「還暦祝いに何を贈ればいいか、男性向けだと本当に迷う」——そんな声をよく聞きます。女性なら花やお菓子で形になりますが、父親や義父、職場の上司となると、趣味も好みも読みにくく、赤いちゃんちゃんこを渡すのもためらわれる。手が止まってしまうのも無理はありません。
先に結論をお伝えします。長寿祝いをもらった男女400名への調査(リンベル、2025年1月)では、男性がもらってうれしかった長寿祝いの1位は「お酒」17.0%、2位が「還暦なら赤いものなど長寿祝いにちなんだもの」16.0%、3位が「食事(食事券含む)」15.0%でした。一方、還暦を迎える本人1966年生まれ2,000名への調査(PGF生命、2026年)では、してもらってうれしいことの1位は「一緒に旅行に行く」32.5%。つまり男性への還暦祝いは、モノなら「お酒か赤いもの」、体験なら「旅行・食事」という二本立てで考えると外しにくいのです。
この記事では、男性への還暦祝いのプレゼントについて、調査データにもとづく人気の順位、関係性別の予算、名入れギフトや体験ギフトの実際の価格、そして贈ってはいけないものとのしのマナーまでを整理します。60歳という年齢の受け止め方が20年前とはまるで変わっている、という点も含めてお話しします。
・男性がもらってうれしかった還暦祝いの順位(調査データ)
・親・兄弟・上司・友人、関係性別の予算のめやす
・名入れギフト・体験ギフトの実際の価格帯
・贈ってはいけないものと、のし・渡すタイミングのマナー
還暦祝いのプレゼント、男性が本当に喜ぶのはどれ?調査でわかった順位

「何が喜ばれるか」は、想像ではなく調査結果から入るのが近道です。贈る側の思い込みと、受け取る側の本音には、はっきりしたずれがあります。
男性の1位は「お酒」17.0%。女性と順位が入れ替わる
長寿祝いをもらった経験がある男女400名を対象にした調査(リンベル、2025年1月17日〜20日、インターネット調査)で、男性がもらってうれしかったものの順位は、1位「お酒」17.0%、2位「還暦なら赤いものなど長寿祝いにちなんだもの」16.0%、3位「食事(食事券含む)」15.0%、4位「洋服や装飾品」10.5%、5位「旅行(温泉券や宿泊券含む)」8.0%、そして「花」は6.5%でした。
同じ調査の女性側は、1位「食事(食事券含む)」20.5%、2位が「花」14.0%と「旅行」14.0%の同率。花が男性では下位、女性では2位という差がはっきり出ています。ここが贈り物選びの分かれ目で、女性への還暦祝いの感覚をそのまま男性に当てはめると、ずれが生まれます。
背景には、お酒が「その場で一緒に楽しめる」「消えものなので気を遣わせない」という二つの性格を持っていることがあります。全体順位ではお酒は9.3%で6位ですが、男性に絞ると17.0%で首位に立つ。この落差は、男性向けを探すときに全体ランキングを見てはいけない理由でもあります。
ただし注意点があります。健康上の理由でお酒を控えている方に酒類を贈るのは、いちばん避けたい失敗です。休肝日の話題が出ていないか、最近の飲み方はどうか、事前に家族に確認してから選んでください。飲まない方には、同じ「消えもの」でもコーヒーや調味料、産地のわかる食品へ振り替えるほうが喜ばれます。
女性への還暦祝いを別で探している方は、こちらの記事に女性1,870人の本音がまとまっています。

本人が望んでいるのは「一緒に旅行」32.5%というモノ以外の時間
プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険(PGF生命)が2026年3月30日〜4月2日に実施した「2026年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」では、1966年生まれの男女2,000名(男性1,000名・女性1,000名)に、還暦祝いでしてもらってうれしいことを聞いています。結果は1位「一緒に旅行に行く」32.5%、2位「食事会を開く」26.7%、3位「感謝の言葉をかけてもらう」21.2%でした。
上位3つのうち2つが体験、1つが言葉です。品物の話が出てきません。2024年の同調査(1964年生まれ2,000名、2024年3月18日〜21日)でも1位は「一緒に旅行に行く」36.6%、2位「食事会を開く」28.1%、3位「プレゼントをもらう」27.2%と、旅行と食事会が2年続けて上位を占めています。
