「終活ノートを書いておいたほうがいいとは聞くけれど、いざ買ってきたら最初のページで手が止まってしまった」。そんな声を、同世代の集まりでよく耳にします。項目がずらりと並んだノートを前にすると、何から書けばいいのか、どこまで正直に書けばいいのか、迷ってしまうのは自然なことです。
先に結論をお伝えすると、終活ノートは「全部を一度に埋めるもの」ではありません。まずは自分の基本情報と連絡先から書き始め、空欄はそのままにして、年に1回見直しながら少しずつ育てていくノートです。法的な効力はないので、財産の分け方をきちんと残したい部分だけは遺言書と組み合わせる、という考え方を持っておくと迷いが減ります。
この記事では、終活ノートの作り方を、ノートの選び方・書く順番・11項目それぞれの書き方・保管と見直し・遺言書との使い分けまで、順を追ってまとめました。お茶でも飲みながら、気になるところから読んでみてください。
・終活ノートと遺言書の違い、書く前に知っておきたい前提
・市販・無料・デジタル版の選び方と、挫折しない書く順番
・11項目それぞれの具体的な書き方と、やりがちな失敗の防ぎ方
・保管場所の決め方、見直しのタイミング、遺言書や成年後見との組み合わせ方
そもそも終活ノートとは?書き始める前に知っておきたい3つの前提

家族への「取扱説明書」と考えると書きやすい
終活ノートは、自分に万一のことがあったときに家族が困らないよう、必要な情報と自分の希望をまとめておく「家族向けの取扱説明書」です。エンディングノートとも呼ばれ、「もしもノート」という名前で配布している自治体や団体もあります。
こう考えるとよいのは、終活ノートの役割が「自分が意思疎通できなくなったときや亡くなった後に、家族へ必要な情報を伝えること」にあるからです。入院や認知症などで本人が話せなくなると、家族は銀行口座がどこにあるのか、どんな保険に入っているのか、誰に連絡すればいいのかがわからず、手探りで調べることになります。
たとえば「年金の振込口座」「加入している生命保険の会社名」「入院したら知らせてほしい友人」の3つが書いてあるだけでも、家族の動きはずいぶん変わります。立派な文章は必要ありません。箇条書きで十分役に立ちます。
ただし、「人生の総まとめ」のように構えてしまうと、書くこと自体が重荷になりがちです。最初は「家族が困りそうなことを、忘れないうちにメモしておく」くらいの軽い気持ちで始めるのが、長続きする人に共通するところです。
法的な効力はない。だからこそ自由に書ける
終活ノートには法的な拘束力がありません。書かれた内容は、あくまで本人の希望や意思を示すものとして扱われます。
これは弱点のように聞こえるかもしれませんが、見方を変えると大きな利点です。遺言書は民法で決められた形式を守らないと無効になるおそれがありますが、終活ノートには形式の決まりがありません。鉛筆で書いても、途中で書き直しても、何度修正しても構いません。「長男には感謝している」「葬儀は家族だけで」「写真はアルバム3冊だけ残して」といった、遺言書には書きにくい気持ちや細かな希望も自由に残せます。
一方で、「自宅は長女に相続させる」と終活ノートに書いても、その通りになる保証はありません。遺産分割の方法を記載しても効力はない、というのが専門家の一致した見解です。財産の分け方を確実に残したいなら、遺言書を別に用意する必要があります(詳しくは後半の章で触れます)。
「法的効力がない=意味がない」ではなく、「法的効力がないから気楽に書ける」と受け止めると、ペンを持つハードルがぐっと下がります。
書き始める年齢に決まりはない。節目がきっかけになりやすい
終活ノートを書く時期に決まりはありません。年齢に関わらず、思い立ったときに始めるのがよいとされています。
実際には、定年退職、子どもの独立、大きな病気や入院、親の介護や見送りといった人生の節目がきっかけになる人が多いようです。親の葬儀で「通帳の場所がわからない」「誰に訃報を知らせればいいのかわからない」と苦労した経験から、「自分の子どもには同じ思いをさせたくない」と書き始める方もいます。
50代のうちに一度書いておき、60代・70代と節目ごとに見直していくやり方なら、体力や判断力に余裕がある時期に土台を作れます。70代・80代になってから始めても遅すぎることはありません。今日書いた1ページが、家族にとっては何よりの手がかりになります。
注意したいのは、「まだ元気だから」と先延ばしにし続けることです。判断力が落ちてからでは、財産や契約の情報を正確に思い出すのが難しくなります。元気なうちこそ書きどき、と考えておくとよいでしょう。

