9月の壁面飾りは高齢者と一緒に作れる8案|100均材料で敬老の日・お月見も

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9月が近づくと、デイサービスや特別養護老人ホームの掲示板の前で「今月は何を貼ろうか」と腕を組む方が増えてきます。8月の花火やスイカを外したあと、9月は行事が多い割にモチーフが決めにくい月です。敬老の日、お月見、お彼岸、そして秋の花。どれも捨てがたくて、結局去年と同じ型紙を引っ張り出してきた、という話もよく聞きます。

先にお伝えすると、9月の壁面飾りで大事なのは「見栄えのする作品を職員が完成させること」ではありません。高齢者ご本人が手を動かし、昔の話を語りながら少しずつ仕上げていく——その過程そのものが、レクリエーションとしても、認知症ケアの手法として知られる回想法の入り口としても値打ちを持ちます。完成度は7割で十分です。

この記事では、2026年9月の行事日程を国立天文台や厚生労働省の公表資料で確認したうえで、高齢者と一緒に作れる壁面飾り8案を、材料費・所要時間・難易度まで具体的に整理しました。100均で揃う材料の内訳、手が動きにくい方の参加のさせ方、そして現場でよく起きる2つの失敗と対策まで、9月の掲示板づくりに必要なことを一通りまとめています。

📝 この記事でわかること
・2026年9月の行事日程(敬老の日9月21日、中秋の名月9月25日など)とテーマの選び方
・高齢者と一緒に作れる9月の壁面飾り8案の作り方と、必要な材料
・1案あたりの材料費・所要時間・参加人数の目安(早見表つき)
・「器用な人だけの作業」にしないための進め方と、よくある2つの失敗
目次

9月の壁面飾りは高齢者と一緒に作ると値打ちが変わる4つの理由

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壁面飾りは「季節を感じてもらうための掲示物」だと思われがちですが、それは効果の半分にすぎません。完成品を眺める時間より、作っている時間のほうが長いからです。ここでは、職員が黙々と仕上げるのではなく、利用者さんと一緒に作ることでどんな違いが生まれるのかを整理します。

完成品を飾るより、作る時間のほうが長く残る

壁面飾りを高齢者と一緒に作る最大の理由は、制作時間そのものが集団レクリエーションとして成立するからです。10人が同じテーブルを囲み、1時間かけて花びらを貼る。この構図は、ボール送りやビンゴと同じ「みんなで取り組む活動」です。

なぜ制作がレクとして機能するかというと、勝ち負けがないからです。体操やゲームは、どうしても身体機能の差が結果に出ます。麻痺のある方や車いすの方が「自分は不利だ」と感じる場面が生まれやすい。一方で壁面飾りは、花びらを1枚貼るのも、20枚貼るのも、同じ作品への貢献になります。作業量の差が優劣に見えにくいのが利点です。

具体的には、コスモスの壁面なら花びら1枚を折る人、台紙にのりをつける人、貼る位置を決める人と工程を分けられます。1時間の活動で、参加者1人あたりの実作業は10〜20分程度。残りは会話です。この会話量の多さが、ゲーム系レクとの決定的な違いになります。

注意したいのは、時間内に完成させようと急かしてしまうことです。9月の壁面なら8月下旬から着手し、2〜3回に分けて仕上げる余裕を持たせると、1回あたりの負担が軽くなります。「今日はここまで」と区切れる工程設計にしておくと、途中参加も途中退席もしやすくなります。

座ったままできるレクの引き出しを増やしたい方は、こちらの記事も参考になります。

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「これ、うちの田んぼにもあった」を引き出す回想法の入り口になる

9月の壁面飾りが優れているのは、モチーフのほとんどが高齢者の実体験と結びついている点です。すすき、彼岸花、稲穂、月見団子。どれも70代・80代の方が子どもの頃に見ていた風景そのものです。

この「見覚えのあるもの」が語りを引き出す手法は、回想法と呼ばれます。公益財団法人長寿科学振興財団の健康長寿ネットによれば、回想法は1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラー氏が提唱したもので、昔の写真や音楽、馴染み深い家庭用品に触れながら思い出を語り合う心理療法です。脳の活性化、活動性・自発性の向上、精神的な安定、不安や孤独感の軽減が期待されるとされています。

実施の形としては、1対1で行う個人回想法と、約10名のグループにリーダー・サブリーダーの2名が入るグループ回想法があります。グループ回想法は1クール8〜10回、1回1時間ほどが目安で、なるべく同じ時間・同じ曜日で続けたほうが定着しやすいとされています。壁面制作を毎週水曜の午後に固定すれば、この条件にそのまま重なります。

ただし、壁面制作がそのまま回想法になるわけではありません。専門的な回想法は訓練を受けたスタッフが構造化して行うものです。現場でできるのは「すすきを切りながら、稲刈りの話が出たら手を止めて聞く」程度の関わりで十分です。無理に思い出を引き出そうとせず、出てきた話を否定せずに受け止める。この姿勢だけで、掲示物づくりは会話の装置に変わります。