ここから読み取れるのは、還暦を迎える本人にとっての価値が「何をもらったか」より「誰と過ごしたか」に寄っているということです。子ども世帯が離れて暮らしていれば、家族全員が集まる機会そのものが贈り物になります。品物を用意しても、渡すのが宅配便だけで終わると、いちばん喜ばれる部分が抜け落ちてしまいます。
とはいえ、全員が旅行好きとは限りません。長距離移動を負担に感じる方、仕事が忙しくてまとまった休みを取れない方もいます。その場合は日帰りの食事会に切り替えるほうが現実的です。「旅行が1位だから旅行」と機械的に決めず、本人の生活リズムに合うかどうかを先に考えてください。
2026年に還暦を迎える1966年(昭和41年)生まれは130万人(出典:総務省統計局/PGF生命「2026年の還暦人に関する調査」)。同調査では、還暦を迎える人の86.0%が60歳以降も働きたいと回答しています。
「現金」25.8%が1位になる調査もある——本音と建前のずれ
同じPGF生命の2026年調査で、もらってうれしいプレゼントを聞いた設問では、1位「現金」25.8%、2位「旅行券」19.3%、3位「お菓子・嗜好品」15.6%という結果が出ています。品物を差し置いて現金が首位に来ているのは、贈る側からするとやや意外な数字ではないでしょうか。
この結果には理由があります。60歳は住宅ローンの残債、子どもの学費、親の介護費用といった支出がまだ続いている年代です。趣味の道具が増えるより、自分で使い道を決められるほうが助かる——そういう現実的な感覚が数字に表れています。旅行券が2位に入っているのも、使い道の自由度が高いギフト券だからと考えられます。
ただし、現金には別の側面もあります。目上の方への贈り物としての現金は「今後の生活の足しに使ってください」という意味に受け取られかねず、失礼にあたるとする考え方が根強く残っています。職場の上司や恩師には現金を避け、商品券やカタログギフトに置き換えるのが無難です。
親子であれば現金でも問題は起きにくいものの、封筒だけを手渡すと味気なさが残ります。実務としては「現金または商品券+小さな記念品+手書きのメッセージ」という組み合わせにすると、実用性と気持ちの両方が伝わります。感謝の言葉が3位(21.2%)に入っていることを思い出してください。
60歳はまだ「老人」ではない——贈り物選びで最初につまずくところ
男性への還暦祝いで失敗が起きるのは、たいてい品物の質ではなく「年齢の受け止め方」を読み違えたときです。ここを外すと、どんなに高価なものでも空気が沈みます。
精神年齢は平均46.2歳、86.0%が働き続けたいと答える世代
PGF生命の2026年調査によると、還暦を迎える人が感じている精神年齢の平均は46.2歳、肉体年齢の平均は55.0歳でした。実年齢より精神年齢が13.8歳も若い計算になります。さらに60歳以降も働きたいと答えた人は86.0%、定期的に運動している人は44.5%です。
この数字が意味するのは、還暦が「引退の節目」ではなくなっているということです。60歳定年後も再雇用や再就職で働き続けるのが標準になり、本人の意識も現役のまま。長寿を祝う行事というより、人生の折り返しを確認する行事に性格が変わってきています。
贈り物の選び方も、この変化に合わせる必要があります。「これからの活動を支えるもの」を選ぶと当たりやすく、「休息と労いを前提にしたもの」を選ぶと外しやすい。同じ健康グッズでも、ウォーキングシューズやスポーツウェアは前者、介護用品に近い見た目のものは後者に分類されます。
ただし例外もあります。体調を崩している方、退職を機に生活を切り替えた方には、この前提が当てはまりません。「まだまだ現役ですね」という言葉が重荷になる場合もあるので、相手の今の状況を優先してください。定年後の暮らし方については、こちらの記事も参考になります。

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「老い」を連想させる贈り物が、いちばん多い失敗パターン
還暦祝いの失敗として繰り返し挙がるのが、老眼鏡・補聴器・杖の3点です。実用性を考えて選んだつもりでも、受け取る側には「そろそろ年寄り扱いか」というメッセージとして届いてしまいます。60歳の実感が46.2歳である以上、当然の反応と言えます。
原因は、贈る側が「60歳=高齢者」という古い枠組みで考えていることにあります。平均寿命が延び、60代前半で介護を必要とする人は多くありません。かつて還暦が長寿の祝いだった時代の感覚が、そのまま残ってしまっているわけです。
