「子どもがいない私たち夫婦は、これから先、本当に幸せにやっていけるのだろうか」——50代後半から60代にさしかかると、ふとそんな思いがよぎる方は少なくありません。まわりが孫の話で盛り上がるなか、少しだけ取り残されたような気持ちになる日もあるかもしれません。
結論からお伝えすると、子なし夫婦の幸せは「子どもがいないこと」では決まりません。むしろ、ふたりの時間とお金を自由に使え、夫婦の関係を深めやすいという強みがあります。一方で、介護や相続、孤独といった「ふたりだからこそ」の課題に、元気なうちから少しずつ向き合っておくことが、その後の安心を大きく左右します。
この記事では、子なし夫婦が幸せに歳を重ねるための考え方を、お茶を飲みながら一緒に整理するつもりで丁寧にお話しします。今のゆとりを楽しむ視点と、これからの備えの両方を、同世代の友人として一緒に考えていきましょう。
・子なし夫婦・夫婦ふたり暮らしが今どれくらいいるのか(最新データ)
・ふたり暮らしならではの自由・ゆとりという幸せの正体
・介護・お金・相続・孤独という「ふたりの課題」への備え方
・50代・60代・70代と年代別に始める、わが家に合った準備の進め方
子なし夫婦は本当に幸せ?増え続ける「夫婦ふたり暮らし」の今

「子どもがいない夫婦は珍しい」「肩身が狭い」と感じている方ほど、まずは今の日本の姿を知っておくと気持ちがラクになります。データを見ると、ふたり暮らしの夫婦はもはや特別な存在ではなく、ごく当たり前の家族のかたちのひとつになっています。
子のいない夫婦は今どれくらいいるのか
国の調査では、子どものいない夫婦の割合は夫婦全体の13.1%(2015年度の出生動向基本調査)とされ、およそ8組に1組にのぼります。さらに、夫婦のみで暮らす世帯は2022年に約1333万人と、1986年の540.1万人から倍以上に増えました。背景には、晩婚化や価値観の多様化、共働きの広がりなどがあります。「うちだけがこうなのでは」という感覚は、数字の上ではまったく当てはまりません。地域や年代によって肌感覚は違いますが、夫婦ふたりの暮らしは社会全体で増え続けているのが実情です。ただし、子のいる・いないで暮らし方を比べて優劣をつける必要はありません。大切なのは「自分たちがどう過ごすか」であって、まわりと同じである必要はないのです。
なぜ「子どもを持たない選択」が増えているのか
子どもを持たない、あるいは結果的に持たなかった理由は、家庭ごとに本当にさまざまです。授かりものなので望んでも叶わなかったご夫婦もいれば、ふたりの時間やキャリアを大切にしたいと考えたご夫婦、経済的な事情を重く受け止めたご夫婦もいます。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2005年生まれの女性が50歳になる時点で子どもを持たない割合は中位の見通しで33.4%、低い見通しでは最大42%に達するとされています。つまり、これからは「子どものいない人生」がさらに一般的になっていくということです。理由は人それぞれでよく、誰かに説明したり、引け目を感じたりする必要はありません。事情が違えば最適な備えも変わるので、「わが家の場合は」と置き換えて読み進めてみてください。
2020年時点(1970年生まれの女性)の生涯無子率は約27%で、これは国際的にも世界最高水準です。「子どものいない人生」は、もはや少数派の特別な選択ではなく、社会の大きな流れのひとつになっています(出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」)。
実は「幸せかどうか」を分けるのは子の有無ではない
意外と知られていないのですが、夫婦の満足度を左右するのは「子どもの有無」そのものよりも、夫婦の会話量や、自分たちの生き方に納得できているかどうかだと指摘されています。内閣府が2025年9月に公表した「満足度・生活の質に関する調査報告書」でも、暮らしの満足度は人とのつながりや健康、家計の安心感など複数の要素で形づくられるとされています。子どもがいても孤独を感じる人はいますし、いなくても日々を豊かに過ごす夫婦は大勢います。「子がいないから不幸」という思い込みこそ、いちばん手放したい考え方です。幸せは外側の条件ではなく、ふたりがどんな関係を育み、どんな備えを積み重ねていくかで決まっていきます。
