「子どももいないし、兄弟も遠くにいるか、もう亡くなっている。自分が倒れたら、亡くなったら、いったい誰が後始末をしてくれるのだろう」。夜、布団に入ってからそんな考えが頭をよぎる方は、決して少なくありません。周りに相談しようにも、話題が重たくて切り出しにくいのがこのテーマです。
先に結論をお伝えすると、身寄りがなくても終活は十分に進められます。ポイントは「自分の希望を書き残すこと」と「それを実行してくれる人や仕組みを、元気なうちに決めておくこと」の2つだけです。エンディングノート、任意後見、死後事務委任契約、身元保証サービス、そして国が整えつつある新しい支援制度。道具はすでにそろっていて、あとは順番に手をつけていくだけ、という段階まで来ています。
この記事では、身寄りのない方が終活で押さえておきたい7つのことを優先順位つきで整理し、それぞれの費用の目安や、選ぶときに失敗しやすいポイントまでお話しします。お茶でも飲みながら、ご自分のペースで読み進めてみてください。
・何も準備しないまま亡くなると、葬儀・部屋・財産がどうなるのか
・身寄りなしの終活でやること7つと、手をつける順番
・任意後見・死後事務委任契約・身元保証サービスの違いと費用の目安
・2026年6月に成立した改正法による、身寄りのない高齢者への新しい支援
身寄りなしの終活が「今」必要な理由|3親等内に親族がいない高齢者は約286万人

3親等内に親族がいない高齢者は、2050年に約448万人へ
まず知っておいていただきたいのは、身寄りのない老後は「珍しい例外」ではなくなっている、という事実です。3親等内に親族がいない高齢者は2024年時点で約286万人とされ、2050年には約448万人まで増えると見込まれています。
背景にあるのは、生涯未婚の方の増加、子どもを持たない夫婦の増加、そして兄弟姉妹の数そのものが減ってきたことです。昭和の時代なら、子どもがいなくても甥や姪が葬儀を取り仕切るのが当たり前でした。ところが今は甥や姪自身が遠方に住んでいたり、長く付き合いがなかったりして、「名前は知っているけれど頼めない」という関係になっていることが増えています。
また、65歳以上の約23%、およそ4人に1人が一人暮らしをしているというデータもあります。4人に1人ということは、町内会の集まりで顔を合わせる同世代のうち何人かは、同じ不安を抱えている計算になります。
注意したいのは、統計上の「身寄りなし」に当てはまらない方でも、実際には頼れる人がいないケースがあることです。親族はいても高齢で動けない、関係がこじれていて連絡を取りたくない。こうした方も、終活の中身は身寄りのない方とほぼ同じになります。「自分は数字の上では当てはまらないから」と後回しにせず、この記事を自分ごととして読んでいただければと思います。
・3親等内に親族がいない高齢者:2024年時点で約286万人 → 2050年に約448万人の見込み
・65歳以上の一人暮らし:約23%(およそ4人に1人)
・2025年に自宅で見つかった独居者:7万6941人、うち65歳以上が約76%
・死後8日以上経過して発見された「孤立死」:2万2222人(内閣府推計)
(出典:介護のニュースサイトJoint、時事通信、nippon.com)
自宅で見つかる独居者は年7万人超、孤独死の数字が示すこと
次に、少し重たい数字ですが、目をそらさずに見ておきましょう。2025年に全国の警察が取り扱った遺体のうち、自宅で見つかった独居者は7万6941人で、65歳以上が約76%を占めました。65歳以上の孤独死は5万8919人で、前年とほぼ横ばいです。
さらに内閣府は、死後8日以上たってから発見された「孤立死」を2万2222人と推計しています。1カ月以上発見されなかったケースも全体の約9%、7148件にのぼります。発見が遅れると、ご遺体の状態だけでなく、部屋の原状回復や近隣への影響も大きくなり、後始末をする人の負担が重くなります。
男女別では男性が1万7620人、女性が4598人と、男性が女性の3.8倍です。年齢層では85歳以上が1万5079人で最も多く、75〜79歳が1万3412人、80〜84歳が1万1366人と続きます。「まだ70代前半だから」と安心できる数字ではないことがわかります。
ただし、数字を見て必要以上に怖がる必要はありません。一人で亡くなること自体は、住み慣れた家で最期を迎えたという見方もできます。問題は「発見が遅れること」と「後始末を誰がするか決まっていないこと」の2点で、これはどちらも準備で小さくできます。この記事の後半でその方法をお話しします。
「身寄りなし」とはどんな状態を指すのか
終活の文脈でいう「身寄りなし」は、単に家族がいない状態ではなく、「身寄りがなく、日常生活に支障がある、または支障が生じる可能性がある高齢者」を指すことが多いです。つまり、手続きや緊急時に頼れる人がいるかどうかが基準になっています。