対策は単純で、健康や身体の衰えを前提にした品を避けること。血圧計やマッサージ器も、本人からリクエストがない限りは見送るのが安全です。どうしても健康関連を贈りたいなら、スポーツジムの利用券やゴルフ用品のように「動くための道具」に振り替えてください。
逆に、本人から「老眼鏡が壊れた」「杖を探している」と話が出ているなら、迷わず贈って構いません。タブーとされるのは、あくまで本人が望んでいないのに一方的に渡す場合です。リクエストがあるかどうかが分かれ目になります。
失敗パターン①:良かれと思って健康グッズを贈り、場の空気が沈んだ
原因は「60歳=いたわる対象」という前提。対策は、贈る前に「今いちばん時間を使っている趣味は何か」を家族に聞き、その活動を後押しする品に切り替えることです。血圧計より、ゴルフグローブやウォーキングシューズのほうが喜ばれます。
2026年の還暦は1966年(昭和41年)生まれ・丙午の世代
2026年(令和8年)に還暦を迎えるのは、1966年(昭和41年)生まれの方です。この年の干支は丙午(ひのえうま)。誕生日を迎えると満60歳、数え年では61歳になります。前述のとおり、この学年に該当する人は130万人です。
還暦という言葉の由来は「暦が還る」こと。十干(10種類)と十二支(12種類)を組み合わせた干支は全部で60通りあり、60年で一巡します。つまり生まれた年と同じ干支に戻るのが数えで61歳、満60歳のタイミング。「本卦還り(ほんけがえり)」とも呼ばれ、一度生まれ直すという意味が込められています。
丙午生まれには、迷信の影響で出生数が落ち込んだという特徴があります。1966年の出生数がその前後の年より大きく減ったことはよく知られており、同学年の人数が少ない世代です。お祝いのメッセージに「同級生が少ない年代を駆け抜けてきた」といった一言を添えると、型どおりの文面から一歩抜け出せます。
注意したいのは、還暦を数え年で祝わないという点です。数え年61歳=満60歳なので、数え年で「60歳」と数えると1年早くなってしまいます。誕生日の管理は満年齢で行ってください。
いくら包む?関係性別の予算と、平均27,300円という数字の読み方

金額は、贈る相手との関係で大きく変わります。相場を知らずに突出した額を包むと、かえって気を遣わせる結果になります。
親へは1〜2万円が最多で約40%
藤巻百貨店がまとめた関係性別の予算では、父親・母親への還暦祝いは「1〜2万円」がもっとも多く約40%、次いで「3〜5万円」が約18%、「2〜3万円」が約17%となっています。1〜3万円のゾーンに6割近くが集まる形です。
高齢者あんしんノートで参照している制度・相場データでも、子から親への還暦祝いは10,000〜30,000円としており、この範囲が実勢に近いと考えられます。一方でギフトモールの解説では父母へ30,000〜50,000円という記載もあり、情報源によって幅があります。
この差は、贈り主の年齢と家計状況の違いから生まれます。30代で子育て中の子どもと、50代で余裕がある子どもとでは出せる額が違って当然です。相場は「これ以下だと失礼」という基準ではなく、周囲がどのあたりに集まっているかの目安として使ってください。
注意点として、金額を上げすぎると本人が「お返しをしなければ」と負担に感じることがあります。年金生活に入る前後の親にとって、高額な贈り物は素直に喜べない場合もある。1〜3万円で品物を選び、余った予算を食事会に回すほうが満足度は上がります。
兄弟姉妹・親戚・上司・友人はいくらが目安か
親以外の関係では、金額が一段下がります。藤巻百貨店の資料では、友人・職場の上司・親戚への予算は5,000円〜2万円。ギフトモールの解説では、兄弟姉妹へは10,000円〜30,000円(5,000〜20,000円とする情報源もあり)、職場の上司や目上の方へは5,000円〜20,000円程度とされています。
職場関係で個人的に高額な品を贈ると、受け取る側が処遇上の気遣いをしなければならなくなります。部署でまとめて出し合い、連名で1つの品を贈る形にすれば、1人あたり3,000〜5,000円で見栄えのする品が用意できます。上司への還暦祝いは、この方法がもっとも角が立ちません。
兄弟姉妹が複数いる場合も、出し合うのが定石です。3人で1万円ずつ出せば3万円の品が選べますし、金額の足並みも自然にそろいます。誰かひとりが突出して高額な品を用意すると、他の兄弟が肩身の狭い思いをする——これが還暦祝いでよくあるもめごとです。
義父への還暦祝いは、配偶者の兄弟姉妹と足並みをそろえるのが基本。実家の慣習が自分の家と違うことも多いので、金額を決める前に配偶者に「あなたの家ではどうしてきたか」を確認してください。