この記事で一緒に考えたいこと
ここから先は、「今のゆとりをどう味わうか」と「これからの不安にどう備えるか」を両輪で見ていきます。具体的には、ふたり暮らしの自由という強み、介護やお金・相続といった現実的な課題、孤独にしないためのつながりづくり、そして年代別の準備の進め方です。すべてを今日やる必要はありません。気になったところから、ひとつずつ手をつければ十分です。大切なのは「いつかやろう」を「来月やろう」に変えること。読み終えるころには、わが家の最初の一歩が見えているはずです。
夫婦ふたりだからこそ味わえる自由とゆとり
備えの話に入る前に、まずは「ふたり暮らしの良さ」をしっかり確認しておきましょう。課題ばかりに目を向けると不安だけが膨らみますが、子なし夫婦には子育て世帯にはない、はっきりとした強みがあります。
時間とお金を自分たちのペースで使える
子育て世帯では教育費が家計の大きな割合を占めますが、ふたり暮らしではその分を旅行や趣味、住まいの快適さ、そして将来の安心のために回せます。文部科学省などの調査では、子ども一人を大学まで育てる教育費は進路によって数百万円から一千万円を超えるとされており、この負担がない分のゆとりは決して小さくありません。平日の夜にふらりと外食に出かけたり、思い立って温泉へ行ったりと、スケジュールを自分たちだけで決められるのも魅力です。ただし「自由に使える」からこそ、使い切ってしまわないバランス感覚も必要になります。後半でお話しする「使うお金と残すお金」の考え方とあわせて、今の楽しみと将来の安心の両立を意識してみてください。
夫婦の会話と関係が深まりやすい
子どもを介さずに向き合う時間が長い分、子なし夫婦は会話の量が自然と多くなりやすい傾向があります。「次の休みはどこへ行こうか」「老後はどんな家に住もうか」といった相談を重ねるうちに、価値観のすり合わせが進み、絆が深まっていきます。長年連れ添うと会話が減りがちですが、共通の趣味や小さな目標を持つと、ふたりの時間はぐっと豊かになります。一方で、距離が近すぎてささいなことでぶつかることもあります。お互いに一人の時間も尊重し、適度な「ひとり時間」を持つことが、長く心地よく過ごすコツです。べったりでもなく、離れすぎでもない、ちょうどいい距離感をふたりで探していきましょう。
キャリアや趣味、健康への投資がしやすい
子育てに時間を取られない分、仕事のキャリアを続けたり、学び直しや資格取得に挑戦したり、趣味の世界を広げたりしやすいのも強みです。とくに見落とされがちなのが「健康への投資」です。ふたりとも元気でいることが、ふたり暮らしの幸せを支える土台になります。定期的な運動、人間ドックの受診、バランスのよい食事に時間とお金をかけられるのは、ふたり暮らしならではの余裕です。趣味のサークルやスポーツジムに通えば、新しい人とのつながりも生まれます。「子がいない分、何かを諦める」のではなく「だからこそ挑戦できる」と捉え直すと、毎日の景色が少し変わって見えてきます。
「自由に使えるお金」をすべて今の楽しみに回すのではなく、毎月決まった額を「ふたりの未来の安心費」として先に分けておくと、楽しみと備えの両立がしやすくなります。先取りで分けるのがコツです。
定年後の毎日をどう充実させるかは、ふたり暮らしの幸福度に直結します。具体的な過ごし方のヒントは、こちらの記事もあわせてご覧ください。

見て見ぬふりをしがちな「ふたりの老後」3つの不安

強みを確認したうえで、ここからは正直に「不安」とも向き合っていきましょう。先に課題を知っておくことは、怖がるためではなく、安心して今を楽しむためです。子なし夫婦が抱えやすい不安は、大きく3つに整理できます。
介護が必要になったとき、誰に頼るのか
子どもがいる場合でも介護を子に頼れるとは限りませんが、子なし夫婦の場合は「最初に頼る相手」を意識して用意しておく必要があります。多くのご夫婦は、まずはお互いが支え合う「老老介護」になりますが、ふたり同時に体力が落ちる時期が来ると、それも難しくなります。そこで早めに知っておきたいのが、介護保険サービスや地域包括支援センターの存在です。介護保険の自己負担は原則1割(所得により2割・3割)で、デイサービスや訪問介護、施設入所など多様な選択肢があります。「いざとなったら何とかなる」ではなく、お住まいの地域にどんなサービスがあるかを元気なうちに調べておくだけで、心の余裕が大きく変わります。詳しい制度の内容や費用は、お住まいの自治体の窓口で確認しておくと安心です。
