで効いてくるのが、前の章で触れた「特記事項」です。基本調査の選択肢だけでは表しきれない事情、たとえば「夜間に何度も起きて家族が付き添う」「介助を拒否するので時間がかかる」といった具体的な手間は、特記事項に書かれていてはじめて審査会の目に留まります。
審査会は、一次判定の結果が本人の実態に合っているかを確認し、必要に応じて変更します。つまり、コンピュータの結果がそのまま確定するわけではありません。
ただし、審査会は本人に直接会うわけではなく、書類で判断します。調査当日に伝えきれなかったことは、原則として審査会には届きません。「調査のときに言いそびれた」と気づいたら、早めに役所の担当窓口へ相談しておくと安心です。
二次判定で結果を実態に近づける材料は、書類に書かれた「具体的な場面」だけです。調査員に伝える内容と、主治医に伝える内容をそろえておくことが、実態に合った判定への一番の近道です。
主治医意見書は「普段の様子」を医師に伝えてこそ
主治医意見書は、市町村が申請書に書かれた主治医に作成を依頼する書類です。主治医がいない場合は、市町村が指定する医師の診察を受けることになります。奈良市の案内では、意見書の作成に関わる費用の負担はないとされています。
意見書が大切なのは、病気の経過や今後の見通し、医学的な管理の必要性など、調査員には判断できない情報を補うからです。特に次の章で説明する「状態の安定性」の判断には、医師の見立てが大きく関わります。
ところが、診察室の数分間では、医師も普段の生活の様子までは把握しきれません。「最近、夜中に家の中を歩き回る」「同じものを何度も買ってくる」といった変化は、家族が伝えないと意見書に反映されにくいのです。
申請することが決まったら、受診のときに「介護認定を申請するので、意見書をお願いすることになります」と伝え、困りごとをまとめたメモを渡すとよいでしょう。医師の判断に口をはさむのではなく、判断の材料を届ける、というスタンスが大切です。
要支援2と要介護1の境目はどこ?同じ基準時間でも分かれる理由
分かれ目は「状態の安定性」と「認知機能」
要支援2と要介護1は、基準時間がどちらも32分以上50分未満で同じです。では何で分かれるのかというと、「状態の維持・改善の可能性」、具体的には心身の状態が安定しているかどうかと、認知機能の状態です。
背景には、要支援の方が使う「予防給付」の考え方があります。厚生労働省は、予防給付の対象を「要支援1の者すべて」に加え、基準時間が32分以上50分未満に相当する人のうち「心身の状態が安定していない者や認知症等により予防給付等の利用に係る適切な理解が困難な者を除いた者」としています。
つまり、同じ手間の帯にいる人のうち、介護予防のサービスを使って状態を保ったり良くしたりできそうな人が要支援2、状態が不安定だったり、予防サービスの意味を理解して取り組むのが難しかったりする人が要介護1、という整理です。
「要介護1のほうが重い」と感じがちですが、基準時間で見れば同じ帯です。どちらになったかで落ち込んだり安心したりする前に、「どちらのサービスの組み立てが本人に合うか」という視点で結果を受け止めると気持ちが楽になります。
「状態が安定していない」とはどんな場合か
厚生労働省は、状態が安定していない例として、脳卒中や心疾患、外傷などの急性期や、慢性疾患が急に悪くなった時期で不安定な状態にあり、医療系のサービスなどを優先すべき場合を挙げています。また、末期の悪性腫瘍や進行性の病気(神経難病など)で、急速に状態の悪化が見込まれる場合も含まれます。
ここで判断されるのは、特定のリハビリが向いているかどうかではなく、「要介護状態が変わりやすく、予防給付そのものを使うのが難しいかどうか」です。短い期間で状態の見直しが必要になるかどうか、とも言い換えられます。
広島市の案内では、状態不安定を理由に要介護1と判定された場合、有効期間は6か月以内とされています。状態が変わりやすいからこそ、早めに見直す前提になっているのです。
この判断には主治医意見書が大きく関わります。退院直後や、病状が揺れている時期に申請する場合は、そうした経過を主治医に伝えておくとよいでしょう。ただし、状態が安定しているかどうかは医師と審査会が判断することで、家族が「不安定と書いてほしい」とお願いするものではない点は心に留めておきたいところです。
認知症高齢者の日常生活自立度「Ⅱ」がひとつの目安