この捉え方が大切なのは、日本の社会の仕組みが「家族がいること」を前提に作られてきたからです。入院のときの身元保証人、施設入所のときの緊急連絡先、亡くなったときの遺体の引き取りや死亡届。どれも家族が担うものとして長年運用されてきました。
具体的には、次のような方が当てはまります。配偶者に先立たれ子どもがいない方、生涯独身で兄弟姉妹もすでに亡い方、子どもはいるが海外に住んでいて現実的に頼れない方、親族との関係を断っている方などです。終活の中身は、どのケースでも「家族が本来やってくれるはずだったことを、誰に、どうやって任せるか」を決める作業になります。
一方で、ご夫婦2人暮らしで今は困っていない方も、どちらかが先に亡くなれば残された方は「身寄りなし」になります。子どものいないご夫婦の場合は、2人そろって元気なうちに話し合っておくと、残された側の負担がぐっと軽くなります。

「子どもがいない私たち夫婦は、老後どうやって生きていけばいいんだろう」——50代後半から60代にさしかかると、ふとそんな不安が胸をよぎることはありませんか。子育…
60歳以上の約3分の1が孤独死を心配している
終活というと「死に支度」のようで気が進まない方もいるでしょう。けれども、60歳以上の約3分の1が孤独死を懸念しているという調査もあり、同じ不安を抱えている方は大勢います。不安を口に出せないまま抱えている状態が、実は一番つらいのかもしれません。
終活に取り組んだ方からよく聞かれるのは、「決めることを決めたら、かえって毎日が軽くなった」という声です。何が不安なのかがはっきりしないうちは、漠然とした心配が消えません。けれども「葬儀はこうしてほしい」「この人に頼む」と決まると、心配ごとが「もう済んだこと」に変わっていきます。
費用の面でも、終活にかかるお金は数十万円から数百万円と、選ぶサービスによって幅があります。幅が大きいからこそ、早めに調べて比べる時間を持てることが、元気なうちに始める一番のメリットです。
注意したいのは、「いつか始めよう」の「いつか」は、体調を崩したときに突然やってくることです。入院してから任意後見の契約を結ぼうとしても、判断能力の状態によっては結べないことがあります。体も頭も元気な今が、実は最もよい時期なのです。
何も準備せずに亡くなったら、葬儀・部屋・財産はどうなる?
葬儀は自治体の最低限の火葬になりやすい
身寄りのない方が何も準備せずに亡くなると、多くの場合は自治体が関わって、必要最低限の火葬が行われます。お経をあげてほしい、好きだった花で送ってほしい、といった希望は、書き残して誰かに託していない限り、まず反映されません。
その際に使われることがあるのが「葬祭扶助」という制度です。葬祭扶助は、扶養義務者が葬儀費用を出すのが難しい場合に、自治体が必要最低限の葬儀費用を支給する制度で、生活保護法第18条が根拠になっています。扶養義務者がおらず、遺族以外の第三者が葬儀を行う場合も対象になり得ます。
金額は地域の区分(級地)で分かれており、2026年9月時点で1級地と2級地は大人222,000円以内とされています。支給の形は直葬・火葬式で、通夜や告別式を行う一般的な葬儀の費用をまかなうものではありません。故人に預貯金がある場合は、不足分のみが支給されます。
気をつけたいのは、葬祭扶助は葬儀の前に申請するのが原則で、葬儀後の申請は基本的に受理されないことです。つまり「誰かが事前に動く」ことが前提の制度です。自分の希望どおりに送ってほしいなら、葬儀の形と費用、そして手配する人を生前に決めておく必要があります。制度の詳細は厚生労働省や、お住まいの自治体の福祉窓口で確認できます。
財産は相続人がいなければ最終的に国庫へ
預貯金や自宅などの財産は、相続人がいない場合、最終的に国のものになります。これを「相続人不存在」といい、法定相続人がもともといない場合のほか、法定相続人全員が相続放棄をした場合なども含まれます。
流れとしては、利害関係人の申立てを受けて家庭裁判所が「相続財産清算人」を選び、財産を清算します。債権者への請求の催告期間が2カ月、相続人を捜す期間が6カ月あり、相続人がいないと確定した後、特別縁故者の申立て期間が3カ月設けられます。それでも申立てがなければ、財産は国庫に入ります。全国で国庫に帰属する額は年間数百億円に達するといわれています。
特別縁故者とは、亡くなった人と生計を同じくしていた人、療養看護をしていた人、特別な縁故があった人などです。長年お世話になった友人や近所の方がいても、相続人不存在の決定後3カ月以内に申立てをしなければ、国庫帰属となった後から取り戻すことはできません。
「お世話になったあの人に少しでも渡したかった」「長年通ったお寺や、支援していた団体に寄付したかった」。そうした思いがあるなら、特別縁故者の制度に頼るより、生前に遺言書で意思を示しておく方が確実です。遺言書の書き方や効力は個別の事情で変わるため、司法書士や弁護士などの専門家に相談して進めることをおすすめします。
賃貸の部屋や遺品の片付けは誰がするのか