認知症になったとき、お金や契約を誰が管理するのか
もうひとつ見落としがちなのが、判断能力が衰えたときの「お金と契約の管理」です。認知症などで判断能力が低下すると、本人名義の預金の引き出しや、不動産の契約・売却が難しくなることがあります。子がいれば家族が手続きを支えてくれることもありますが、ふたり暮らしの場合は、配偶者も同じように高齢で対応しきれない事態が起こり得ます。そこで知っておきたいのが「任意後見制度」です。これは、判断能力が十分なうちに、将来サポートしてもらう人や支援の内容を自分で決めて契約しておく仕組みで、法務省が制度の概要を案内しています。元気な今のうちに「もしものとき誰に何を任せるか」を話し合っておくことが、ふたりの安心につながります。
「まだ先のこと」と備えを先延ばしにした結果、夫が急に入院し、妻が銀行や役所の手続きに一人で追われてパニックになった——というケースは少なくありません。原因は「縁起でもないから」と話題を避け続けたこと。対策は、年に一度でも「もしものとき」をふたりで話す機会を作り、預金口座・保険・契約の一覧をメモにまとめておくことです。話すこと自体が、いちばんの備えになります。
「おひとりさま」になる日への心構え
ふたり暮らしは、いつか必ずどちらか一人になる日を迎えます。これは子の有無に関わらず誰にでも訪れることですが、子なし夫婦の場合は、残された側を支える家族が身近にいないことが多く、より具体的な準備が安心につながります。大切なのは、悲観的になることではなく「そのときも自分らしく暮らせる仕組み」を今から少しずつ整えておくことです。住まい、家計、人とのつながり、頼れるサービス——これらを夫婦そろっているうちに見直しておけば、いざ一人になっても生活が大きく崩れにくくなります。後の章でお話しする終活やつながりづくりは、まさにこの「おひとりさまになる日」への準備でもあります。今から心構えをしておくことで、過度に恐れずに済みます。
老後のお金・健康・孤独といった不安をどう解消していくかは、多くの世代に共通するテーマです。より広い視点での対処法は、こちらの記事で詳しくまとめています。

子なし夫婦の幸せを支えるお金との付き合い方
不安の正体がわかると、次に気になるのが「お金」です。子なし夫婦は教育費がない分のゆとりがありますが、その使い方しだいで将来の安心は大きく変わります。ここでは具体的な計算ではなく、考え方の軸をお話しします。
教育費がない分を「未来の安心」にどう回すか
子育て世帯が教育費に充てる分を、ふたり暮らしでは「今の楽しみ」と「将来の安心」に振り分けられます。ポイントは、その配分を感覚任せにしないことです。たとえば毎月の収入のうち、楽しみに使う分・生活費・将来のための備えという3つの財布をざっくり決めておくと、使いすぎを防ぎやすくなります。将来のための備えには、介護やリフォーム、医療費、そして頼れる専門家への相談費用などが含まれます。子がいないということは、いざというときに金銭面で頼れる相手が限られるということでもあります。だからこそ「自分たちのことは自分たちで」という前提で、無理のない範囲でゆとりを残しておくと安心です。具体的な金額の設計は、ライフプランの専門家に相談するのもひとつの方法です。
どちらかが先立ったあとの生活を考える
ふたり暮らしで意識しておきたいのが、一人になったあとの家計です。年金は世帯の状況によって受け取り方が変わり、一人になると世帯としての収入が減る一方で、生活費はそれほど半分にならないという現実があります。年金の具体的な受給額は加入歴によって大きく異なるため、ここでは断定できませんが、「ねんきん定期便」や日本年金機構の窓口で、ふたりそれぞれの見込み額を確認しておくことをおすすめします。残された側の生活が成り立つかをあらかじめ点検しておけば、保険の見直しや貯蓄の置き方など、打てる手が見えてきます。漠然と不安に思うより、数字で「見える化」することが安心への近道です。正確な見込みは、必ず公式の窓口で確認してください。