もう一つの分かれ目が認知機能です。厚生労働省は、予防給付の適切な利用が見込まれない状態として、「認知症高齢者の日常生活自立度」がおおむねⅡ以上で、一定の介護が必要な程度の認知症がある場合を挙げています。
この自立度は、医師の意見書や認定調査で使われる全国共通のものさしです。ランクの定義は次の通りです。
| ランク | 判定基準(要旨) |
|---|---|
| Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している |
| Ⅱa | 家庭外で、誰かが注意していれば自立できる程度の支障が見られる(道に迷う、買い物や金銭管理のミスが目立つ等) |
| Ⅱb | 家庭内でも同様の支障が見られる(服薬管理ができない、ひとりで留守番ができない等) |
| Ⅲa/Ⅲb | 支障がときどき見られ、介護を必要とする(Ⅲaは日中中心、Ⅲbは夜間中心) |
| Ⅳ | 支障が頻繁に見られ、常に介護を必要とする |
| M | 著しい精神症状や問題行動、あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする |
家庭の場面でいえば、「外出先で道に迷うことが増えた」ならⅡa、「家の中でも薬の管理ができない、ひとりで留守番させるのが心配」ならⅡbのあたりが目安になります。
ただし、ランクは医師や調査員が判断するもので、自立度だけで要介護度が機械的に決まるわけではありません。「Ⅱだから必ず要介護1」ではなく、あくまで判断材料のひとつとして受け止めてください。
どちらになっても使えるサービスの考え方
要支援2になると、主に地域包括支援センターが中心となって介護予防のケアプランを立て、予防給付のサービスを使います。要介護1になると、居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作り、介護給付のサービスを使うのが基本です。
両者の違いは、目的の置き方にあります。予防給付は「今の状態を保ち、できることを増やす」ことに重心があり、介護給付は「必要な介護を支える」ことに重心があります。どちらが優れているということではなく、本人の状態に合う組み立てが用意されている、と考えるとよいでしょう。
家族としては、「要支援2だから大したことはない」と見過ごさないことが大切です。基準時間は要介護1と同じ帯なので、日々の手間は決して小さくありません。家族が抱え込みすぎていないか、ときどき振り返ってみてください。
また、判定後に状態が大きく変わった場合は、有効期間の途中でも「区分変更申請」ができます。結果に縛られすぎず、変化があれば相談する、という姿勢で付き合っていきましょう。
40〜64歳でも認定される?16の特定疾病と年齢による違い
65歳以上と40〜64歳では、認定の入り口が違う
介護保険の被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳で医療保険に加入している第2号被保険者に分かれます。65歳以上の方は、原因を問わず要介護・要支援の状態であれば認定の対象になります。
一方、40〜64歳の第2号被保険者が介護保険のサービスを受けられるのは、要介護状態が「特定疾病」によって生じた場合に限られます。交通事故のけがなど、特定疾病以外が原因の場合は介護保険の対象外で、障害福祉サービスなど別の制度を検討することになります。
この線引きがある理由は、40〜64歳の保険料が「加齢に伴う病気で介護が必要になるリスク」に備えるものと位置づけられているためです。
申請の手続きにも違いがあり、第2号被保険者は加入している医療保険が確認できる書類が必要になります。奈良市の案内では、第2号被保険者は介護保険被保険者証に加えて医療保険被保険者証も必要とされています。細かな持ち物は自治体ごとに確認しましょう。
16の特定疾病を一覧で確認
特定疾病は、介護保険法施行令第二条で次の16の病名が定められています(厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」)。
- ☐ がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る)
- ☐ 関節リウマチ
- ☐ 筋萎縮性側索硬化症
- ☐ 後縦靱帯骨化症
- ☐ 骨折を伴う骨粗鬆症
- ☐ 初老期における認知症
- ☐ 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- ☐ 脊髄小脳変性症
- ☐ 脊柱管狭窄症