「そろそろ終活でも」と口にしてみたものの、では何から手をつければいいのか。ノートを1冊買ってはみたけれど、最初のページで手が止まったまま引き出しにしまってある—…
信託銀行のコラムでは、エンディングノートの利点として「自分の死後に家族の負担を軽減させる」「自分自身も安心して残りの人生を過ごせる」の2つが挙げられています。そのほか、介護や葬儀の希望が明確に伝わる、相続手続きがスムーズになるといった効果も期待できます。(出典:三井住友信託銀行 コラム)
終活ノート作り方の第一歩|ノートは「続けやすさ」で選ぶ
市販・無料・デジタルの3タイプから選ぶ
終活ノートは、大きく分けて「書店や文具店で買う市販品」「自治体や企業が配布する無料テンプレート」「スマホやパソコンで使うデジタル版」の3タイプから選べます。どれが正解ということはなく、自分が続けやすい形を選ぶのが一番です。
市販のノートは、「基本情報」「医療・介護」「財産・相続」「葬儀・お墓」「メッセージ」のようにカテゴリ別に構成されているものが一般的です。項目が整っているので、質問に答えていくだけで形になります。無料テンプレートはPDF・Word・Excelなどの形式で配布されていて、ダウンロードして印刷すればすぐに使えます。デジタル版は更新や修正が簡単で、入力内容を端末内に保存できるサービスもあります。
迷ったら、まずは無料テンプレートを印刷して使ってみて、「書くのが楽しくなってきた」と感じたら市販のしっかりしたノートに移る、という段階的な選び方もあります。
気をつけたいのは、デジタル版だけで完結させる場合です。スマホのロックが解除できなければ、家族は中身を見られません。デジタル派の方も、保管場所とログイン方法だけは紙に書いて残しておくと安心です。

「そろそろエンディングノートを書いてみようか」と思ったとき、多くの方が最初につまずくのが「どれを買えばいいのか分からない」という壁です。書店に並ぶノートは1冊2…
終活ノート3タイプの比較(高齢者あんしんノート調べ)
| タイプ | 向いている人 | 良いところ | 気をつけたい点 |
|---|---|---|---|
| 市販ノート | 手書きが好き、1冊にまとめたい | カテゴリ別の構成で、答えるだけで形になる | 自分に不要な項目も多く、空欄が気になりやすい |
| 無料テンプレート(PDF・Word・Excel) | まず試してみたい、必要な項目だけ書きたい | 印刷してすぐ使える。書きたい項目だけ印刷もできる | 紙がバラバラになりやすく、ファイルでの管理が必要 |
| デジタル版(アプリ・Webサービス) | スマホやパソコンに慣れている、こまめに更新したい | 修正・更新が簡単。デジタル資産の記録と相性がよい | 端末のロックが解けないと家族が見られない |
自治体の無料ノートは「地元の情報」がつくのが強み
意外と知られていませんが、多くの自治体がエンディングノートを無料で配布しています。お住まいの市区町村の窓口や公式サイトで確認してみる価値があります。
自治体版のよいところは、地域の相談窓口や介護サービスの案内がセットになっていることが多い点です。いざ介護が必要になったとき、家族がノートを開けば地元の相談先がすぐにわかるので、民間のノートにはない安心感があります。地域包括支援センターなどで配布していることもあります。
ほかにも、民間企業や法律事務所などが無料テンプレートを公開しています。たとえば、ある葬祭関連企業はA4・全20ページのPDFを記入例つきで公開しており、デジタル版も登録不要で使えるようになっています。複数を見比べて、自分の書きやすい構成のものを選ぶとよいでしょう。
ただし、配布の有無や入手方法は自治体によって違います。「必ずもらえる」とは限らないので、まずは電話やホームページで問い合わせてみてください。配布が終わっている場合でも、民間の無料テンプレートで十分代わりになります。
用意するのは鉛筆と消しゴム、クリアファイルの3つ
ノートが決まったら、書く道具も用意しておきましょう。おすすめは、ボールペンより鉛筆(またはシャープペンシル)と消しゴム、そして書類をまとめるクリアファイルです。
鉛筆をすすめるのは、終活ノートが「何度も書き直すもの」だからです。連絡先や口座、保険の契約は、数年のうちに変わることが珍しくありません。最初からボールペンで書くと、変更のたびに二重線だらけになり、家族が読みにくくなってしまいます。鉛筆なら消して書き直せるので、気軽に更新できます。