「使うお金」と「残すお金」のバランス
子がいないと「誰に財産を残すか」という発想になりにくく、つい「使い切ればいい」と考えがちです。それも一つの価値観ですが、長生きに備えて一定のゆとりは残しておきたいところです。一方で、貯め込みすぎて今の楽しみを我慢しすぎるのも、ふたり暮らしの良さを生かしきれません。目安として、日々の楽しみ・万一の備え・もしものときに整理しやすい形のお金、という3つに分けて考えると、バランスを取りやすくなります。残したお金を誰にどう引き継ぐかは相続の話につながりますが、これは次の章で扱う「ふたりの終活」と深く関わってきます。使うことも残すことも、どちらが正解ということはありません。ふたりが納得できる配分を、何度でも話し合って決めていきましょう。
子なし夫婦のお金は「今の楽しみ」「将来の備え」「一人になったときの生活費」の3つの視点で考えると整理しやすくなります。年金の見込み額は必ず日本年金機構など公式の窓口で確認し、記憶や噂の金額で判断しないことが大切です。
元気なうちにやっておきたい「ふたりの終活」
子なし夫婦にとって、終活はとくに大切なテーマです。なぜなら、財産や手続きを引き継ぐ家族が身近にいないことが多く、準備の有無で残された側の負担が大きく変わるからです。ここでは制度の概要をやさしく整理します(具体的な手続きは専門家にご確認ください)。
遺言書が「ある・ない」で変わること
意外に思われるかもしれませんが、子のいない夫婦では、配偶者が自動的にすべての財産を受け取れるとは限りません。民法では、子がいない場合、配偶者とともに親などの直系尊属が、それもいなければ配偶者と亡くなった方の兄弟姉妹(すでに亡くなっていれば甥・姪)が相続人になります。一般的な法定相続の割合は、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1とされています。つまり、遺言がないと、配偶者が義理の兄弟姉妹と財産の話し合いをしなければならない場面が生じ得るのです。一方で、兄弟姉妹や甥・姪には遺留分(最低限の取り分)がないため、遺言書で「配偶者にすべて」と定めておけば、その通りに引き継げるのが一般的です。これは大きな違いです。具体的な書き方や有効性は、専門家に相談して進めると安心です。
任意後見・見守り契約という選択肢
終活というと相続ばかり注目されますが、「生きている間のサポート」を決めておくことも同じくらい大切です。前の章でも触れた任意後見制度は、判断能力があるうちに将来の支援者と内容を契約しておく仕組みです。あわせて、定期的に連絡を取り合う「見守り契約」を結んでおくと、ふたりの体調変化に早く気づいてもらえます。なお、成年後見制度については2026年4月に見直しの法案が国会へ提出され、必要なときに必要な期間だけ使いやすくする方向で議論が進んでいます。制度は今後変わる可能性があるため、最新の内容は法務省の案内や専門家に確認しながら検討するのがよいでしょう。ふたりとも元気な今こそ、こうした仕組みを落ち着いて選べる絶好のタイミングです。
エンディングノートで気持ちと情報を整理する
遺言書のように法的な効力はありませんが、エンディングノートはふたりの終活の入り口としておすすめです。預金口座や保険、加入サービス、医療や介護の希望、葬儀の考え方などを書き留めておくと、いざというとき残された側がとても助かります。子がいない夫婦では「自分の情報を誰も把握していない」という事態が起こりやすく、ノート1冊にまとめておくだけで安心感がまるで違います。完璧に書こうとすると手が止まるので、まずは口座と保険の一覧から始めるのがコツです。書きながら「これも決めておかなきゃ」と気づくことも多く、夫婦の話し合いのきっかけにもなります。年に一度、内容を見直す日を決めておくと、情報が古くならずに済みます。
夫が亡くなったあと、遺言がなかったため、妻が夫の兄弟姉妹全員と連絡を取り、預金や自宅の手続きで何度も署名・押印を依頼することになった——というケースがあります。原因は「妻が全部相続できるはず」という思い込み。対策は、元気なうちに遺言書を整えておくこと。それだけで、残された配偶者の手続きの負担と精神的なストレスを大きく減らせます。