📊 データで見る
回想法は1960年代にアメリカの精神科医ロバート・バトラー氏が提唱した心理療法。グループ回想法は約10名にスタッフ2名、1クール8〜10回・1回1時間ほどが目安とされ、同じ時間・曜日で継続すると定着しやすいと解説されています(出典:公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」回想法)。

ちぎる・折る・貼るで手指を使う——道具が使えなくても参加できる

壁面制作は、手指の動きを段階的に選べる数少ない活動です。はさみが使えない方は手でちぎる、のりが苦手な方は両面テープを貼る、指先に力が入らない方は色を選ぶ。工程が細かく分かれているぶん、参加のハードルを自由に上下できます。

この「参加のしかたを選べる」構造が重要なのは、介護度の幅が大きい集団でも同じ活動に入れるからです。要支援1の方と要介護4の方が同じテーブルにつける活動は、そう多くありません。塗り絵は個人作業になりやすく、体操は身体機能の差が出ます。壁面制作は、全員の作業が1枚の台紙に集まるため、結果として「みんなで作った」形になります。

工程の割り振り例としては、①折り紙を4つ折りにする、②型紙に沿って切る、③花びらの縁を指で丸める、④台紙にのりをつける、⑤位置を決めて貼る、の5段階です。①②は手指の巧緻性が必要、③④は力がいらない、⑤は判断力を使います。手が動かない方には⑤の「そこ、もう少し右」という役割を任せると、作品への関わりが生まれます。

気をつけたいのは、はさみの扱いです。認知機能の低下がある方には、刃先の丸い工作用はさみを使うか、あらかじめ職員が切っておいたパーツを渡す形にします。また、のりや両面テープの剥離紙を口に運んでしまう方がいるため、小さな紙片は都度回収する習慣をつけておくと安心です。

貼り終わったあと、2週間ずっと会話が生まれる場所になる

壁面飾りの効果が体操やゲームと違うのは、活動が終わったあとも掲示され続けることです。貼った翌日も、2週間後も、その前を通るたびに「これ、私が貼ったのよ」という会話が起きます。

なぜこれが大きいかというと、短期記憶に不安がある方でも、自分の作ったものを見ると手続き的な記憶や感情の記憶が呼び起こされやすいからです。「作ったこと」は忘れていても、コスモスの前で足が止まる。その瞬間に職員が「これ、○○さんが折った花びらですよ」と声をかければ、会話が1つ生まれます。

具体的な工夫としては、作品の隅に制作者の名前を小さく入れておく方法があります。「制作:3階フロアのみなさん」ではなく、参加した方の名前を並べて書く。面会に来たご家族が名前を見つけて「お母さん、これ作ったの」と話しかけるきっかけにもなります。名前入りのカード作りは、誕生日カードのノウハウがそのまま応用できます。

ただし、名前の掲示には本人・家族の同意が必要です。施設によっては個人情報保護の観点から下の名前だけ、あるいはイニシャルにしている場合もあります。掲示前に施設のルールを確認しておきましょう。

2026年9月の行事は5つ|テーマ選びで迷わないカレンダー

9月は行事が密集している月です。どれをテーマにするか決めかねているうちに月末になってしまうこともあります。ここでは2026年の日程を公的資料で確認しながら、テーマ選びの判断材料を並べます。

9月1日は防災の日と二百十日が重なる日

9月に入って最初の行事が、9月1日の防災の日です。政府広報オンラインによれば、1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災にちなみ、台風シーズンを迎える時期であることも踏まえて、1960年(昭和35年)の閣議了解で制定されました。防災週間は8月30日から9月5日までの1週間で、1982年(昭和57年)に設けられています。

同じ9月1日は、雑節の二百十日にもあたります。2026年の二百十日は9月1日です。立春から数えて210日目にあたり、ちょうど稲の開花期と台風の到来が重なるため、農家では厄日として警戒されてきました。田畑を守ってきた世代の方には、こちらのほうが馴染みが深いかもしれません。

壁面のテーマとしては、防災は絵柄にしにくい題材です。ただ、9月上旬の掲示として「非常持ち出し袋の中身」をイラスト化したり、避難経路図を大きく貼ったりする施設もあります。花や月と違って華やかさはありませんが、実用性は高い掲示になります。

注意点として、震災や台風の記憶は人によって深い痛みを伴います。被災経験のある方が入居している場合、写真や生々しい表現は避け、「備えを確認しましょう」という前向きな切り口にとどめるのが無難です。

9月9日の重陽の節句は、知られていないぶん話題になる

9月9日は重陽の節句、別名を菊の節句といいます。五節句のうち最後にあたり、1月7日の人日、3月3日の上巳(桃)、5月5日の端午、7月7日の七夕に続く5つ目です。

由来は中国の陽数思想にあります。奇数は縁起のよい陽数とされ、その中で最も大きい9が2つ重なる9月9日を「重陽」として、無病息災と子孫繁栄を願う宴を開いたのが始まりです。奈良時代に日本へ伝わり、平安時代には宮中で菊の宴が催され、江戸時代に五節句の1つとして公式行事になりました。

平安時代には「着せ綿」という風習もありました。菊の花に真綿をかぶせて香りと夜露を移し、翌朝その綿で顔や身体を拭って不老長寿を祈るというものです。長寿を願う節句という点で、実は敬老の日と趣旨が重なります。9月の壁面に菊を入れる根拠として、この話は使いやすいでしょう。