見落とされがちなのが、住まいと持ち物の後始末です。賃貸住宅なら契約の解約や部屋の明け渡し、持ち家でも家財の処分や公共料金の解約が必要になります。これらは本来、家族が行う「死後の事務」です。
身寄りがない場合、大家さんや管理会社、自治体が対応に追われることになります。発見が遅れた場合は、特殊清掃が必要になることもあり、後始末の負担はさらに重くなります。こうした事情から、一人暮らしの高齢者は賃貸住宅の入居審査で苦労することがある、という話もよく聞かれます。
具体的に後始末が必要なものを挙げると、部屋の家財道具、衣類や写真などの思い出の品、冷蔵庫の中身、電気・ガス・水道・電話の解約、新聞や定期購入品の停止、ペットの引き取りなど、実に多岐にわたります。スマートフォンやパソコンの中のデータ、ネット銀行やサブスクリプションの契約といった「デジタル遺品」も今は無視できません。
例外として、ご自身で生前整理を進めておけば、残す物が少ないぶん後始末の負担も減ります。すべてを一度に片付ける必要はなく、「使っていない部屋から」「押し入れ1つから」と小さく始めるのが続けるコツです。
失敗パターン1:「迷惑をかけないよう貯金しておいた」が裏目に出る
身寄りのない方からよく聞くのが、「葬式代くらいは貯めてあるから大丈夫」という言葉です。ところが、貯金があるだけでは後始末はうまく進みません。これが1つ目の典型的な失敗パターンです。
原因は、亡くなった瞬間から本人名義の口座は、そのお金を引き出す権限を持つ人がいない限り、使えなくなってしまうことにあります。葬儀社への支払いも、部屋の片付け費用も、誰かが立て替えなければなりません。結局、貯金は手つかずのまま相続人不存在の手続きに回り、葬儀は最低限の火葬に、ということが起こり得ます。
たとえば、70代の一人暮らしの男性が「葬儀代」として口座にお金を残し、その旨をメモ書きで冷蔵庫に貼っていたとします。本人の気持ちは伝わっても、メモには法的な効力がなく、そのお金を使って葬儀を手配する権限を持つ人はいません。
対策は、「お金」と「お金を使って動いてくれる人」をセットで用意することです。具体的には、後で紹介する死後事務委任契約で受任者を決め、必要に応じて預託金を預ける、あるいは遺言で遺言執行者を指定しておく、といった形です。貯金は「準備の半分」と考えておきましょう。
・葬祭扶助は葬儀の前に申請するのが原則。葬儀後の申請は基本的に受理されません
・メモや口約束には法的な効力がなく、貯金があっても使う権限を持つ人がいなければ動かせません
・特別縁故者が申立てをしないまま国庫帰属となると、後から取り戻すことはできません
身寄りなしの終活でやること7つ|手をつける順番つき

まずは全体像:7つのことを「書く→決める→託す」で進める
身寄りなしの終活でやることは、大きく分けて7つです。断捨離、金銭管理、エンディングノートの作成、葬儀・お墓の準備、後見契約、遺言書の作成、ペット対策。これを「書く→決める→託す」の3段階で進めると、途中で迷子になりません。
順番が大切なのは、後の段階ほど専門家との契約が必要になり、お金も時間もかかるからです。いきなり契約から入ると、自分が本当に何を望んでいるのかが固まらないまま高額な契約を結んでしまうことがあります。まず「書く」で自分の希望を整理し、「決める」で優先順位をつけ、最後に「託す」で人や仕組みを選ぶ、という流れです。
目安としては、「書く」は数週間〜数カ月、自分のペースで進められます。「決める」は、葬儀の形やお墓、財産の行き先について考える段階で、見学や資料請求を含めて数カ月かかることもあります。「託す」は専門家や事業者との面談・契約で、比較検討を含めて半年ほど見ておくと焦らずに済みます。
ただし、すでに体調に不安がある方や、入院の予定がある方は、順番にこだわらず「託す」を先に進めてください。特に任意後見は判断能力があるうちにしか結べないため、時間との勝負になることがあります。
- Step1(書く): エンディングノートに基本情報・財産・希望をまとめる
- Step2(書く): 断捨離・生前整理で持ち物を減らす
- Step3(決める): 金銭管理の方法を見直し、口座や契約を整理する
- Step4(決める): 葬儀・納骨・お墓の希望を決める
- Step5(決める): ペットがいれば引き取り先を決める
- Step6(託す): 任意後見・死後事務委任など、実行してくれる人と契約する
- Step7(託す): 遺言書で財産の行き先を決める
最初の一歩はエンディングノート、全部埋めなくていい
7つのうち最初に手をつけたいのがエンディングノートです。法的な効力はありませんが、元気なうちに書いておくことで、自分に何かあったときに第三者へ希望をスムーズに伝えられます。身寄りのない方にとっては、家族の代わりに動いてくれる人への「引き継ぎ書」になります。
エンディングノートの中身は、①自分の基本情報、②財産・契約の情報、③医療・介護の希望、④葬儀・お墓の希望、⑤メッセージ、の5つの柱で考えるとわかりやすいです。市販のものは項目が多いため、最初から全部埋めようとすると挫折しがちです。まずは「残された人が困らないために最低限必要な項目」から埋めていくのが続けるコツです。