終活を体系的に学びたい方には、終活カウンセラーという資格もあります。終活の全体像をつかむ入り口として、こちらの記事も参考になります。

孤独にしないための、人とのつながりの作り方
ふたり暮らしの幸せを長く保つうえで、お金や制度と並んで大切なのが「人とのつながり」です。子や孫がいない分、意識して関係を育てておくと、心の支えにも、いざというときの助けにもなります。
甥・姪や親戚との「ほどよい距離」のつくり方
子がいない夫婦にとって、甥・姪は心強い存在になり得ます。ただし「いざというとき頼りたい」という気持ちだけが先走ると、相手に負担を感じさせてしまうこともあります。大切なのは、日ごろから無理のない範囲で交流を持ち、お互いに気持ちのよい関係を築いておくことです。お祝い事に顔を出したり、季節の挨拶を欠かさなかったりといった小さな積み重ねが、信頼関係を育てます。一方で、相続や介護を一方的に期待するのは避けたいところです。何かを頼むなら、きちんと感謝や対価の形を考え、相手の生活を尊重する姿勢が欠かせません。「困ったときだけの付き合い」ではなく「ふだんからの付き合い」が、いざというときに自然に支え合える関係をつくります。
地域・趣味のコミュニティに居場所を持つ
仕事を離れると、人とのつながりが一気に減りやすいのが定年後です。とくにふたり暮らしでは、夫婦だけの世界に閉じこもってしまうと、片方が欠けたときの喪失感が大きくなります。だからこそ、夫婦それぞれが地域や趣味のコミュニティに居場所を持っておくことが大切です。自治体の生涯学習講座、スポーツサークル、ボランティア、習い事など、選択肢はたくさんあります。最初は気後れするかもしれませんが、同世代の仲間ができると、暮らしに張り合いが生まれます。「夫婦で一緒の趣味」と「それぞれ別の居場所」の両方を持つのが理想です。つながりは一日では育ちませんから、元気なうちから少しずつ種をまいておきましょう。
頼れる専門家・サービスとつながっておく
身近に頼れる家族が少ない子なし夫婦こそ、専門家やサービスを「味方」として早めに見つけておくと安心です。たとえば、地域包括支援センターは介護や暮らしの相談に無料で応じてくれる公的な窓口で、シニア世代の心強い味方です。また、見守りサービスや家事支援、緊急通報装置など、ふたり暮らしを支える民間サービスも増えています。お金の相談ならファイナンシャルプランナー、相続や契約なら弁護士・司法書士・行政書士など、分野ごとに相談先を知っておくだけで、いざというときに慌てずに済みます。「誰に聞けばいいかわからない」状態をなくしておくことが、ふたりの安心の土台になります。まずはお住まいの地域包括支援センターの場所を調べることから始めてみてください。
つながりは「困ってから」では作りにくいものです。年賀状やお中元の代わりに、季節ごとの近況メールや短い電話を続けるだけでも、甥・姪や友人との関係はゆるやかに保てます。小さな連絡の積み重ねが、いざというときの支えになります。
立場・状況別|わが家に合った備えの始め方
ここまでの内容を、年代や住まいの状況に合わせて整理しましょう。やるべきことは一度に全部ではなく、今の自分たちに合うものから始めれば十分です。下の表は「高齢者あんしんノート調べ」として、年代別の目安をまとめたものです。
| 年代 | 優先してやりたいこと | かかる費用の目安 |
|---|---|---|
| 50代 | 家計の点検・将来の備えの先取り・健康投資 | 人間ドック2〜5万円程度ほか |
| 60代 | 年金見込みの確認・遺言やエンディングノートの準備 | 公正証書遺言の手数料は財産額により変動 |
| 70代〜 | 任意後見・見守り契約の検討・住まいの見直し | 契約内容・専門家により異なる |
50代・まだ元気なうちにやること
50代は、子なし夫婦の備えを始めるのに最適な時期です。心身ともに元気で、収入もある程度安定しているこの時期に、まず家計の全体像を点検しておきましょう。預金や保険、加入しているサービスを一覧にし、「将来の安心費」を毎月先取りで分ける習慣をつけるのがおすすめです。同時に、人間ドックなどで健康状態を把握し、運動や食生活を整える「健康投資」も始めどきです。終活はまだ早いと感じるかもしれませんが、エンディングノートの口座一覧だけでも書き始めておくと、後がぐっとラクになります。やることが多く見えても、ひとつずつで構いません。「元気な今だからこそできる準備」がたくさんあると前向きに捉えましょう。