ただし、菊は葬儀の花という印象を持つ方もいます。白一色の大輪ではなく、黄色やピンクの小菊、あるいはスプレーマムのような洋菊の形にすると、仏花のイメージから離れやすくなります。

老人週間は9月15日〜21日、2026年の敬老の日は9月21日

9月の壁面テーマとして最も選ばれるのが敬老の日です。2026年の敬老の日は9月21日(月)にあたります。国民の祝日に関する法律で「9月の第3月曜日」と定められているため、年によって日付が動きます。

混同されやすいのが「老人の日」です。厚生労働省によると、老人福祉法に基づき9月15日が「老人の日」、9月15日から21日までが「老人週間」と定められています。趣旨は「国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに、老人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促す」こと。標語は「みんなで築こう 健康長寿と共生社会」です。祝日の敬老の日とは別に、福祉の視点から設けられた1週間があるわけです。

2026年はもう1つ知っておきたい事情があります。国立天文台暦計算室が公表する令和8年暦要項によれば、秋分の日は9月23日。敬老の日9月21日と秋分の日9月23日に挟まれた9月22日が休日となります。つまり9月21日から23日まで3連休です。ご家族の面会が集中しやすいので、壁面は20日までに完成させておくと見ていただけます。

注意したいのは、掲示物に「祝 敬老の日」と大書きするだけで終わらせないことです。利用者さんご本人からすると、自分が祝われる側だと突きつけられる掲示になりかねません。この点は次の章で詳しく扱います。

お彼岸は9月20日〜26日、中秋の名月は9月25日

9月後半は、お彼岸と中秋の名月が続きます。2026年の秋のお彼岸は9月20日が彼岸入り、9月23日(秋分の日)が中日、9月26日が彼岸明けです。春分・秋分の日を中日として前後3日ずつ、合わせて7日間がお彼岸の期間になります。

中秋の名月は9月25日です。国立天文台によれば、2026年は天文学的な満月が9月27日1時49分で、名月と満月が2日ずれます。太陰太陽暦では新月の瞬間を含む日がその月の1日になり、2026年は9月11日が新月のため、9月25日が旧暦8月15日にあたるという仕組みです。2日のずれは2017年以来で、少々珍しいことだと同台は解説しています。

この「ずれ」は、掲示のネタとして使い勝手があります。壁面の隅に「今年の十五夜は9月25日、満月は9月27日」と添えるだけで、前を通る方の足が止まります。カレンダーどおりに満月が出ないという事実は、意外性があるぶん会話に発展しやすい話題です。

注意点は、お彼岸の扱いです。お墓参りに行けないことを気に病む方もいるため、彼岸花やおはぎを大きく掲示すると気持ちが沈む場合があります。花としての美しさを見せるにとどめ、供養や墓参の連想が強くなりすぎない配置を心がけましょう。

✅ 2026年9月の行事日程チェックリスト
  • ☑ 9月1日(火) 防災の日/二百十日(防災週間は8月30日〜9月5日)
  • ☑ 9月9日(水) 重陽の節句(菊の節句)
  • ☑ 9月15日(火)〜21日(月) 老人の日・老人週間
  • ☑ 9月20日(日)〜26日(土) 秋のお彼岸(中日は23日)
  • ☑ 9月21日(月) 敬老の日/9月22日(火)国民の休日/9月23日(水)秋分の日
  • ☑ 9月25日(金) 中秋の名月(満月は9月27日)

敬老の日の飾り3案|「祝われる側」を置き去りにしない作り方

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敬老の日の壁面は、作り方より切り口で差がつきます。ここでは高齢者ご本人が制作に加われて、なおかつ「祝われる立場」を強調しすぎない3案を紹介します。

案1:折り紙の扇と鶴で作る「寿」のリース

最も手数が少なく、見栄えがまとまるのが扇と鶴の組み合わせです。折り紙110円1パックと台紙があれば、10人分のパーツが揃います。

この組み合わせが定番になっているのは、扇が末広がりで縁起がよいとされること、鶴が長寿の象徴として日本の祝い事に長く使われてきたことによります。どちらも70代・80代の方が手順を身体で覚えている折り方でもあり、職員より上手に折れる方が必ず出てきます。教える側と教わる側が逆転する瞬間が生まれるのが、この案の一番の効果です。

作り方は、①金銀入りの折り紙(ダイソーの「おりがみ 100枚 24色金色・銀色入り」は100枚入り税込110円)で鶴を10〜15羽折る、②別の折り紙を蛇腹に折って扇を10枚作る、③直径50cm程度の円形に切った台紙の外周へ交互に貼る、④中央に「寿」または「敬老の日」の文字を配置する、という流れです。所要時間は10人で1時間ほど。鶴が折れない方には、扇の蛇腹折りを担当してもらいます。