クリアファイルは、保険証券のコピーや年金の通知書、かかりつけ医の診察券のコピーなど、ノートに書き写しきれない書類をまとめておくのに便利です。ノートとファイルをセットで保管しておけば、家族は1か所を探すだけで済みます。
注意したいのは、保険証券や権利証などの原本をノートに挟み込むことです。紛失や盗難のリスクが高まります。ノートには「どこに保管しているか」だけを書き、原本は別の安全な場所に置いておきましょう。
老眼が気になる方は、文字を大きめに、行間を空けて書くと後から読み返すときも楽です。市販ノートの欄が小さいと感じたら、無料テンプレートをA4で印刷して使うと、書き込めるスペースに余裕が生まれます。
ノートを選ぶ前に「誰に読んでほしいか」を決める
ノートの種類より先に決めておきたいのが、「このノートを主に誰に読んでほしいか」です。配偶者なのか、子どもなのか、おひとりさまなら甥や姪、あるいは友人なのか。読む人を決めると、書く内容の優先順位が自然と見えてきます。
たとえば、配偶者に読んでほしい場合は、ふだん自分が管理している口座や公共料金の契約、年金の手続きに関する情報が役立ちます。離れて暮らす子どもに向けるなら、かかりつけ医や近所の頼れる人、自宅の鍵の場所など「現地に行かないとわからない情報」を厚めにしておくと助かります。
おひとりさまの場合は、連絡してほしい親族や友人の名前と関係、入院時の保証人を誰にお願いしたいかといった情報を、特に丁寧に書いておきたいところです。
読む人が複数いる場合は、ノートの最初のページに「このノートは○○と○○に向けて書いています」と一言添えておくと、家族のあいだで「誰が保管するのか」「誰が開くのか」で迷わずに済みます。
何から書けばいい?挫折しない書く順番と進め方

最初の一歩は「基本情報」と「連絡先」
書き始めるなら、自分の基本情報と連絡先一覧からがおすすめです。どちらも考え込まずに書ける「事実」なので、手が止まりにくいからです。
基本情報は、氏名・生年月日・本籍地・血液型などです。本籍地は住民票や戸籍の手続きで必要になりますが、家族が意外と知らない情報の代表格です。連絡先一覧には、親族、親しい友人、かかりつけ医、職場や地域の関係者など、「入院したとき」「亡くなったとき」に知らせてほしい人を書いていきます。
連絡先は、名前と電話番号だけでなく「どういう関係の人か」「どのタイミングで知らせてほしいか(入院時/葬儀の前/落ち着いてから)」を添えておくと、家族が判断しやすくなります。年賀状のやりとりだけの相手も、訃報を知らせるかどうかの目安を書いておくと喜ばれます。
ここで気をつけたいのは、スマホの電話帳に頼りきりになることです。スマホが開けなければ、家族は誰にも連絡できません。特に大切な数人だけでも、紙に書き写しておきましょう。
次に「財産」、気持ちが乗ったら「希望」と「メッセージ」
基本情報と連絡先が書けたら、次は財産の情報、その後に医療・介護や葬儀の希望、最後に家族へのメッセージ、という順番で進めると無理がありません。
財産を2番目にするのは、家族が実際に困ることが多い情報だからです。預貯金の口座がどの銀行のどの支店にあるのか、生命保険はどこに入っているのか、不動産はどこにあるのかがわからないと、手続きが大きく遅れます。一方、医療や葬儀の希望、家族へのメッセージは、自分の気持ちと向き合う時間が必要です。書こうとして手が止まるなら、後回しで構いません。
「事実」→「希望」→「気持ち」の順に進めると、書くほどに自分の考えも整理されていきます。財産を書き出しているうちに「この口座はもう使っていないから解約しよう」と気づくのも、よくあることです。
もちろん、この順番は目安です。「葬儀のことだけは今のうちに書いておきたい」という強い思いがあるなら、そこから始めても何の問題もありません。
- Step1: 基本情報(氏名・生年月日・本籍地・血液型)を書く
- Step2: 連絡先一覧(知らせてほしい人と関係・タイミング)を書く
- Step3: 財産の情報(口座・保険・不動産・電子マネー)を書き出す
- Step4: 医療・介護、葬儀・お墓の希望を書く
- Step5: 家族や友人へのメッセージを、気が向いたときに書き足す
空欄は気にしない。「わからない」と書くのも立派な情報
終活ノートは、すべての欄を埋める必要はありません。空欄があっても構わない、というのが専門家の多くが伝えているコツです。