具体的には、どの銀行に口座があるか、どんな保険に入っているかが最優先です。後始末をする人が最も困るのは「口座がどこにあるかわからない」「保険の加入状況がわからない」というケースだからです。金融機関名・支店名・口座の種類は書き、暗証番号は書かないのが安全です。
最近はパスワードやSNSアカウント、クラウドの情報といったデジタル遺品も書いておきたい項目です。ただし、ノートの保管場所によっては人に見られるリスクもあるため、パスワードそのものではなく「どのサービスを使っているか」までに留め、保管場所を信頼できる人にだけ伝えておく方法もあります。年に1度、誕生日などを目安に見直す習慣をつけると、内容が古くなりません。

「そろそろエンディングノートを書いてみようか」と思ったとき、多くの方が最初につまずくのが「どれを買えばいいのか分からない」という壁です。書店に並ぶノートは1冊2…
お金と契約の棚卸しは「引き落とし」から見る
エンディングノートと並行して進めたいのが、お金と契約の棚卸しです。身寄りのない方の場合、自分が倒れた後に誰かが口座や契約を把握できる状態にしておくことが、後始末の負担を大きく左右します。
おすすめは、通帳やネット銀行の明細を開いて「毎月の引き落とし」から見ていく方法です。電気・ガス・水道・電話、保険料、クレジットカード、新聞、各種サブスクリプション。引き落としの一覧は、そのまま「死後に解約が必要な契約の一覧」になります。書き出してみると、使っていない契約が見つかることも多く、今の家計の見直しにもつながります。
口座の数も見直しどころです。若いころに作ったまま残高がわずかな口座や、給与振込用だった口座がいくつも残っていると、それぞれに手続きが必要になります。普段使う口座を1〜2つに絞っておくと、自分の管理もラクになり、後の手続きも簡単になります。
注意点として、口座の解約や資産の移し替えを急ぎすぎないことです。年金の受け取り口座を変更する場合は手続きが必要になりますし、定期預金を途中で解約すると利息が減ることもあります。「整理の方針を決めて、無理のない範囲で少しずつ」が基本です。

「そろそろ終活でも」と口にしてみたものの、では何から手をつければいいのか。ノートを1冊買ってはみたけれど、最初のページで手が止まったまま引き出しにしまってある—…
葬儀・納骨・ペットの希望は「誰が実行するか」まで書く
葬儀やお墓、ペットのことを決めるときは、希望の中身だけでなく「誰がそれを実行するか」まで決めておくことが大切です。家族がいれば「あとはよろしく」で済むことも、身寄りのない場合は実行する人がいなければ希望は宙に浮いてしまいます。
葬儀であれば、直葬(火葬のみ)にするのか、少人数でもお別れの場を設けるのか、宗教者を呼ぶのか。お墓であれば、既存のお墓に入るのか、合祀墓や永代供養墓を選ぶのか、散骨を望むのか。こうした希望を決めたうえで、葬儀社の生前予約や、死後事務委任契約の中に盛り込む形で「実行する人」を確保します。
ペットを飼っている方は特に早めの準備が必要です。飼い主が亡くなった後のペットの行き先が決まっていないと、保護されるまでの間に命に関わることもあります。引き取ってくれる知人を探す、飼育費用を託す、ペットの引き取りを行う団体を調べる、といった準備をしておきましょう。
家庭によっては、実家のお墓が遠方にあり「墓じまい」を考えている方もいるでしょう。自分の代で墓じまいをするなら、元気なうちに自分で進めておく方が、お寺との話し合いもスムーズです。地域やお寺によって考え方が異なるため、まずは菩提寺に相談してみることから始めてください。
判断力が落ちたとき、お金と暮らしを守る仕組みは?
成年後見制度は「法定」と「任意」の2種類
病気や認知症で判断能力が落ちたとき、身寄りのない方のお金と暮らしを守る仕組みが「成年後見制度」です。法務省によると、成年後見制度は認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方々を保護し支援する仕組みです(法務省:成年後見制度)。
この制度には2つの種類があります。1つは「法定後見制度」で、判断能力が落ちた後に家庭裁判所が後見人を選ぶものです。もう1つは「任意後見制度」で、本人に判断能力があるうちに、将来の後見人と任せる内容を契約で決めておくものです。
大きな違いは「誰が選ぶか」と「取消権があるか」です。法定後見は家庭裁判所が後見人を選び、本人が結んだ不利な契約を取り消す権限があります。任意後見は本人が後見人を自由に選べますが、取消権はありません。どちらが優れているというより、状況によって向き不向きがあります。
身寄りのない方の場合、法定後見は「誰かが家庭裁判所に申立てをする」必要があるため、申立てをする人がいないと手続きが遅れがちです。市町村長が申立てを行う仕組みもありますが、自分の意思で後見人を選べる任意後見を元気なうちに検討しておく方が、希望に沿った支援を受けやすくなります。