注意点は、金銀を使いすぎると仏事の飾りに近い印象になることです。赤・黄・橙といった暖色を全体の6割ほど入れると、明るい祝いの色調にまとまります。

案2:全員の手形で作る「長寿の木」

参加者全員が確実に関われる案が、手形を葉に見立てた「長寿の木」です。折る・切るができない方でも、手を開いて置くだけで作品に加われます。

手形を使う利点は、身体機能に関係なく全員分のパーツが同じ大きさで揃うことです。作品を見たときに誰かの作業だけが目立つということがなく、「全員で1本の木を育てた」という構図がそのまま形になります。手形の大きさや指の形の違いが、そのまま一人ひとりの個性として見えるのも良いところです。

作り方は、①模造紙に幹と枝を茶色の画用紙で作って貼る、②緑・黄緑・橙の絵の具を薄めのスポンジに含ませ、手のひらに移す、③画用紙に手形を押して乾かし、切り抜く、④枝の周りに貼っていく、という手順です。絵の具が苦手な方には、色画用紙に手を置いて鉛筆でなぞり、切り抜く方法でも同じ形になります。20人分でも所要時間は1時間半程度です。

やりがちな失敗は、絵の具のまま手を洗いに行こうとして廊下を汚してしまうことです。ウェットティッシュとタオルをテーブルごとに用意し、押した直後に拭き取る流れを作っておきましょう。皮膚が薄い方には、絵の具の刺激を避けて鉛筆でなぞる方式に切り替えます。

案3:昔の写真と地図で作る「思い出の風景」コーナー

3つ目は花も折り紙も使わない案です。壁面の一角を、昔の町の写真や地図で埋める「思い出の風景」コーナーにします。

この案を推す理由は、敬老の日の本来の趣旨に最も近いからです。敬老の日の発祥は、1947年(昭和22年)9月15日、兵庫県多可郡野間谷村(現・多可町八千代区)が村主催の敬老会を開いたことにあるとされています。門脇政夫村長が「老人を大切にし、年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」と提唱し、農閑期で気候もよい9月15日を選んだのが始まりです。この「としよりの日」は1950年に兵庫県全体へ広がり、1966年に国民の祝日「敬老の日」になりました。

💡 意外と知られていない視点
敬老の日は「お年寄りをねぎらう日」として広まっていますが、発祥の地・多可町に伝わる趣旨は「年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」でした。つまり本来は、敬老=知恵を教わる日だったわけです。壁面を「祝ってあげる掲示」ではなく「教わったことを掲示する場」に切り替えるだけで、利用者さんの立場が受け身から主役に変わります。(参考:兵庫県多可町

作り方は、①地域の図書館や郷土資料館で昭和30〜40年代の町並み写真を借りる、または利用者さんのご家族から提供いただく、②A4程度に拡大コピーして台紙に貼る、③吹き出しの形に切った紙を用意し、写真を見て出てきた言葉をその場で書き込んで貼る、という流れです。写真の枚数は6〜8枚あれば壁一面が埋まります。

注意点は著作権と肖像権です。書籍や新聞に載った写真を無断でコピーして掲示するのは避け、自治体の広報担当や資料館に利用可否を確認します。個人の写真は、写っているご本人・ご家族の同意を得てから使いましょう。

お月見の飾り3案|2026年の中秋の名月は9月25日

お月見は9月の壁面で最も作りやすいテーマです。黄色い丸を1つ貼るだけで成立し、そこにすすき、うさぎ、団子と足していけば厚みが出ます。ここでは3案を、作りやすい順に紹介します。

案4:満月とすすきで作る夜空

基本形が、黒または濃紺の台紙に満月とすすきを配した夜空です。パーツが少なく、1回のレクで完成します。

すすきを外せない理由は、稲穂に似た姿から実りの象徴とされ、魔除けの意味もあるとされてきたからです。加えて、すすきは秋の七草の1つ「尾花」でもあります。尾花という呼び名は、穂の形が動物の尻尾に似ていることに由来します。この由来話は制作中の話題としてよく効きます。

作り方は、①模造紙を黒か濃紺に塗るか、色模造紙をそのまま使う、②直径30cm程度の黄色い画用紙を丸く切って右上に貼る、③茶色や薄茶の画用紙を細長く切り、片側に1cm間隔で切り込みを入れて指で反らせて穂を作る、④穂を5〜7本、下部に扇状に配置する、という手順です。切り込みを入れる作業ははさみが使える方に、穂を指で反らせる作業は力の弱い方に振り分けられます。

注意点は、月の位置です。中央に置くと構図が固まって見えるため、上から3分の1・右から3分の1あたりに寄せると落ち着きます。また黒い台紙は光を吸って暗く見えるので、月の周りに薄い黄色の紙を一回り大きく重ねて光暈を作ると、遠目でも月だとわかります。

案5:うさぎの餅つきを立体で見せる

2つ目は、月にうさぎを重ねる案です。子どもっぽくならないかと心配されますが、和柄の折り紙で作ると急に落ち着いた印象になります。

月のうさぎが定着したのは、月面の模様を餅をつく兎に見立てる見方が古くから日本にあったためです。国や地域によってはカニやワニに見立てるところもあり、「あなたは何に見えますか」という問いかけは会話を広げやすい話題になります。