市販のノートは、あらゆる人に対応できるよう項目が多めに作られています。ペットを飼っていない人にペットの欄は不要ですし、お墓のことがまだ決まっていない人もいるでしょう。自分に関係のない項目や、今は決められない項目は飛ばしてしまってよいのです。
むしろおすすめしたいのは、決めかねている項目に「まだ迷っている」「家族に任せる」と書いておくことです。たとえば葬儀の形式について「家族の都合のよい形で」と一言あるだけで、家族は「本人の希望と違ったらどうしよう」と悩まずに済みます。何も書いていない空欄より、ずっと家族の気持ちを軽くしてくれます。
ただし、財産や連絡先のように「事実」を書く欄の空欄は、家族が後で探す手間につながります。気持ちの項目は空欄でよい、事実の項目はわかる範囲で埋める、とメリハリをつけると効率的です。
やりがちな失敗①:最初の週末に全部書こうとして止まる
終活ノートでもっとも多い失敗が、「今週末で一気に仕上げよう」と意気込んで、途中で手が止まったまま何年も放置してしまうケースです。
原因は、項目の多さと、内容の重さです。財産を正確に書こうとすると通帳や保険証券を探し出す必要がありますし、葬儀や延命治療の希望を考えると気持ちが沈むこともあります。一度に全部やろうとすると疲れ切ってしまい、「また今度」が続いて、ノートは引き出しの奥で眠ることになります。
対策は、「1回に1項目だけ」と決めて、短い時間で区切ることです。「今日は連絡先だけ」「来週は銀行口座だけ」と決めておけば、1回あたりの負担は小さくなります。カレンダーに「終活ノートの日」を月に1回書き込んでおく方法も、続けやすいやり方です。
完璧なノートを1冊作るより、7割程度の内容でも家族が見つけられる場所にあるノートのほうが、ずっと役に立ちます。「書きかけでも価値がある」と自分に言い聞かせて、気楽に進めていきましょう。
「完璧に書かなければ」と思うほど、手は止まりやすくなります。空欄があっても、書きかけでも、家族にとっては何もないより大きな助けになります。最初のページを書いたら、それで今日は合格です。
11項目の書き方【前編】基本情報・医療・介護・財産で家族を迷わせない
本人の基本情報と医療情報は「病院で聞かれること」を書く
一般的な終活ノートの項目は、大きく11に分けられます。前編では、そのうち基本情報・医療情報・医療と介護の希望・財産・相続の5つを見ていきます。
まず基本情報と医療情報は、「急に入院したとき、家族が病院の受付で聞かれること」を思い浮かべて書くのがコツです。氏名・生年月日・本籍地・血液型に加えて、持病、服用している薬、アレルギー、かかりつけ医の病院名などをまとめておきます。
救急搬送や入院の場面では、家族は動揺しているものです。「お薬手帳はどこにあるか」「健康保険証や介護保険証はどこにしまっているか」がノートに書いてあるだけで、手続きがぐっとスムーズになります。
注意したいのは、薬や持病の情報は変わりやすいことです。通院先が変わったり、薬が増えたりしたら、その都度書き直しましょう。薬の名前を細かく書き写すより、「お薬手帳の保管場所」を書いておくほうが、情報が古くなりにくく実用的です。
医療・介護の希望は「家族と話し合った内容」を残す
延命治療や介護についての希望は、終活ノートの中でもっとも書くのに勇気がいる項目かもしれません。ここは「正解を書く」のではなく、「今の自分の気持ちと、家族と話したこと」を残す場所だと考えてください。
厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を2007年5月に策定し、2015年3月と2018年3月に改訂しています。その中では、医療従事者から適切な説明を受けたうえで、本人が医療・ケアチームと十分に話し合い、本人の意思決定を基本として進めることが最も重要だとされています。家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合っておく取り組みは「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」とも呼ばれます。
終活ノートには、「どこで過ごしたいか(自宅・施設・病院)」「治療について誰と相談して決めてほしいか」「介護が必要になったら誰に頼みたいか」といった希望を書いておきます。人工呼吸器や栄養の取り方などの具体的な治療については、医師の説明を受けたうえで判断することなので、ノートには自分の考え方の方向性と、話し合った相手・日付を残しておくと家族の支えになります。