60〜70代・リタイア前後にやること
定年前後の60代は、お金と終活の具体策に踏み込む時期です。まず「ねんきん定期便」やねんきんネットで、ふたりそれぞれの年金見込みを確認し、一人になったときの家計も含めて点検しましょう。次に、遺言書やエンディングノートの準備を本格的に進めます。とくに遺言は、配偶者にしっかり財産を残すための大切な手段です。あわせて、退職後にどんな毎日を送りたいか、趣味や地域とのつながりも具体的に考え始めると、暮らしに張り合いが生まれます。70代に近づいたら、任意後見や見守り契約といった「もしものとき」の仕組みも視野に入れます。体力のあるうちに専門家へ相談しておくと、納得のいく選択がしやすくなります。
住まい別・夫婦の価値観別の考え方
備えの中身は、住まいや夫婦の考え方によっても変わります。持ち家の方は、将来の管理やバリアフリー化、引き継ぎ方を、賃貸の方は高齢になっても住み続けられるかや住み替えを考えておきたいところです。また、夫婦で価値観が違うこともよくあります。「お金は使い切りたい派」と「残しておきたい派」、「施設に入りたい派」と「自宅で過ごしたい派」など、考えが分かれたときは、どちらかに無理に合わせるのではなく、お互いの希望を出し合って折り合いをつけることが大切です。話し合いがこじれそうなら、専門家を交えて整理するのも一つの手です。正解はひとつではありません。ふたりが納得できる形こそが、わが家にとっての最適解です。
- Step1: 預金口座・保険・加入サービスを1枚の紙に書き出す
- Step2: 「もしものとき」をふたりで話す日を月に一度決める
- Step3: 地域包括支援センターの場所と連絡先を調べておく
まとめ|子なし夫婦の幸せは「今日の小さな準備」から
子なし夫婦の幸せは、子どもがいるかどうかでは決まりません。ふたりの時間とお金を自由に使い、会話を重ねて関係を深められることは、何にも代えがたい強みです。一方で、介護・お金・相続・孤独といった「ふたりだからこそ」の課題には、元気なうちから少しずつ向き合っておくことが、その後の安心を大きく左右します。大切なのは、不安を抱えたまま立ち止まることでも、見て見ぬふりをすることでもなく、今日できる小さな準備をひとつ始めることです。
ここまでお話ししてきた要点を、最後に整理しておきます。
- ☑ 子のいない夫婦は8組に1組、夫婦ふたり暮らしはもはや当たり前の家族のかたち
- ☑ 幸せを分けるのは子の有無ではなく、ふたりの関係と備えの積み重ね
- ☑ 介護・認知症への備えは、地域のサービスと任意後見を元気なうちに調べておく
- ☑ お金は「今の楽しみ」「将来の備え」「一人になったときの生活費」で考える
- ☑ 遺言がないと配偶者が義兄弟姉妹と手続きすることもある。遺言書で備える
- ☑ 甥・姪や地域のつながりを、ふだんから無理なく育てておく
- ☑ 50代から年代に合わせて、できることから一歩ずつ始める
まずは、預金や保険を1枚の紙に書き出すことから始めてみてください。それだけでも、ふたりの未来は少し見通しがよくなります。次に、月に一度「もしものとき」を話す日を決め、気になることを一つずつ片づけていきましょう。子なし夫婦の老後は、決して寂しいものではありません。準備が整うほど、今この瞬間のゆとりを、心から楽しめるようになります。あなたとパートナーの毎日が、これからもおだやかで幸せなものでありますように。
※本記事は2026年6月時点の情報をもとにした一般的な暮らしの実用情報です。年金・相続・成年後見などの制度や手続きの詳細は、日本年金機構・法務省・各自治体の公式情報や、弁護士・司法書士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家に必ずご確認ください。

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