作り方は、①白い画用紙でうさぎの輪郭(体・耳・しっぽ)を切る、②和柄ちよがみ(ダイソーは40枚入り税込110円)で着物や前掛けを作って重ねる、③臼と杵を茶色の画用紙で作る、④うさぎの手と杵を割りピンでとめて、動く構造にする、という流れです。割りピンで可動にすると、通りかかった方が杵を動かせる仕掛けになります。所要時間は6人で1時間ほどです。

注意したいのは、うさぎの目の描き方です。細いペンで点を打つと表情が硬くなりがちなので、黒い丸シールを使うと柔らかい印象になります。手が震える方にも、シールなら位置を決めて押すだけで済みます。

案6:三方と月見団子で「数」を思い出す

3つ目は、三方(さんぼう)に積んだ月見団子です。地味に見えますが、制作中に一番会話が生まれる案でもあります。

その理由は「団子の数」にあります。十五夜だから15個、下段9個・中段4個・上段2個に積むという説、その年の月の数だけ積むという説など、地域や家庭によって作法が分かれます。「うちは13個だった」「三方なんてなかった、お盆に載せてた」といった話が次々に出てきます。正解を1つに決めず、出てきた話をそのまま吹き出しにして貼っていくと、それ自体が掲示物になります。

作り方は、①白い画用紙を直径5cmの円に切って15枚用意する、②丸めたティッシュを裏に入れて縁をのりで留め、立体感を出す、③黄土色の画用紙で三方の形(台形+脚)を作る、④9個・4個・2個の順に下から貼る、という手順です。円を切る作業を10人で分担すれば、1人1〜2枚で済みます。

注意点は、団子を白一色にすると壁面で目立たないことです。台紙が黒なら白のままで映えますが、クリーム色や水色の台紙なら、団子の輪郭を薄いグレーの線でなぞると形が浮き上がります。

💡 暮らしの知恵
お月見の壁面は、9月25日を過ぎても10月上旬までそのまま使えます。2026年は中秋の名月が9月25日、満月が9月27日と2日ずれるため、月の絵を1つ多く貼って「25日の名月」「27日の満月」と並べておくと、月末まで話題が持ちます。貼り替えの手間を1回減らせる実用的な小技です。

秋の花で作る2案|コスモスと彼岸花は扱い方に差がある

9月の花といえばコスモスと彼岸花です。ただしこの2つ、見た目の華やかさは似ていても、掲示するときの配慮の必要度がまったく違います。

案7:お花紙で作るコスモスは、失敗しても形になる

コスモスは9月の壁面で最も外れがない花です。見頃は9月下旬から10月上旬とされ、掲示期間ともよく合います。

この花が制作向きなのは、花びらが8枚前後で数が少なく、しかも先端がギザギザで多少形が崩れても「そういう花」に見えるからです。バラや菊のように整った形を要求されないため、手の震えがある方が切っても仕上がりが破綻しません。色もピンク・白・濃桃と3色あれば十分で、材料の準備が軽く済みます。

作り方は、①ピンク・白・濃桃の折り紙またはお花紙を用意する、②8等分の花びら型を印刷した型紙に沿って切る、③花びらの先端に2〜3mmの切り込みを2本入れる、④中心に黄色の丸を貼る、⑤細長く切った緑の画用紙を茎に、細い葉を左右に添える、という流れです。1輪あたり5分程度、10人で1時間あれば30輪以上が揃い、壁一面を埋められます。

注意点は、全部を同じ大きさで作ると平坦に見えることです。直径6cm・8cm・10cmの3サイズを混ぜ、大きいものを下、小さいものを上に配置すると奥行きが出ます。茎の高さも揃えず、10cmほどばらつかせたほうが自然な群生に見えます。

案8:彼岸花は「切り込み」だけで作れる

もう1つが彼岸花(曼珠沙華)です。9月中旬から下旬が見頃で、秋のお彼岸の頃にほぼ狂いなく咲くことから、その名がついたとされます。

制作面での利点は、細長い花びらが反り返っているという特徴を、切り込みと丸めだけで再現できることです。赤い折り紙を細く切って先を丸めるだけで彼岸花に見えるため、細かい造形が要りません。真っ赤な色は遠目にも映え、緑の台紙に置くと発色が際立ちます。

作り方は、①赤い折り紙を半分に折り、輪の側から1cm幅で6〜7本の切り込みを入れる(切り離さない)、②開いて中心から放射状に広げる、③各花びらの先を鉛筆に巻いてカールさせる、④中心に黄色い細切りの紙をおしべとして数本立てる、⑤緑の画用紙の茎に貼る、という手順です。1輪3分ほどで作れます。

⚠️ 失敗パターン①:彼岸花を大きく貼って、参加を拒む方が出た
彼岸花は地域によって「死人花」「幽霊花」などの別名で呼ばれ、家に持ち込むものではないと教えられて育った方が少なくありません。壁一面を彼岸花にしてしまい、「あんな花は見たくない」と制作にも参加してもらえなくなる——これは実際に起こりうる失敗です。

原因:花の見た目だけで選び、その花にまつわる言い伝えを確認していなかった。
対策:彼岸花はコスモスやすすきと組み合わせ、壁面全体の2〜3割にとどめる。制作前に「彼岸花、どんな呼び方をしていましたか」と一言聞いておくと、忌避感の強い方がいるかどうかを事前に把握できます。抵抗が強い場合は、案7のコスモスや秋の七草に差し替えれば済む話です。