気持ちは時間とともに変わるものです。書いた内容は固定されたものではなく、いつでも書き直せることを家族にも伝えておきましょう。(参考:厚生労働省)
財産は「どこに・何が」の一覧表にする
財産の項目は、金額を細かく書くより「どこに、何があるか」がわかる一覧にするのがポイントです。預貯金、電子マネー、生命保険、不動産、株式や投資信託などを、種類ごとに書き出していきます。
預貯金なら銀行名と支店名、口座の種類。生命保険なら保険会社名、証券番号、受取人。不動産なら所在地と、権利証(登記識別情報)の保管場所。株式や投資信託なら証券会社名。これだけあれば、家族は問い合わせ先に迷いません。残高は日々変わるので、書かなくても差し支えありません。
意外と漏れやすいのが、年に一度しか引き落とされない年会費や、昔作ったまま使っていない口座です。財産の一覧を作っておくと、遺産分割や相続税の申告手続きにも役立ちます。
ただし、暗証番号をそのまま書くのは避けましょう。ノートが人の目に触れたときに悪用されるおそれがあります。暗証番号やパスワードの扱い方は、後編のデジタル資産のところで詳しく触れます。
- ☐ 預貯金:銀行名・支店名・口座の種類
- ☐ 生命保険:保険会社名・証券番号・受取人
- ☐ 不動産:所在地・権利証の保管場所
- ☐ 株式・投資信託:証券会社名
- ☐ 電子マネー・ポイント:サービス名
- ☐ 借入・ローン・保証人になっている契約
相続・遺言書の欄には「遺言書があるかどうか」を必ず書く
相続・遺言書の欄で一番大切なのは、「遺言書を作っているかどうか」「作っているならどこに保管しているか」を書いておくことです。
終活ノートに「財産はこう分けてほしい」と書いても、法的な効力はありません。相続税について法的に有効な意思を示したい場合は、終活ノートではなく遺言書を作成する必要があります。だからこそ終活ノートの役割は、遺言書の存在と保管場所を家族に知らせる「道しるべ」になることです。遺言書があるのに家族が気づかず遺産分割を進めてしまうと、後から話がこじれる原因になります。
遺言書を作っていない場合も、「財産の分け方について、こういう気持ちがある」と希望を書いておくことには意味があります。法的な拘束力はなくても、家族が話し合うときの手がかりになるからです。
借金やローン、誰かの保証人になっている契約といった「マイナスの財産」も、書きにくいですが大切な情報です。家族が相続するかどうかを判断するうえで欠かせないので、正直に書いておきましょう。
11項目の書き方【後編】葬儀・デジタル資産・メッセージで想いを残す

葬儀・お墓の希望は「形式」より「誰に知らせるか」が大事
葬儀とお墓の欄には、葬儀の形式、宗派や付き合いのある寺院の情報、喪主を誰にお願いしたいか、お墓の場所や管理のことなどを書いておきます。
なかでも家族が助かるのは、菩提寺(付き合いのあるお寺)の名前と連絡先、そして「葬儀に呼んでほしい人・知らせてほしい人」の情報です。葬儀の形式は家族で相談して決められますが、お寺との関係や故人の交友関係は、本人にしかわからないことが多いからです。
家族葬を希望するのか、一般的な葬儀でよいのか。遺影に使ってほしい写真はあるか。好きだった花や音楽はあるか。こうした希望を書いておくと、家族は「本人らしい見送り」を考えやすくなります。
ただし、葬儀の希望は家族の事情とぶつかることもあります。地域の慣習や親族の意向で希望どおりにできない場合もあるので、「できる範囲で」「最終的には家族に任せる」と書き添えておくと、家族が板挟みにならずに済みます。

押入れを開けるたびに、「これ、いつか片づけないとな」と思いながら、そっと戸を閉めてしまう。生前整理という言葉は知っているけれど、何から手をつければいいのか分から…
デジタル資産はパスワードを「ヒント」で残す
スマホやパソコンを使っている方は、デジタル資産の欄を忘れずに書いておきましょう。銀行や証券のネット口座、PayPayや楽天ペイなどの電子マネーやポイント、仮想通貨、LINE・Facebook・X・InstagramといったSNSのアカウント、写真を保存しているクラウドサービス、有料の動画や音楽のサブスクリプションなどが対象です。
デジタル資産は通帳のような「形」がないため、本人が書き残さない限り、家族は存在に気づけません。サブスクは解約されないまま料金が引き落とされ続けることもあります。