| 任意後見(元気なうちに契約) | 法定後見(判断力が落ちた後) |
|---|---|
| 後見人を自分で選べる 任せる内容を契約で決められる 自分の希望を反映しやすい 取消権はない | 家庭裁判所が後見人を選ぶ 本人の不利な契約を取り消せる 誰かの申立てが必要 後見人を自分では選べない |
任意後見は「元気なうち」にしか結べない
任意後見の最大のポイントは、判断能力があるうちにしか契約できないことです。認知症が進んでから「やっぱり契約しておこう」と思っても、その時点では結べない場合があります。
なぜかというと、任意後見は「本人が自分の意思で、誰に何を任せるかを決める」ことが前提の契約だからです。判断能力が落ちてしまうと、その意思を確認できません。そのため、身寄りのない方の終活では、任意後見を「早めに検討したい契約」の筆頭に挙げる専門家が多いのです。
具体的には、信頼できる人(友人や専門家)を後見人候補に選び、財産管理や介護サービスの契約など、任せたい内容を決めて契約を結びます。任意後見契約は公正証書で作るのが一般的です。契約しただけではすぐには効力が生じず、実際に判断能力が落ちたときに、家庭裁判所の手続きを経て支援が始まる仕組みになっています。
注意したいのは、任意後見がカバーするのは「生きている間」だけという点です。亡くなった瞬間に後見は終わり、葬儀や遺品整理などは任意後見人の仕事には含まれません。死後のことは、次の章で説明する死後事務委任契約とセットで考える必要があります。
成年後見制度は見直しの動きがある
成年後見制度については、民法改正による見直しが予定されています。報道や解説によると、「保佐」「後見」を廃止して「補助」に一本化し、法定後見を開始すると任意後見契約が終了するという規定も廃止される予定とされています。判断力が著しく低下している場合の「特定補助」の創設や、法定後見と任意後見の併用を認める方向も示されています。
背景には、今の制度が「一度始めると原則としてやめられない」「本人の意思が反映されにくい」といった使いにくさを指摘されてきたことがあります。必要な場面で、必要な範囲だけ支援を受けられる形に近づけようという流れです。
これから任意後見を考える方にとっては、制度が変わる途中にいることを知っておくのが大切です。施行時期や細かな運用は今後決まっていく部分もあるため、契約を検討する段階で、最新の内容を専門家に確認してください。
ただし、「制度が変わるなら様子を見よう」と待ちすぎるのはおすすめしません。制度が変わっても、「元気なうちに信頼できる人を決めておく」ことの大切さは変わらないからです。まずは相談窓口で話を聞くところから始めてみてはいかがでしょうか。
相談先は地域包括支援センターから
成年後見制度について「何から聞けばいいのかわからない」という方は、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談するのが入り口として向いています。ほかにも、家庭裁判所、弁護士会、司法書士会、法テラスなどが相談窓口になっています。
地域包括支援センターをおすすめする理由は、介護・福祉・権利擁護をまとめて相談できる、高齢者の身近な窓口だからです。成年後見のことだけでなく、今の暮らしで困っていることや、将来の介護の心配もあわせて話せます。身寄りのない方にとっては、自分のことを知ってくれている「地域の顔見知り」を作る意味もあります。
相談するときは、自分の状況(家族構成、住まい、おおまかな財産、健康状態)と、何が心配なのかをメモにしておくと話がスムーズです。エンディングノートを書き始めていれば、それを持参するのも一つの方法です。
注意点として、相談窓口によって得意分野が違います。財産管理や契約の中身について具体的に詰めたい場合は、司法書士や弁護士といった専門家に相談することになります。まず地域包括支援センターで全体の方向性を相談し、必要に応じて専門家を紹介してもらう、という順番が負担の少ない進め方です。
亡くなった後の手続きは誰に頼む?死後事務委任契約の中身と費用

死後事務委任契約でできること・できないこと
死後事務委任契約は、自分が亡くなった後の葬儀、納骨、行政手続き、遺品整理などの事務を、生前に信頼できる第三者へ任せておく契約です。身寄りのない方の終活では、任意後見と並んで中心になる契約といえます。
この契約があると、法定相続人がいない場合でも、死後の事務手続きが確実に実行されやすくなります。前の章でお話しした「貯金はあるのに動いてくれる人がいない」という問題を解決する仕組みです。受任者は司法書士・弁護士・行政書士などの専門家が務めることが多いですが、信頼できる友人に頼むこともできます。
任せられる内容は、葬儀の手配、納骨、死亡届などの行政手続き、公共料金などの各種解約、遺品整理などです。自分の希望する葬儀の形やお墓、連絡してほしい友人のリストなどを契約に盛り込んでおけば、希望に沿った形で送ってもらえます。