秋の七草を添えると、壁面が「話のきっかけ」に変わる

コスモスと彼岸花だけでは物足りないときに使えるのが、秋の七草です。飾りとしてだけでなく、クイズのネタとしても機能します。

秋の七草は、萩・尾花(すすき)・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗の7種で、万葉集に収められた山上憶良の2首が由来とされています。春の七草が七草粥にして食べるものであるのに対し、秋の七草は鑑賞して楽しむものだという違いがあります。覚え方は、頭文字をつないだ「お好きな服は(おすきなふくは)」が広く知られています。

壁面での使い方は、コスモスや月の脇に小さく7種を並べ、それぞれに名札をつける形です。名札の一部を伏せておいて「これは何でしょう」と問いかける掲示にすると、前を通るたびに考える仕掛けになります。萩からおはぎの名が来ていること、葛が葛粉や葛根湯の原料であることなど、話の枝は無数にあります。

注意点は、7種すべてを作ろうとして手間が膨らむことです。藤袴や女郎花は形の再現が難しいので、色画用紙にイラストを描いた札で代用してかまいません。壁面に「実物を作る花」と「名前だけ紹介する花」を混ぜても、掲示物としては十分成立します。掲示にクイズを添えたい方は、こちらのネタ集も使えます。

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材料費は1案あたり数百円|100均で揃うものと買わなくていいもの

壁面飾りにかかる費用は、思っているより小さく収まります。ここでは8案それぞれの材料費・所要時間・難易度を一覧にし、何を買い、何を買わなくてよいかを整理します。

8案の材料費・所要時間・難易度の早見表

結論から言えば、どの案も材料費は1案あたり330〜550円、つまり100均の商品3〜5点に収まります。以下は本記事で紹介した8案を、10人規模で1つの壁面を作る前提で比較したものです。

材料費の目安所要時間手指の負担
案1 扇と鶴のリース330円(折り紙2+台紙1)約60分大(折る工程が多い)
案2 長寿の木(手形)440円(模造紙1+画用紙2+絵の具1)約90分小(手を置くだけ)
案3 思い出の風景220円+コピー代(画用紙2)約45分小(話すのが主)
案4 満月とすすき330円(模造紙1+画用紙2)約45分中(切り込み作業)
案5 うさぎの餅つき440円(和柄折り紙1+画用紙2+割りピン1)約60分中(輪郭を切る)
案6 三方と月見団子330円(画用紙2+のり1)約40分小(丸を切って貼る)
案7 コスモス440円(お花紙1+折り紙1+画用紙2)約60分中(花びらを切る)
案8 彼岸花330円(赤い折り紙1+画用紙2)約40分中(切り込みとカール)

※高齢者あんしんノート調べ。10人で1つの壁面を作る場合の目安。100均商品を1点110円(税込)として算出。台紙・のり・はさみが施設にある場合はさらに下がります。

表を見ると、手指の負担が小さい案(案2・案3・案6)ほど所要時間の幅が読みやすく、参加人数を増やしやすいことがわかります。介護度の高い方が多いフロアなら、この3案から選ぶと進行が安定します。

折り紙・お花紙・画用紙は用途がはっきり分かれる

紙の選び方だけで、仕上がりと作りやすさが変わります。用途を間違えると、途中で破れて作り直しになります。

折り紙は薄くて折り目がつきやすく、鶴や扇のように「折る」作業に向きます。ダイソーの折り紙は基本1パック税込110円で、「おりがみ 100枚 24色金色・銀色入り」は100枚入り110円、「ぜんぶちがう 50色おりがみ」は50枚入り110円、和柄ちよがみは40枚入り110円といった構成です。1パックで10人分を賄えるため、コストはほとんど問題になりません。

お花紙(フラワーペーパー)は柔らかく透け感があり、コスモスや菊のように「重ねてふくらませる」表現に向きます。ただし引っ張ると破れやすいので、力の加減が難しい方には向きません。画用紙は厚みがあって自立するため、幹・臼・三方といった構造物や、壁に貼っても垂れ下がらせたくないパーツに使います。

選び分けの原則は、折るなら折り紙、ふくらませるならお花紙、形を保たせたいなら画用紙です。迷ったら画用紙を選んでおけば、少なくとも作業中に破れて中断することはありません。

✅ 買い出しの前にやっておきたいこと
  1. Step1: 施設の在庫を確認する。画用紙・のり・はさみ・模造紙は前年の残りがあることが多く、実際に買うのは折り紙とお花紙だけで済む場合があります。
  2. Step2: 掲示スペースの実寸を測る。縦90cm×横180cmなら模造紙1枚、それ以上なら2枚必要です。測らずに買うと足りずに二度手間になります。
  3. Step3: 参加予定者の手指の状態を確認し、早見表の「手指の負担」欄で案を絞る。人選より先に案を決めると、参加できない方が出ます。
  4. Step4: 8月下旬に1回目の制作日を設定する。9月に入ってから着手すると、敬老の日の3連休(9月21日〜23日)に間に合いません。