書き方のポイントは、サービス名とIDの一覧、そして「亡くなったらどうしてほしいか」の希望です。SNSは削除してほしいのか、写真だけは保存してほしいのか。Facebookでは追悼アカウントの設定やアカウントの削除ができ、InstagramやXでも削除のリクエストができます。パスワードを直接書くのが不安なら、「愛犬の名前+生まれ年」のようなヒント形式で書いておく方法もあります。
いちばん大切なのは、スマホ本体のロック解除の方法です。ここが開かないと、ほかの情報にたどり着けません。ヒント形式でもよいので、家族がたどり着ける手がかりを残しておきましょう。
パスワードをノートに直書きするのが心配なら、「ノートにはサービス名とID、ヒントだけ」「パスワードの一覧は封筒に入れて別の場所に保管」と2か所に分ける方法があります。どちらか一方だけが見つかっても悪用されにくく、両方がそろえば家族は手続きを進められます。
死後の手続きとペット、身の回りのことも一言ずつ
死後にはさまざまな手続きが必要になります。年金の停止、公共料金や携帯電話の名義変更・解約、クレジットカードの解約、各種会員サービスの退会などです。終活ノートには、これらの「契約の一覧」を書いておくと家族の負担が大きく減ります。
契約の一覧は、引き落とし口座の通帳やクレジットカードの明細を見ながら作ると漏れが少なくなります。電気・ガス・水道・電話・インターネット・新聞・保険・会員サービスなど、毎月または毎年お金が出ていくものを順に書き出していきましょう。
ペットを飼っている方は、ペットの名前、かかりつけの動物病院、食べ物の好みや持病、そして「自分に何かあったら誰に世話をお願いしたいか」を書いておくことが大切です。家族が引き取れない場合に備えて、候補となる人とあらかじめ話しておくと安心です。
このほか、自分史や思い出の写真、これからの計画ややりたいことを書く欄を設けているノートもあります。こちらは家族のためというより、自分自身の人生を振り返り、これからを考えるための項目です。書きたい気持ちになったときに、楽しみながら書けば十分です。
家族へのメッセージは「ありがとう」の一言からでいい
終活ノートの最後の項目は、家族や友人へのメッセージです。立派な手紙を書く必要はありません。「ありがとう」の一言からで十分です。
メッセージの欄は、ほかの項目と違って家族の手続きの役には立ちません。それでも、多くの人がこの欄を大切にしているのは、残された家族にとって「最後に届く言葉」になるからです。財産の一覧は時間がたてば用が済みますが、手書きの言葉は何十年も読み返されることがあります。
書き方に迷ったら、「一緒に行った旅行で一番楽しかったこと」「言えずにいた感謝」「これからの人生で大切にしてほしいこと」の3つのうち、どれか1つを書いてみてください。配偶者、子ども、孫、友人と、相手ごとにページを分けるのもよい方法です。
ただし、特定の家族への不満や、財産をめぐる感情的な言葉を書くのは控えたほうが無難です。家族の間にわだかまりを残してしまうおそれがあります。伝えたいことがあるなら、元気なうちに直接話すほうがずっと伝わります。
書いた後が本番|保管場所・伝え方・見直しのタイミング
保管場所は「家族が探す場所」を基準に選ぶ
終活ノートは、書いたら終わりではありません。いざというときに家族が見つけられなければ、どれだけ丁寧に書いても役に立たないからです。保管場所は、「自分がしまいやすい場所」ではなく「家族が探しそうな場所」を基準に選びましょう。
よく選ばれるのは、通帳や印鑑を置いている引き出し、仏壇の引き出し、書斎の本棚などです。家族が「大事なものはあそこにあるはず」と思い浮かべる場所なら、探す時間がかかりません。
注意したいのは、銀行の貸金庫にしまうことです。本人が亡くなると、貸金庫を開けるには相続人全員の同意などの手続きが必要になる場合があり、ノートを取り出すまでに時間がかかってしまいます。入院中など本人が動けないときにもすぐには取り出せません。
パスワードや暗証番号のヒントなど、人に見られると困る情報を含む場合は、ノート本体は家族が見つけやすい場所に置き、ヒントの一覧だけ別の場所に分けて保管すると、見つけやすさと安全性のバランスがとれます。
家族には「ある」ことと「場所」だけ伝えておく
保管場所を決めたら、家族に「終活ノートを書いていること」と「どこに置いてあるか」を伝えておきましょう。中身まで見せる必要はありません。
伝え方に迷う方は多いのですが、お盆やお正月など家族が集まるときに、「もしものときのためにノートを書いてあるから、この引き出しを見てね」と軽く話すくらいで十分です。深刻な雰囲気にしないほうが、家族も受け止めやすいものです。