- ☐ 早老症
- ☐ 多系統萎縮症
- ☐ 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- ☐ 脳血管疾患
- ☐ 閉塞性動脈硬化症
- ☐ 慢性閉塞性肺疾患
- ☐ 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
ネット上には、この一覧と違う病名を並べたまとめ記事も見かけます。特定疾病かどうかは申請の可否に直結するので、必ず厚生労働省や自治体の公式の一覧で確認するようにしてください。
また、該当するかどうかの判断は、主治医意見書に記載される診断名をもとに行われます。自己判断で「うちは対象外」と決めつけず、主治医や窓口に相談するのが確実です。
特定疾病はどうやって選ばれているのか
特定疾病は、加齢に伴う心身の変化が原因で要介護状態になりやすい病気として選ばれています。厚生労働省は、次の2つの要件をどちらも満たすものを総合的に勘案するとしています。
1つ目は、65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層でも発生が認められるなど、罹患率や有病率に加齢との関係が認められ、医学的な概念をはっきり定義できる病気であること。2つ目は、3〜6ヶ月以上続けて要介護状態または要支援状態になる割合が高いと考えられる病気であることです。
つまり、「若い人でも起こりうるけれど、年を重ねるほど増える病気」であり、「一時的ではなく、ある程度の期間介護が必要になりやすい病気」が選ばれている、ということです。
一覧のうち関節リウマチや多系統萎縮症などには、平成18年4月に追加・見直しがあったことも示されています。制度は見直されることがあるので、古い資料や記憶に頼らず、申請の時点で最新の一覧を確認するのが安心です。
末期がんの方は「急ぎ」で動ける場合がある
がんで回復の見込みがないと医師が判断した場合は、40〜64歳でも特定疾病として認定の対象になります。厚生労働省は、末期がん等の方への要介護認定について、迅速な実施や速やかな介護サービスの提供に関する事務連絡を繰り返し出しています。
背景には、状態が短期間で変わりやすく、認定を待っている間にサービスが必要になることが多い、という事情があります。自宅で過ごしたいと願う方にとって、介護ベッドや訪問のサービスが早く使えるかどうかは切実です。
こうした場合は、申請の段階で窓口や地域包括支援センターに事情を伝えることが大切です。主治医にも、介護保険の申請をすることを早めに伝えておくと、意見書の準備がスムーズになります。
具体的な対応の早さや運用は市区町村によって異なるため、「どれくらいで使えるか」は窓口で確認してください。病状についての判断は、必ず主治医とよく相談しながら進めましょう。
同居の配偶者:毎日の困りごとを一番知っている立場。調査には必ず同席し、夜間の様子をメモで伝えましょう。
離れて暮らす子ども:申請は地域包括支援センターに代行してもらえることも。帰省のタイミングに調査日を合わせられないか相談してみましょう。
40〜64歳のご本人・配偶者:まず原因となった病気が16の特定疾病に入るかを主治医に確認するのが第一歩です。
申請から結果まで30日、有効期間と更新・不服申し立てで損をしないために
申請の窓口と流れ
要介護認定の申請先は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口です。本人や家族のほか、地域包括支援センター、指定居宅介護支援事業者、介護保険施設に代行してもらうこともできます。奈良市のように郵送で受け付けている自治体もあります。
- Step1: 市区町村の窓口(または地域包括支援センター)に申請。介護保険の被保険者証などを持参
- Step2: 調査員が自宅や施設を訪問して認定調査。同時に市区町村が主治医に意見書を依頼
- Step3: コンピュータによる一次判定
- Step4: 介護認定審査会による二次判定
- Step5: 結果の通知。原則として本人宛てに郵送で届く
結果は、原則として申請から30日以内に出す決まりです。ただ、主治医意見書の作成や調査の日程調整に時間がかかると、30日を超えることもあり、その場合は延期の通知が届きます(日高市の案内)。
「結果が出るまでサービスが使えないの?」と心配な場合は、申請の段階で窓口やケアマネジャーに事情を伝え、結果待ちの間の過ごし方を相談しておきましょう。見込みと違う区分になったときの自己負担の扱いも含めて、事前に確認しておくと安心です。