| 贈る相手 | 予算のめやす | 選び方のポイント |
|---|---|---|
| 父・義父 | 1〜2万円が最多(約40%) 次いで3〜5万円(約18%) | 品物+食事会の組み合わせ |
| 兄・弟 | 10,000円〜30,000円 (5,000〜20,000円とする例も) | きょうだいで出し合って連名に |
| 職場の上司・恩師 | 5,000円〜20,000円 | 部署でまとめ、現金は避ける |
| 友人・知人 | 5,000円〜20,000円 | お酒や消えものが無難 |
| 親戚 | 5,000円〜20,000円 | 親族間で金額をそろえる |
高齢者あんしんノート調べ(藤巻百貨店・ギフトモールの公開データおよび当サイト参照の相場データをもとに作成)
「親への平均27,300円」という数字をどう扱うか
還暦祝い専門店の六〇屋が紹介している調査では、親への還暦祝いプレゼントの平均額は27,300円とされています。実施は株式会社GIFCOMのインターネットアンケートで、対象は18歳〜59歳の男女824名、調査時期は2008年5月30日〜31日。予算「2万円以上」が約4割を占めていました。
この数字は使い方に注意が必要です。実施が2008年で、20年近く前のデータにあたります。物価も家計構造も当時とは変わっているため、そのまま「今の平均」として扱うことはできません。ただ、1〜3万円のゾーンに人が集まるという傾向は、より新しい藤巻百貨店の集計とも一致しています。
同じ調査では、贈りたいものの1位が「旅行・温泉」61.7%、2位が「お酒」31.6%、同率で「レストランでの食事」31.6%、4位「衣服・靴・バッグ・財布」24.8%、5位「健康器具」17.0%という結果も出ています。旅行とお酒が上位に来るのは、2025年・2026年の調査と変わりません。
複数の調査を並べると、時期が違っても「体験+お酒」という骨格が動いていないことがわかります。トレンドを追いかけるより、この骨格を押さえるほうが確実です。
失敗パターン②:きょうだいで金額を相談せず、後から差が発覚した
長男が5万円、次男が5,000円の品——後で顔を合わせたときに気まずさが残ります。対策は、日程を決める段階で「ひとり1万円ずつ出して連名にしよう」と先に決めること。金額をそろえるより、出し合って1つにするほうが差が生まれません。
お酒・タンブラー・名入れ——定番ギフトの価格帯と選び分け
男性の1位が「お酒」である以上、酒類と酒器は最有力候補です。実際に流通している価格を知っておくと、予算の当てはめが早くなります。
名入れウイスキー・名入れ焼酎の実際の価格
ギフト通販のギフトモールが公開している男性向け還暦祝いの人気ランキング(2026年)では、1位が名入れウイスキー(サントリー知多700ml)12,400円、3位が名入れウイスキー(サントリー角瓶700ml)6,200円、5位が名入れ焼酎(黒霧島・赤霧島900ml)4,500円となっています。
名入れの酒類が支持されるのは、消えものでありながら記念品としての性格も持つからです。ボトルに名前と日付が入っていれば、飲み終わった後も瓶を残す人がいます。「気を遣わせない」と「記憶に残る」を両立できるのが強みです。
予算に合わせた選び分けとしては、5,000円以内なら名入れ焼酎(4,500円)、6,000円台なら角瓶ベース(6,200円)、1万円以上かけるなら知多ベース(12,400円)というのが一つの目安になります。銘柄は本人がふだん飲んでいるものに寄せるのが基本で、ウイスキー党に日本酒を贈っても喜ばれにくい点は押さえておきましょう。
注意点は納期です。名入れ商品は彫刻やラベル制作の工程が入るため、当日注文して翌日到着とはいきません。誕生日の2〜3週間前には発注しておくと安心です。また、4本セットや9,000円ちょうどといった数字は「死」「苦」を連想させるとして避ける習慣があるので、個数と金額はずらしてください。
タンブラー・グラス類は4,400円から13,200円まで
同ランキングでは、酒器も上位に入っています。2位が還暦祝いデザインの名入れグラスタンブラー4,400円、4位がHORIE燕三条チタン名入れタンブラー『白樺』270ml 11,000円、9位が名入れMIYABIタンブラーシルキー200ml(錫器)13,200円。6位には名入れメガネケース(革巻き)6,500円も入っています。