離れて暮らす子どもには、電話のついでやLINEで伝えておく方法もあります。兄弟姉妹が複数いる場合は、全員に同じように伝えておくと、「自分だけ知らなかった」という不公平感が生まれません。
もし家族に話しにくい事情がある場合は、信頼できる友人や親族に保管場所を伝えておく方法もあります。おひとりさまなら、ノートの最初のページに「このノートを見つけた方は○○に連絡してください」と書いておくのも一つの工夫です。
見直しは年に1回、誕生日か年末に
終活ノートは、年に1回以上、定期的に見直すのが理想です。誕生日や年末など、日にちを決めておくと習慣になりやすくなります。
見直しが大切なのは、連絡先や口座、契約の情報が思った以上に変わりやすいからです。友人が引っ越した、銀行の支店が統合された、保険を見直した、スマホを買い替えた。こうした変化を反映しないままだと、情報が古くなって家族が混乱してしまいます。
見直しの際は、鉛筆で書いた部分を消して書き直し、ページの端に「○年○月見直し」と日付を入れておくと、家族はどの情報が最新かを判断しやすくなります。医療や介護の希望が変わった場合も、遠慮なく書き直してください。気持ちが変わるのは自然なことです。
年に1回の見直しに加えて、入院や引っ越し、配偶者との死別、孫の誕生など、暮らしに大きな変化があったときも見直しのタイミングです。
- Step1: 家族が探しそうな場所に保管する(貸金庫は避ける)
- Step2: 家族に「書いていること」と「保管場所」を伝える
- Step3: 誕生日や年末など、見直す日を決めてカレンダーに書く
- Step4: 見直したらページの端に日付を入れる
やりがちな失敗②:大事にしまいすぎて誰にも見つけてもらえない
二つ目のよくある失敗が、終活ノートを大切にしまいすぎて、いざというときに家族が見つけられないケースです。
原因は、「人に見られたくない」という気持ちです。財産やパスワード、家族への本音を書いたノートは、つい人目につかない場所に隠したくなります。押し入れの奥の箱や、本棚の本の間、自分しか開けない鍵つきの引き出しなどにしまった結果、葬儀が終わってしばらくしてから、遺品整理の最中にやっと見つかった、という話は珍しくありません。その頃には、葬儀の希望も連絡してほしい人のリストも、もう役に立ちません。
対策は、先ほどの2つの工夫をセットで行うことです。保管場所は家族が探しそうな場所にする。そして、「ノートがある」ことと「保管場所」を家族に伝えておく。見られたくない情報は、別の場所に分けて保管すれば安心です。
書くことと同じくらい、「見つけてもらうこと」が大切です。書き終えたら、その日のうちに保管場所を家族に伝える、と決めておくのがおすすめです。
隠し場所にしまったノートは、見つかったときにはもう手遅れ、ということが少なくありません。「見られたくない情報」と「見つけてほしい情報」を分けて保管し、ノートの存在と場所だけは必ず家族に伝えておきましょう。
実は終活ノートだけでは足りない?遺言書・後見制度との上手な組み合わせ方
財産の分け方を確実にしたいなら遺言書を併用する
実は、終活ノートを丁寧に書いた人ほど見落としがちなのが、「ノートだけでは財産の分け方は守られない」という点です。相続対策としてはエンディングノートだけでは不十分で、財産の承継について確かな希望がある場合は、遺言書も準備しておくのがよいとされています。
遺言書は、亡くなった後の財産の配分について書き残す法的な書面で、財産の配分に関する法的効力があります。終活ノートが「家族へのお願い」だとすれば、遺言書は「法律に基づく指示」です。役割がまったく違うので、どちらか一方ではなく両方を用意するのが理想的です。
終活ノートと遺言書の役割分担を整理すると、下の表のようになります。
| 比べるポイント | 終活ノート | 遺言書 |
|---|---|---|
| 法的効力 | なし(本人の希望を伝えるもの) | あり(財産の配分に効力) |
| 書き方 | 自由。鉛筆でも書き直しでもよい | 法律で決められた形式がある |
| 向いている内容 | 連絡先・医療や葬儀の希望・デジタル資産・メッセージ | 誰に何を相続させるか |
| 種類 | 市販・無料テンプレート・デジタル版など | 自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類 |
ただし、遺言書が必要かどうかは家族構成や財産の内容によって変わります。判断に迷うときは、弁護士・司法書士・行政書士などの専門家に相談してみてください。