一方で、死後事務委任契約でできないこともあります。遺産分割の方法の指定、子の認知、遺言執行者の指定、遺産の分配の指定など、相続財産の分け方や身分に関することは対象外です。これらは遺言書で定める領域なので、「死後事務委任契約+遺言書」をセットで考えるのが基本です。
費用の目安は3つの内訳で考える
死後事務委任契約の費用は、「契約書を作る費用」「受任者への報酬」「預託金」の3つに分けて考えるとわかりやすくなります。2026年時点の目安として、契約書作成費用が数万円~30万円程度、受任者報酬が50万~100万円程度、預託金が必要な場合は70万~150万円程度とされています。
預託金とは、葬儀代や遺品整理の費用など、亡くなった後に実際にかかるお金をあらかじめ受任者に預けておくものです。前の章で触れた「亡くなると口座が動かせなくなる」問題への備えでもあります。預託金の額は、希望する葬儀の規模や、部屋の片付けにかかる費用によって変わります。
下の表は、身寄りのない方が検討することの多い仕組みの費用目安を、高齢者あんしんノートで整理したものです。金額は事業者や地域、依頼内容によって変わるため、複数の見積もりを取って比べてください。
| 仕組み | 主な役割 | 費用の目安(2026年時点) |
|---|---|---|
| 死後事務委任契約 | 葬儀・納骨・行政手続き・遺品整理 | 契約書作成 数万円~30万円程度/受任者報酬 50万~100万円程度/預託金 70万~150万円程度 |
| 身元保証サービス | 入院・入所時の保証、緊急連絡対応など | 老人ホーム入居時の利用で総額100万~150万円が一般的 |
| 葬祭扶助(公的制度) | 困窮時の最低限の火葬 | 1級地・2級地の大人で222,000円以内(2026年9月時点) |
| エンディングノート | 希望と情報の整理(法的効力なし) | 市販品のほか、無料のテンプレートもある |
出典:高齢者あんしんノート調べ(各種公開情報をもとに整理)
公正証書で作っておくと安心な理由
死後事務委任契約は、公正証書として作成しておくことがすすめられています。公正証書にすると、契約の存在と内容を公証人が確認した形で残るため、亡くなった後に「本当に本人が頼んだのか」と疑われにくくなるからです。
身寄りのない方の場合、受任者が役所や病院、大家さんなどに「本人から頼まれています」と説明する場面が出てきます。そのときに公正証書があると、話がスムーズに進みやすくなります。家族がいれば「家族です」の一言で済むところを、書類で証明するわけです。
費用の目安としては、公証役場の手数料が約11,000円〜14,000円、証人を依頼する場合の費用が33,000円程度とされています。専門家に契約書の作成を依頼する費用とは別にかかるので、見積もりを取るときはどこまで含まれているかを確認しましょう。
なお、公正証書にしたからといって、受任者が必ず約束を守ることが保証されるわけではありません。契約の相手選びこそが最も大切で、預託金を預ける場合は、その管理方法(分別管理されているか、報告を受けられるか)まで確認しておくと安心です。
任意後見・死後事務委任・遺言の役割分担
ここまでの内容を整理すると、身寄りのない方の「託す」準備は、任意後見・死後事務委任契約・遺言書の3つで役割を分担する形になります。3つを組み合わせることで、生きている間から亡くなった後まで、切れ目なく支援を受けられる状態を作れます。
役割を分けると、任意後見は「生きている間、判断能力が落ちた後の財産管理や契約」、死後事務委任契約は「亡くなった直後の葬儀や手続き、片付け」、遺言書は「財産を誰にどう残すか」です。どれか1つだけでは、どこかに空白ができてしまいます。
たとえば、任意後見だけを結んでいた場合、亡くなった瞬間に後見人の権限は終わり、葬儀の手配はできません。死後事務委任契約だけの場合、残った財産の行き先は決まらず、相続人不存在の手続きに進みます。遺言書だけの場合、財産の行き先は決まっても、認知症になった後の生活を支える人がいません。
とはいえ、3つを一度に契約するのは費用も手間もかかります。財産の状況や健康状態によって優先順位は変わるので、「今の自分にとって空白になりやすいのはどこか」を専門家と一緒に確認しながら、必要なものから順に整えていくのが現実的です。同じ専門家にまとめて依頼できる場合もあるので、相談時に聞いてみてください。
入院や施設入所で「保証人がいない」ときはどうする?
身元保証サービスが担う3つの役割
身寄りのない方が直面しやすいのが、入院や介護施設への入所のときに「身元保証人」を求められる場面です。そこで利用されているのが、民間の身元保証サービスです。事業者が身元保証人となることで、身寄りのない高齢者でも入院・入所しやすくなります。