酒器が選ばれる理由は、毎日使うたびに贈り主を思い出す点にあります。お酒そのものは数週間で無くなりますが、タンブラーは何年も残る。「消えもの」と「残るもの」で迷ったときは、両方を組み合わせて予算内に収める手もあります。名入れ焼酎4,500円とタンブラー4,400円を合わせれば、1万円以内で二本立てが完成します。
素材による違いも押さえておくと選びやすくなります。チタン製は軽くて保温性が高く、錫器は口当たりがまろやかになるとされ、ガラス製は色や模様を楽しめる。ビール党にはチタンや錫の真空断熱タイプ、日本酒党には錫の酒器、ウイスキー党にはロックグラスというのが定番の当てはめ方です。
失敗しやすいのは、すでに同じものを持っているケースです。お酒好きの男性は酒器をいくつも持っていることが多く、6個目のグラスは使われずに戸棚へ入ります。事前に食器棚を見ておくか、家族にそれとなく確認しておくと重複を防げます。
名入れギフトは「毎日使うもの」と「たまに使うもの」で正解が変わります。毎日使うマグやタンブラーに大きく名前が入っていると、人前で出しにくいという声も。来客時にも出せる品なら、名入れは底面や側面に小さく入れてもらうほうが長く使ってもらえます。
実は、名入れは「うれしい」と「使いにくい」の紙一重
意外と知られていないのですが、名入れギフトは万人向けではありません。ランキング上位を名入れ商品が占めているのは事実ですが、それは名入れ専門の通販サイトが集計しているランキングだから、という側面もあります。売れ筋と満足度は必ずしも一致しません。
名入れが向くのは、家の中で使う品です。自宅の晩酌用タンブラー、書斎で使うペン、車のキーホルダー——人目に触れない場面なら、名前が入っていても抵抗は生まれにくい。逆に、外へ持ち出すバッグや財布、職場で使う品に大きく名前が入っていると、使う場面が限られてしまいます。
もう一つ、名入れ品は買い替えができません。気に入らなくても返品や交換がしづらく、使わないまましまい込まれる可能性がある。だからこそ、本人の好みが読み切れない相手(義父や上司など)には、名入れなしの上質な品か、選んでもらえるカタログ・商品券のほうが安全です。
まとめると、名入れが力を発揮するのは「好みを知り尽くしている実の父」に対して。関係が近いほど当たりやすく、遠いほど外れやすい。この線引きを頭に置いて選ぶと、失敗が減ります。
趣味に沿った実用品という選択肢
ゴルフ、釣り、登山、カメラ、車。60歳前後の男性には、長く続けてきた趣味があることが多いものです。その趣味に沿った消耗品や小物は、名入れ以上に確実な選択肢になります。ギフトモールのランキングでも、レザーナンバープレートキーホルダー2,200円のような小物が8位に入っています。
趣味の道具が強いのは、本人が「あれば助かるが、自分では買い替えない」ものが必ずあるからです。ゴルフグローブ、釣り用のタオル、カメラのストラップ——単価が高くないため後回しにされがちな品を新調してあげると、使うたびに思い出してもらえます。
選ぶときのコツは、本体ではなく周辺の消耗品を狙うこと。ゴルフクラブやカメラ本体は、こだわりが強くて他人が選べません。一方で、グローブやボール、ストラップやクリーニング用品は、複数あって困るものではない。3,000〜6,000円の予算でも十分に形になります。
注意したいのは、その趣味を今も続けているかどうかです。膝を痛めてゴルフから離れている、船酔いがひどくなって釣りをやめた——といった変化は本人から言い出しにくいもの。「最近もラウンドしてる?」と一度聞いてから決めてください。
モノより時間?旅行・食事・体験ギフトという選び方
本人調査で1位が「一緒に旅行に行く」32.5%である以上、体験を贈るという発想は避けて通れません。品物と組み合わせる形でも成立します。
旅行が1位になる理由と、現実的な代替案
PGF生命の2026年調査では、現在の生活の三大娯楽として「旅行」22.9%、「食事・グルメ」13.5%、「テレビ視聴」11.6%が挙がっています。娯楽の首位が旅行で、してもらってうれしいことの首位も旅行。ここは一致しています。
還暦世代にとって旅行が特別なのは、時間の余裕が生まれ始める一方で、体力はまだ十分にあるからです。60歳以降も働きたい人が86.0%とはいえ、現役期より休みは取りやすくなる。「行きたかったところに行ける時期」が始まるタイミングと、還暦が重なっています。
とはいえ、家族全員の旅行は日程調整が難関です。子ども世帯に小さな子がいれば、宿の確保も移動も一苦労。現実的な代替案としては、①日帰り温泉+食事、②宿泊券だけを贈って夫婦で行ってもらう、③近場の一泊で人数を絞る、の3通りが取り回しやすい形になります。