遺言書は3種類。それぞれの特徴を知っておく
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。どれを選ぶかは、手軽さと確実さのどちらを重視するかで変わってきます。
自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名を自書し、押印して作成します。2019年の法改正により、財産目録についてはパソコンでの作成や通帳のコピーの添付が認められました。自宅で作れて費用がかからないのが利点ですが、形式に不備があると無効になるおそれや、紛失・改ざんのリスクがあります。法務局で保管してもらう制度も用意されています。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の口述を筆記して作る遺言書です。証人2名の立会いのもと、遺言者が電子サインし、公証人も電子署名して完成します。無効になるリスクがきわめて低く、検認も不要ですが、財産額に応じた費用がかかり、証人の手配も必要です。秘密証書遺言は内容を秘密にできるものの、実務上はほとんど使われていません。
費用や手続きの詳細は制度改正で変わることがあるので、最新の情報は日本公証人連合会などの公式情報で確認してください。
判断力が落ちたときの備えは「元気なうち」に
終活ノートと遺言書は、どちらも「亡くなった後」や「意思を伝えられなくなった後」のためのものです。しかし、その手前にある「判断力が落ちてきた時期」への備えも考えておきたいところです。
成年後見制度は、認知症などで物事を判断する能力が十分でない人について、本人の権利を守る人(後見人等)を選び、法律的に支援する制度です。現行制度では、判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの類型に分かれています。この制度については見直しが進められており、類型の一本化や、必要な行為に限って支援する仕組みなどが検討・整備されています。
大切なのは、判断能力が十分なうちに、家族信託や任意後見など「元気なうちにできる対策」で備えておくという考え方です。終活ノートには、「判断力が落ちたら誰に財産の管理をお願いしたいか」「任意後見契約を検討しているか」といった希望を書いておくと、家族が次の一手を考えやすくなります。
制度の詳細や手続きは、家庭裁判所(裁判所)の案内や、地域包括支援センターなどの相談窓口で確認できます。
あなたはどのタイプ?暮らし方別のおすすめの組み合わせ
終活ノートをどこまで書き、何と組み合わせるかは、暮らし方によって変わります。代表的なタイプ別に、おすすめの組み合わせをまとめてみました。
夫婦二人暮らしで、子どもが近くにいる方は、終活ノートを中心に、財産や連絡先、医療の希望をしっかり書いておくのが基本です。財産の分け方で子ども同士がもめそうなら、遺言書も考えておくと安心です。
子どもが遠方に住んでいる方は、かかりつけ医、近所の頼れる人、自宅の鍵の場所、公共料金の契約など、「現地に来ないとわからない情報」を厚めに書いておきましょう。デジタル版を併用して、子どもと共有しやすくするのも一つの方法です。
おひとりさまの方は、終活ノートに加えて、判断力が落ちたときの備え(任意後見など)や、死後の手続きを誰に頼むかを早めに考えておきたいところです。子どもがいない夫婦の場合は、配偶者だけでなく兄弟姉妹や甥・姪が相続にかかわることがあるため、遺言書の必要性を一度専門家に相談しておくと安心です。
どのタイプでも共通しているのは、「まず終活ノートで全体像を整理する」ことが出発点になる、という点です。ノートを書いてみて初めて、遺言書や後見制度が必要かどうかが見えてきます。
まとめ|終活ノートは「少しずつ育てる」家族への贈りもの
終活ノートは、一度で完成させるものではなく、年に1回の見直しを重ねながら少しずつ育てていくノートです。完璧を目指すより、「家族が困らない情報が、見つけやすい場所にある」ことを目標にすると、肩の力が抜けて続けやすくなります。まずは今日、ノートの最初のページに自分の名前と、いざというときに連絡してほしい人を3人書いてみてください。
※制度や手続きの内容は改正されることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。

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