身元保証サービスの中身は、大きく3つに分けられます。1つ目は入院・入所時の連帯保証や手続きの代行、緊急連絡への対応といった「身元保証等サービス」。2つ目は葬儀の手配や行政手続き、遺品整理、ライフラインの解約などの「死後事務サービス」。3つ目は通院の付き添いや買い物同行、公共料金の支払い代行などの「日常生活支援」です。
事業者によって、どこまでを基本料金に含むかはまちまちです。身元保証だけを請け負うところもあれば、死後事務や日常生活支援までまとめて提供するところもあります。死後事務委任契約と内容が重なる部分もあるため、すでに専門家と死後事務委任契約を結んでいる方は、重複して契約しないよう気をつけましょう。
なお、病院や施設によっては、身元保証人がいなくても受け入れる方針のところもあります。「保証人がいないから入院できない」と思い込まず、まずは病院の相談室や施設の窓口で相談してみることも大切です。
費用は総額100万~150万円が一般的、月額型もある
身元保証サービスの費用は、老人ホームの入居にあたって身元保証会社を利用する場合、総額100万~150万円かかるのが一般的とされています。サービス開始時に必要な額として、少なくとも100万円以上が相場という見方もあります。
費用の幅が大きいのは、サービスの範囲によって金額が変わるためです。身元保証だけなのか、死後事務まで含むのか、日常生活の支援まで受けるのかで、見積もりは大きく変わります。支払い方も、初期費用のみで月額が不要な形や、初期費用がなく月額のみの形などがあります。
月額型の場合は10,000円~20,000円程度という情報もありますが、これは事業者やサービス内容によって差があります。月額型は最初の負担が軽い一方、長生きするほど支払総額が増えるため、何年利用するかを想定して総額で比べることが大切です。
注意したいのは、「安いから」だけで選ばないことです。安い料金の裏で、必要なサービスがオプション扱いになっていて、結局は追加料金がかさむケースもあります。見積もりを取るときは、基本料金に含まれる内容と、別料金になる内容を一覧にしてもらいましょう。
失敗パターン2:契約内容があいまいなまま高額を支払ってしまう
身元保証サービスで起きやすいのが、契約内容をよく理解しないまま、まとまったお金を支払ってしまう失敗です。主なトラブルとしては、契約内容の不明確さ、事前の説明と実際の内容の食い違い、不当な追加請求などが挙げられています。
原因は、入院や施設入所が決まってから慌てて契約するケースが多いことにあります。「来週入院なのに保証人がいない」という状況では、複数の事業者を比べる余裕がありません。説明を聞いてもよくわからないまま、言われるがままに契約書へ判を押してしまうのです。
たとえば、ある方は「死後の手続きまで全部お任せ」と説明されて契約したのに、実際には遺品整理が別料金だった、というような食い違いが起こり得ます。解約の条件を確認していなかったために、途中でやめたくなっても預けたお金が戻らない、というのもよくある失敗です。
対策は、元気なうちに、時間をかけて比べておくことです。契約書は持ち帰って読み、わからない箇所は質問して書面で回答をもらいましょう。可能であれば、地域包括支援センターの職員や信頼できる知人に同席してもらうと、冷静に判断しやすくなります。
・入院直前など、時間がない状況で1社だけの説明を聞いて即決する
・「全部お任せ」という口頭の説明だけで、書面の範囲を確認しない
・解約時の返金条件や、預けたお金の管理方法を確認しないまま支払う
事業者選びで確認したい5つのチェック項目
身元保証サービスを選ぶときは、「企業の信頼性と実績」「サービス内容が本当に必要か」「料金の適正さ」「解約・変更ができるか」「担当者が信頼できるか」の5つを確認するのが基本です。
この5つが大切なのは、身元保証サービスが、何年、何十年という長いお付き合いになる契約だからです。契約したときは元気でも、実際にサービスを使うのは10年後かもしれません。そのときに事業者がきちんと存在し、約束を守ってくれるかどうかが問われます。
具体的には、事業を始めてからの年数や利用者数、預託金をどう管理しているか、担当者が変わったときの引き継ぎ体制などを聞いてみましょう。説明の途中で契約を急かしたり、質問にあいまいに答えたりする事業者は、慎重に考えた方がよいかもしれません。
比較するときは、最低でも2〜3社の話を聞くのがおすすめです。1社だけだと、料金やサービスの相場感がつかめません。自治体によっては、身元保証サービスの選び方についての情報を出しているところもあるので、お住まいの自治体の高齢者福祉の窓口に問い合わせてみるのもよいでしょう。
- ☐ 事業の実績(年数・利用者数)を確認した
- ☐ 基本料金に含まれる内容と別料金の内容を書面でもらった
- ☐ 預託金の管理方法(分別管理・報告の有無)を確認した
- ☐ 解約・変更の条件と返金ルールを確認した
- ☐ 2〜3社を比較し、担当者の説明に納得できた
国の新しい支援とタイプ別の進め方|今から何を選べばいい?