注意点は、本人不在のまま日程と行き先を決めてしまわないことです。サプライズにこだわるあまり、本人の通院日や仕事の繁忙期にぶつかると台無しになります。「お祝いの旅行を計画したいのだけど、いつが空いている?」と先に聞くほうが、結果的に喜ばれます。
体験ギフトの実際の価格——11,880円から115,500円まで
日程を押さえるのが難しいなら、体験ギフトを渡して本人に予約してもらう方法があります。体験ギフト専門のソウ・エクスペリエンス公式サイトが還暦祝い向けに掲載している商品と税込価格は、次のとおりです。
1万円台では、総合版カタログギフト(GREEN)11,880円+送料605円、FOR2ギフト(GREEN)11,880円+送料605円、ホテルランチギフト16,280円+送料605円、水辺のレストランギフト17,380円+送料605円、ホテルバーギフト17,380円+送料605円。2万〜3万円台では、鉄板焼&ステーキギフト(eギフト)23,100円、シアター&ミュージックギフト28,600円+送料605円、アニバーサリーレストランギフト29,700円+送料605円。
予算を上げると、旅と体験のギフト(BROWN)34,650円・送料無料、ホテルスパギフト36,850円・送料無料、旅と体験のギフト(SILVER)57,750円・送料無料、レストランギフト(SILVER)57,750円・送料無料、寿司ギフト64,350円・送料無料、海辺の温泉旅ギフト66,550円・送料無料、ふたり旅ギフト115,500円・送料無料といった選択肢が並びます。
体験ギフトの利点は、贈った側が日程を管理しなくていいことです。きょうだいで出し合って3万円台の旅ギフトを1つ、というまとめ方もしやすい。注意点は有効期限で、購入から一定期間内に利用する必要があるため、渡すときに「いつまでに使えるか」を口頭で伝えておくと、期限切れを防げます。
- Step1: 2か月前に本人へ「お祝いをしたい」と伝え、候補日を3つ出してもらう
- Step2: 個室のある店を予約し、店側に「還暦祝いで利用する」と伝える
- Step3: 参加者で予算を出し合い、贈り物を1つにまとめて連名にする
- Step4: 当日は乾杯の前に贈呈と手紙の朗読。写真は必ず全員で撮る
現金・商品券を渡すときの整え方
もらってうれしいプレゼントの1位が「現金」25.8%、2位が「旅行券」19.3%という結果を踏まえると、現金や金券は有力な選択肢です。ただし前述のとおり、目上の方への現金は失礼と受け取られる考え方があるため、渡す相手と形を選ぶ必要があります。
親子であれば、現金でも問題は起きにくいのが実情です。それでも封筒だけを渡すのではなく、のし袋に入れて表書きを整え、手紙を添える。この一手間があるかどうかで、印象がまるで変わります。
職場関係や義理の関係では、商品券・ギフトカード・カタログギフトに置き換えるのが定石です。金額が伝わりにくく、使い道は本人が決められる。デパートの商品券なら贈答品としての体裁も整います。
注意点は金額の刻み方です。4万円、9,000円といった「4」「9」を含む額は避ける習慣があります。3万円、5万円、1万円といった切りのいい額にしておくと、余計な気をもませずに済みます。
「赤いもの」は照れくさい?さりげなく取り入れる方法
男性の2位が「還暦なら赤いものなど長寿祝いにちなんだもの」16.0%。赤を贈るという選択には、いまも一定の支持があります。問題は、その出し方です。
赤いちゃんちゃんこの由来を知ると、選び方が変わる
還暦に赤を贈るのは、二つの意味が重なっているためです。一つは、赤に魔除けの力があるとされ、かつて産着に使われていたこと。もう一つは、暦が一巡して「赤ちゃんに戻る」という本卦還りの考え方です。子どもの袖なし羽織であるちゃんちゃんこを贈るのは、この二つが結びついた結果でした。
つまり赤いちゃんちゃんこは、単なる余興グッズではなく、生まれ直しを祝う道具だったわけです。この背景を知っていると、「恥ずかしいから省略」ではなく「意味を伝えたうえで、形を変えて取り入れる」という発想が出てきます。
現代では、赤いシャツ、ネクタイ、スカーフなど実用的な赤いグッズを贈るケースが増えています。ちゃんちゃんこは写真撮影の場面だけ着てもらい、日常で使うのは赤い小物にする——という使い分けも一般的です。