貼り方はのり・両面テープ・マスキングテープを使い分ける

意外と差が出るのが接着の方法です。作業のしやすさと、あとで剥がすときの手間の両方を考えて選びます。

スティックのりは、塗る力が弱くても紙が動かず、失敗しても貼り直せます。手指に力が入らない方に最も向く方法です。両面テープは剥離紙をめくる動作が必要で、爪が薄い方には難しい場面があります。ただし乾燥待ちがないぶん、その場で完成させたいときは有利です。

壁への固定にはマスキングテープを使います。理由は、施設の壁紙は剥離しやすい素材が多く、養生テープやセロテープを使うと剥がすときに壁紙ごと持っていかれるからです。画鋲が使えない壁も増えているため、幅15mm程度のマスキングテープを裏側4隅に輪にして貼る方法が無難です。

注意点は、重い作品ほど落ちやすいことです。ティッシュを入れた立体の団子や、画用紙を重ねた木のように厚みのある作品は、マスキングテープだけだと数日で剥がれます。台紙全体を模造紙にまとめてから、模造紙を数か所で留める形にすると安定します。

材料110円台で見栄えのする工作をもっと知りたい方は、こちらの記事にアイデアをまとめています。

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安全面で押さえておく3点

制作レクで事故が起きると、以降その活動自体ができなくなります。最低限の3点だけは押さえておきましょう。

1つ目ははさみです。刃先の丸い工作用はさみに統一し、使い終わったら都度回収します。認知機能の低下がある方が同席する場合は、はさみを使う工程を職員が事前に済ませておき、卓上には置かないという判断もあります。

2つ目は小さな紙片と絵の具です。丸シールや切り落とした紙片を口に運んでしまう例があるため、直径2cm以下のパーツは職員が管理して1枚ずつ渡します。絵の具は水彩用を使い、口に入る可能性がある場では手形をやめて鉛筆でなぞる方式に切り替えます。

3つ目は姿勢と時間です。うつむいた姿勢が30分以上続くと、首や腰に負担がかかります。20分ごとに一度手を止めて背伸びをする、テーブルの高さを肘が90度になるよう調整するといった配慮で、疲労はかなり違ってきます。1回の制作は60分を上限とし、途中で退席したい方が言い出しやすい雰囲気を作っておくことも大切です。

よくあるつまずきと対策|「できる人だけの作業」にしないために

壁面飾りがうまくいかないときの原因は、作り方ではなく進め方にあります。ここでは現場で起きやすいつまずきと、その対策を整理します。

参加者が3人に減っていく「上手い人だけの壁面」問題

壁面制作でよくあるのが、回を重ねるうちに参加者が固定化していく現象です。器用な方だけが残り、他の方は見ているだけになります。

⚠️ 失敗パターン②:完成度を上げようとして、参加者が減った
きれいな壁面にしようとすると、どうしても仕上がりの良いパーツを選んで貼りたくなります。曲がった花びらをそっと外して作り直す。その様子を見ていた方が「自分のは使われないんだ」と感じ、次の回から手を挙げなくなる——参加率が下がる典型的な流れです。

原因:作品の完成度を評価軸にしてしまい、参加そのものが目的だという前提が抜けた。
対策:貼る位置を決める権限を利用者さんに渡し、職員は貼り直しをしない。形の崩れたパーツは奥に配置するなど「使い切る」前提で構図を考えます。どうしても見栄えが気になる場合は、周囲を飾る枠やタイトル文字を職員が作り込むことで全体の印象を整えられます。

もう1つの対策は、工程を明示的に分けて名前をつけることです。「切る係」「丸める係」「貼る係」「位置決め係」と役割を宣言してから始めると、自分の担当が終われば貢献したことになります。全員が全工程をこなす前提だと、できない工程がある方は最初から降りてしまいます。

参加人数が10人を超える場合は、テーブルを2〜3に分け、それぞれに職員が1人つく形にします。人数が多いほど「見ているだけ」の方が増えるため、1テーブル4〜6人が目安です。

貼り替え時期を決めていないと、10月まで残ってしまう

作るときの計画はあっても、外す計画がない施設は少なくありません。気づけば10月半ばまで月見団子が貼ってあった、というのはよくある話です。

季節外れの掲示が残る問題は、見た目の問題にとどまりません。見当識——今がいつなのかという感覚を支えるのが季節掲示の役割の1つですから、9月の飾りが10月に残っていると、その役割が逆に働いてしまいます。日付や季節の手がかりを掲示で補っている方には、混乱のもとになります。

対策は単純で、制作の予定を立てるときに撤去日も同時に決めることです。2026年で言えば、お月見の飾りは中秋の名月9月25日と満月9月27日を過ぎて10月上旬まで、敬老の日の飾りは3連休が終わる9月23日以降に順次外す、といった具合に日付を紙に書いて掲示板の裏に貼っておきます。

もう1つの工夫が、パーツ単位で入れ替えられる構成にしておくことです。台紙は秋の空のまま、月とうさぎを外して紅葉とどんぐりを足せば10月の壁面になります。全部作り直す前提だと負担が大きく、結局そのまま放置されがちです。