2026年6月成立の改正法で「頼れる身寄りがない高齢者」も支援対象に
身寄りのない方にとって心強いニュースもあります。社会福祉法などの改正法が2026年6月19日に成立し、判断能力が不十分な人に加えて、「頼れる身寄りがおらず日常生活に支障がある高齢者」が新たに支援の対象に加わることになりました。2028年6月までの開始を目指しています(介護のニュースサイトJoint)。
支援の内容は3つの領域に分かれています。①福祉サービスの利用援助や金銭管理、書類の保管といった日常生活の支援。②医療や施設入所の手続きの補助、緊急連絡先の提供、医療費や利用料の支払い代行といった入院・入所の手続き支援。③葬儀、納骨、家財の処分手続き、行政への届け出といった死後事務の支援です。
仕組みとしては、既存の「福祉サービス利用援助事業」を「第2種社会福祉事業」に位置付けなおし、経済力が乏しい利用者には無料または低額で提供する方針です。実施主体としては社会福祉協議会や社会福祉法人などが想定され、支援は市町村の責務にも位置付けられます。
ただし、実際にいつから、どの地域で、どのような条件で使えるようになるかは、これから具体化していく段階です。「国が面倒を見てくれるなら何もしなくていい」と考えるのではなく、制度の開始を待ちながらも、自分でできる準備は進めておくのが安心です。お住まいの地域の社会福祉協議会の情報に、ときどき目を通しておきましょう。
実は「お金」より先に「人とのつながり」を作ることが近道
意外と知られていないけれど、身寄りなしの終活で最初につまずくのは、お金の不足よりも「頼める人が思い浮かばない」ことです。どの契約も、どの制度も、最終的には「あなたのことを知っている誰か」が動いて初めて機能します。
たとえば、自宅で倒れたときに最初に気づくのは、専門家ではなく、毎朝あいさつを交わすご近所の方や、週に1度会うサークル仲間かもしれません。孤独死の数字でお話しした「発見の遅れ」を防ぐのは、契約書よりも日々のつながりです。
具体的には、地域包括支援センターに一度顔を出しておく、民生委員さんに一人暮らしであることを伝えておく、通いの場や趣味の集まりに参加する、といった小さな行動が、いざというときの安全網になります。見守りサービスや、新聞・宅配の見守り協定を利用するのも一つの方法です。
もちろん、人付き合いが苦手な方もいらっしゃるでしょう。無理に友人を増やす必要はありません。「週に1度、誰かと言葉を交わす場所がある」だけでも、終活の土台としては十分です。専門家との契約は、その土台の上に乗せるもの、と考えてみてください。
緊急連絡先を書いたカードを財布と冷蔵庫の扉の2か所に入れておくと、外出先で倒れたときも、自宅で倒れたときも、救急隊や発見した人が連絡先に気づきやすくなります。かかりつけの病院名と、エンディングノートの保管場所も一緒に書いておくと、その後の手続きがスムーズです。
タイプ別:あなたに合う終活の組み合わせ
身寄りのない方の終活は、財産や健康状態、住まいによって最適な組み合わせが変わります。代表的なタイプ別に、優先したい準備を整理してみましょう。
財産にある程度ゆとりがある方は、任意後見・死後事務委任契約・遺言書の3点セットを専門家と一緒に整えるのがおすすめです。財産の行き先を遺言で決めておけば、お世話になった人や応援したい団体に思いを届けられます。
財産に余裕がなく、費用が心配な方は、まずエンディングノートで希望を書き、地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談しましょう。今後始まる公的な支援の対象になる可能性もあります。生活に困窮している場合は、葬祭扶助という制度があることも覚えておいてください。
持ち家に一人で住んでいる方は、家の処分をどうするかを早めに考えておくことが大切です。住まなくなった後や亡くなった後に空き家として残ると、管理の手間が生じます。賃貸住まいの方は、部屋の明け渡しや家財の処分を死後事務委任契約に盛り込んでおくと、大家さんの負担が減り、住み替えの際の審査でも安心材料になることがあります。
すでに体調に不安がある方や入院予定がある方は、順番にこだわらず、身元保証と死後事務の準備を急ぎましょう。任意後見は判断能力があるうちにしか結べないため、「今」がそのタイミングかもしれません。
今日からできる「最初の1週間」の動き方
ここまで読んで「やることが多い」と感じた方も、最初の1週間でやることはシンプルです。大切なのは、全部を一度にやろうとせず、「今週はこれだけ」と区切って進めることです。
1日目は、通帳を開いて毎月の引き落としを紙に書き出します。2〜3日目は、エンディングノート(市販品でも無料のものでも構いません)を用意し、基本情報と口座・保険の欄だけ埋めます。4日目は、緊急連絡先を書いたカードを作って財布に入れます。5日目以降に、地域包括支援センターへ電話して、相談の予約を入れます。
この1週間で、少なくとも「自分の情報がどこにあるか」「誰に相談すればいいか」の2つがはっきりします。専門家との契約や費用の検討は、その次の段階で十分間に合います。
注意点として、焦って契約を急がないことです。特に、突然の訪問や電話で終活サービスを勧められた場合は、その場で決めずに一度持ち帰りましょう。終活は「急がされない」ことが一番の防御になります。
まとめ
身寄りがないことは、終活ができない理由にはなりません。家族が担ってきた役割を、エンディングノートと契約、そして地域のつながりで少しずつ置き換えていけば、「自分がいなくなった後」の心配は、ちゃんと小さくしていけます。財産を国庫に入れるのではなく、お世話になった人に届けたいのなら遺言書、判断能力が落ちたときの暮らしが心配なら任意後見、亡くなった後の手続きが心配なら死後事務委任契約と、不安の種類ごとに使う道具が決まっています。
費用も、身元保証サービスなら総額100万~150万円、死後事務委任契約なら受任者報酬50万~100万円程度と、決して小さな額ではありません。だからこそ、元気なうちに複数の選択肢を比べる時間を持てることが、身寄りなしの終活では何よりの財産になります。2026年6月には、頼れる身寄りのない高齢者を支援する改正法も成立し、社会の側の仕組みも少しずつ整ってきています。
最初の一歩として、今週中に通帳を開いて毎月の引き落としを書き出し、お住まいの地域包括支援センターに電話で相談の予約を入れてみてください。それだけで、漠然とした不安が「次にやること」に変わるはずです。
※制度や費用は改正や事業者によって変わることがあります。最新情報は各公式サイトや相談窓口でご確認ください。

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