注意したいのは、本人が写真を嫌がる場合です。人前で着せられることに強い抵抗を示す方もいます。無理に着せて記念写真を撮るより、赤い小物を静かに渡すほうが気持ちが伝わることもある。相手の性格を優先してください。
日常で使える赤——工芸品なら派手になりにくい
「赤い服は着ない」という男性でも、器なら受け入れやすいものです。赤色の江戸切子ロックグラスは12,100円(税込)、名入れの江戸切子ロックグラスのペアセット(青と赤)は24,800円(税込)で流通しており、赤系の江戸切子ロックグラスは9,900円〜41,800円の価格帯で選べます。
工芸品が使いやすいのは、赤が「祝いの色」ではなく「作品の色」として成立するからです。切子グラスの赤は、還暦を知らない来客が見ても違和感がありません。日常のなかに置いておける赤、という点で衣類より汎用性があります。
ほかにも、赤いゴルフグッズという方向があります。マーカー、ボール、グローブ、ポロシャツ、キャップなど、ゴルフウェアは赤の面積が大きくても浮きにくく、コースでは差し色として機能する。楽天市場でも「ゴルフウェア 赤 還暦」で数百件の商品が並んでいます。
選ぶときの注意は、赤の彩度です。同じ赤でも、朱赤に近い明るい赤は年齢を問わず着られますが、ワインレッドや落ち着いた赤のほうが日常に馴染みます。ふだんの服装が地味な方には、後者を選ぶほうが実際に使ってもらえます。
赤いものを贈るなら、「着るもの」より「使うもの」のほうがハードルが下がります。赤いネクタイやシャツに抵抗がある方でも、赤いグラスや赤いゴルフ小物なら日常に取り入れやすい。ちゃんちゃんこは購入せずレンタルで済ませ、写真撮影だけに使う家庭も増えています。
古希以降の色も知っておくと、次の節目で困らない
還暦の赤に対して、その先の長寿祝いにもそれぞれ色があります。古希(70歳)は紫、喜寿(77歳)も紫、傘寿(80歳)は金茶・黄色、米寿(88歳)は金茶とされています。
由来もそれぞれです。古希は唐の詩人・杜甫の「人生七十古来稀なり」という一節から。喜寿は「喜」の草書体が「七十七」と読めることから。傘寿は「傘」の略字が「八十」に分解できることから。米寿は「米」の字が「八十八」に分けられることから来ています。
還暦の時点でこの流れを知っておくと、10年後の古希祝いでも慌てずに済みます。金額の相場も、当サイトで参照している長寿祝いのデータでは古希10,000〜30,000円、喜寿10,000〜30,000円、傘寿・米寿10,000〜50,000円と、還暦と同じか少し上の水準です。
ただし、色にこだわりすぎる必要はありません。紫のセーターを毎回贈られても困る、という声もあります。色は「迷ったときの手がかり」として使い、本人の好みが明確ならそちらを優先するのが実用的です。
贈ってはいけないものと、のし・渡し方のマナー
最後に、ここを外すと台無しになる部分を確認しておきます。品物より、こちらのほうが記憶に残ってしまうものです。
タブーとされる贈り物のリスト
還暦祝いで避けるべきとされる品には、いくつかの系統があります。まず「年寄り扱い」に見えるもの——老眼鏡、補聴器、杖。次に「これからも働け」の意味に取られるもの——鞄、時計、文房具。目上の方への贈り物としては、これらは避けるのが通例です。
「踏む・敷く」ものも避けます。靴、下着、敷物・マット類は「あなたを踏んでいく」「下に見ている」というメッセージになるとされ、目上の方には贈りません。ハンカチは「手巾(てぎれ)」の音から「縁切れ」を連想させるという理由で外します。
弔事を連想させるものも同様です。日本茶は香典返しの定番として定着しているため、お祝いの席には向きません。櫛は「苦」「死」の音を含むためお祝い全般でタブーとされ、椿の花は花ごと落ちる姿が死を連想させるとして贈答には使いません。
数字にも決まりごとがあります。4と9は「死」「苦」を連想させるため、金額や個数がこの数字にならないようにします。4本セットのグラス、9,000円の商品券といった組み合わせは避けてください。とはいえ、これらは慣習であって法則ではありません。本人が欲しがっているものであれば、タブーより本人の希望が優先されます。
- ☑ 老眼鏡・補聴器・杖など「老い」を前提にした品になっていないか
- ☐ 靴・下着・敷物・ハンカチ・日本茶・櫛が含まれていないか
- ☐ 金額や個数に4・9が入っていないか
- ☐ お酒を贈る場合、健康上の制限がないか確認したか
- ☐ 名入れ商品の納期は誕生日に間に合うか
- ☐ きょうだい・同僚と金額の足並みをそろえたか
のしの表書きと水引の選び方