有効期間は新規6か月・更新12か月が原則
認定には有効期間があり、期限が来たら更新の申請が必要です。令和3年4月1日以降の申請について、広島市の案内では次のように整理されています。
| 申請の種類 | 原則の有効期間 | 設定できる範囲 |
|---|---|---|
| 新規申請・区分変更申請 | 6か月 | 3か月〜12か月 |
| 更新申請(要介護度が変わった場合など) | 12か月 | 3か月〜36か月 |
| 更新申請(前回と同じ要介護度の場合) | 12か月 | 3か月〜48か月 |
新規の有効期間が短めなのは、介護が始まったばかりの時期は状態が変わりやすいからです。反対に、状態が落ち着いていて前回と同じ区分の場合は、最長48か月まで延ばせるようになりました。調査を受ける回数が減るのは、本人にとっても家族にとっても負担軽減になります。
ただ、有効期間が長いと「次の更新がいつだったか」を忘れやすくなります。認定結果の通知や被保険者証に書かれた有効期間は、家族みんなが見られるところに控えておきましょう。
更新を忘れて慌てた失敗
もう一つ、よく聞く失敗が更新の申請漏れです。
状況:母が要介護2の認定を受けて1年。父が書類を管理していたが入院してしまい、誰も有効期間を把握していなかった。ケアマネジャーからの連絡で、満了日が目前だと気づいた。
原因:書類を管理する人が一人に偏っていたこと、そして通知が届いても「いつものお知らせ」と思って開封が後回しになっていたことです。
対策:更新申請は有効期間満了日の60日前から出せます(奈良市の案内)。満了日の2か月前をカレンダーやスマホに登録し、家族で共有しましょう。ケアマネジャーに更新の手続きを代行してもらえるかも確認しておくと安心です。
更新の案内の送り方や時期は自治体ごとに違います。案内が届かないこともあると考え、家族の側でも期限を管理しておくのが確実です。
施設への入所を控えている場合は、認定の書類が持ち物の一つになることもあります。準備の全体像は次の記事にまとめています。

「来週から施設に入るのに、何を持たせればいいのか分からない」——親御さんの入居やショートステイが決まった直後、多くのご家族がこの壁にぶつかります。施設からもらっ…
結果に納得できないときは「区分変更」か「審査請求」
判定結果が実態に合わないと感じたら、方法は大きく2つあります。まず考えたいのは、窓口に判定の理由を聞くことです。そのうえで、状態が変わった場合は「区分変更申請」、判定そのものに不服がある場合は「審査請求」を検討します。
審査請求は、介護保険法第183条に基づき、都道府県の介護保険審査会に対して行います。東京都の案内によると、請求できる期間は、原則として処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内です。審査請求書は審査会のほか、処分をした区市町村の介護保険担当課に出すこともでき、委任状があれば代理人でも手続きできます。
知っておきたいのは、審査会が自ら認定をやり直すわけではないことです。東京都福祉局の説明では、審査会は処分に違法または不当な点がないかを審査し、理由があれば処分を取り消して、区市町村が改めて処分をやり直す流れになります。
そのため、結論が出るまで時間がかかりやすく、状態が変わってきているなら区分変更申請のほうが早い場合もあります。どちらが合うかは事情によるので、ケアマネジャーや地域包括支援センター、役所の窓口に相談しながら決めましょう。法的な手続きの判断に迷うときは、専門家に相談するのも一つの方法です。
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まとめ:介護の認定基準を知れば、申請も調査も落ち着いて迎えられる
介護の認定は、一度で「正解」が出るものではなく、状態に合わせて見直していくものです。まずは今日から1〜2週間、家族が手を貸した場面を短くメモしてみてください。そのメモが、申請の相談でも調査当日でも、いちばん頼りになる材料になります。
※制度の内容や手続きの運用は変わることがあります。最新情報はお住まいの市区町村や厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

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