制作に加われない方にも、必ず役割がある

臥床時間が長い方、上肢が動かない方、その日の体調がすぐれない方。制作に加われない方をどう扱うかで、壁面の意味が変わります。

この点が重要なのは、参加できなかった方にとって、完成した壁面が「自分以外の人が作ったもの」になってしまうからです。毎日その前を通るのに、自分は関わっていない。そう感じさせないための役割づくりが必要になります。

具体的には、色を選ぶ役、配置を指示する役、タイトルの文言を考える役、完成後に感想を述べる役といった関わり方があります。ベッドサイドに数色の折り紙を持っていき「どの色にしましょうか」と聞くだけでも、その方の選んだ色が壁面に載ります。職員が「この赤は○○さんが選んでくださいました」と一言添えれば、参加として成立します。

注意したいのは、無理に参加を促すことです。制作に興味がない方も当然います。「見るのは好きだが作るのは嫌い」という意思表示は尊重すべきもので、参加率を目標値にすると本末転倒になります。誘って断られたら、それも1つの意思決定として記録に残しておきましょう。

写真や名前を掲示するときは同意の範囲を確認する

制作風景の写真や参加者の名前を壁面に載せる施設が増えていますが、ここは手順を踏んでおく必要があります。

理由は、施設内掲示とホームページ掲載、広報誌掲載では、同意の範囲が別だからです。入所時に「施設内での掲示に同意」を得ていても、それを施設のSNSに載せてよいということにはなりません。認知症で判断が難しい方の場合は、ご家族への確認が必要です。

実務としては、①掲示の目的と場所(フロアの掲示板か、玄関か、ホームページか)を明示した同意書を用意する、②年1回更新する、③同意していない方の名前や顔が写り込んでいないか掲示前に確認する、という3段階を踏みます。名前はフルネームではなく「○○さん」「たかこさん」と部分表示にしている施設もあります。

注意点は、面会に来たご家族が壁面をスマートフォンで撮影し、SNSに投稿するケースです。他の利用者さんの名前や顔が写り込む可能性があるため、掲示板の近くに「撮影の際は他の方が写らないようご配慮ください」と一言掲示しておくと、トラブルの予防になります。

まとめ|9月の壁面は「作る時間」ごと楽しむのが正解

🍀 この記事の結論

9月の壁面飾りは、完成度より高齢者が手を動かし語る時間に値打ちがある。材料費は1案330〜550円で足りる。

✅ 要点チェック
  • 2026年の日程:敬老の日9月21日、中秋の名月9月25日
  • 老人週間:9月15日〜21日(老人福祉法に基づく)
  • 材料費:1案330〜550円、100均3〜5点で足りる
  • 着手時期:8月下旬。3連休前の9月20日までに完成
  • 役割分担:切る・丸める・貼る・位置決めで全員参加
  • 彼岸花:忌避感がある方も。全体の2〜3割に抑える
  • 撤去日:作る計画と同時に外す日も決めておく

9月は行事が5つも重なる、掲示物の作り手にとっては悩ましい月です。防災の日と二百十日が重なる9月1日から始まり、9月9日の重陽の節句、9月15日から21日の老人週間、9月20日から26日のお彼岸、そして9月25日の中秋の名月。全部を1枚の壁面に詰め込む必要はありません。この記事で紹介した8案から、参加される方の手指の状態に合うものを2つか3つ選んで組み合わせれば、9月いっぱいは十分に持ちます。

忘れずにおきたいのは、壁面飾りの主役が作品ではなく人だという点です。敬老の日の発祥とされる兵庫県多可町の敬老会が、そもそも「年寄りの知恵を借りて村作りをしよう」という趣旨から始まったことを思えば、9月の壁面は「祝ってあげる掲示」ではなく「教わったことを形にする場」だと考えるほうが自然です。すすきの穂を切りながら出てきた稲刈りの話、月見団子の数をめぐる家ごとの違い、彼岸花の呼び名。そこで交わされた言葉こそが、掲示物より長く残ります。

最初の一歩としておすすめしたいのは、8月下旬のうちに掲示スペースの実寸を測り、施設の在庫を確認することです。画用紙・のり・はさみ・模造紙が残っていれば、実際に買うのは折り紙とお花紙だけ、300円ほどで足ります。そのうえで参加予定の方の手指の状態を見て、負担の小さい案(手形の長寿の木、三方と月見団子、思い出の風景)から選べば、初回でも進行が破綻しません。うまくいったら次の月は、パーツだけ入れ替えて10月の壁面に更新する。この繰り返しが、季節を伝え続ける掲示板を育てていきます。

なお、行事の日付や制度の内容は年によって変わります。本記事の日程は国立天文台暦計算室「令和8年(2026)暦要項」国立天文台「中秋の名月(2026年9月)」厚生労働省「老人の日・老人週間」で確認した2026年7月時点の情報です。100均商品の価格・仕様は変更される場合があります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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この記事を書いた人

シニア世代の暮らしに役立つ情報を発信中。孫へのお祝いマナーや冠婚葬祭のしきたり、健康管理や終活の準備まで、日常の「困った」を解決する記事を心がけています。ご家族の方にも読んでいただける、安心できる情報源を目指しています。

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