還暦祝いののしは、表書きに「還暦御祝」「祝還暦」「寿還暦」のいずれかを書きます。単に「御祝」「寿」でも問題ありません。水引は紅白の蝶結び(花結び)を選びます。
蝶結びを選ぶ理由は、何度あってもよいお祝いだからです。結婚や快気祝いのように「一度きり」が望ましい場面では結び切りを使いますが、長寿祝いは古希、喜寿、傘寿と続いていくもの。何度でも結び直せる蝶結びが適しています。
書き方は、水引を境に上段が贈る目的、下段が贈り主の名前です。連名にする場合は右に男性、左に女性の名前を書き、人数は基本的に3名まで。それ以上になる場合は代表者名に「他一同」と添え、全員の名前は別紙に書いて中包みへ入れます。
注意点として、内のしと外のしの使い分けがあります。手渡しなら包装紙の外にのしをかける外のし、配送なら包装紙の内側にかける内のしが一般的です。店舗で購入するときに「還暦祝いで、手渡しします」と伝えれば適切に対応してもらえます。メッセージの書き方に迷ったら、こちらの記事に例文がまとまっています。

渡すタイミングは満60歳の誕生日が基準
還暦祝いは、満60歳の誕生日に祝うのが現代では一般的です。数え年で数えると1年ずれてしまうため、必ず満年齢で判断してください。実務としては、60歳の誕生日当日から61歳の誕生日前日までの間に行う人が多くなっています。
もともとは、数え年61歳を迎えるお正月から節分ごろまでに祝う行事でした。年齢を数え年で管理していた時代の名残です。現代は満年齢が基準になったため、この時期にこだわる必要はなくなりました。
誕生日当日に集まれない場合は、正月やお盆など家族が集まりやすいタイミングにずらしても構いません。敬老の日に合わせる家庭もあります。ただし、還暦と敬老の日を同じ贈り物で済ませると「まとめられた」と感じる方もいるので、別の機会として扱うほうが無難です。
失敗パターン③:数え年で数えて1年早くお祝いしてしまった
数え年61歳=満60歳です。数え年で「60歳」と数えると1年早まります。対策は、生まれ年に60を足した年(1966年生まれなら2026年)が還暦の年だと覚えておくこと。誕生日を迎える前後で満60歳になるので、日付の確認も忘れずに。
まとめ:還暦祝いのプレゼントは、男性の「これから」に寄り添うものを
男性への還暦祝いを選ぶとき、いちばん大事なのは金額でも品目でもなく、相手を「これから何かをする人」として見られているかどうかです。60歳を迎える人の精神年齢は平均46.2歳、86.0%が働き続けたいと答えている。いたわりの気持ちで選んだ健康グッズより、趣味を後押しする小物や、一緒に過ごす時間のほうが響くのは、この感覚の差から生まれています。
調査データを重ねると、答えの骨格ははっきりしています。モノなら男性の1位はお酒17.0%、2位は赤いものなど長寿祝いにちなんだもの16.0%。体験なら一緒に旅行32.5%、食事会26.7%。この二つを組み合わせ、予算の範囲で形にすれば、大きく外すことはありません。
要点をもう一度整理します。
- 男性がもらってうれしかった長寿祝いは、1位お酒17.0%、2位赤いものなど16.0%、3位食事15.0%(リンベル、2025年1月、400名)
- 本人がしてほしいことは、1位一緒に旅行32.5%、2位食事会26.7%、3位感謝の言葉21.2%(PGF生命、2026年、2,000名)
- 予算は父・義父へ1〜2万円が最多(約40%)、兄弟へ10,000円〜30,000円、上司・友人へ5,000円〜20,000円
- 名入れウイスキーは4,500円〜12,400円、酒器は4,400円〜13,200円、体験ギフトは11,880円〜115,500円の価格帯
- 老眼鏡・補聴器・杖・靴・下着・敷物・ハンカチ・日本茶・櫛は避け、金額や個数の4・9も外す
- のしは紅白の蝶結び、表書きは「還暦御祝」「祝還暦」「寿還暦」または「御祝」「寿」
- 2026年に還暦を迎えるのは1966年(昭和41年)生まれ・丙午の世代で、130万人
最初の一歩として、今日できることを一つだけ挙げるなら、本人か同居家族に「最近いちばん時間を使っていることは何か」を聞くことです。ゴルフなのか、旅行の計画なのか、家庭菜園なのか。それがわかれば、候補は自然に3つ程度まで絞れます。予算を決めるのはその後で構いません。
還暦は、長寿を祝う行事から人生の折り返しを確認する行事へと性格を変えてきました。赤いちゃんちゃんこを着せて写真を撮るのも、日帰り温泉に一緒に行くのも、どちらも正解です。形式より、集まって「おめでとう」と言える場をつくること。それがいちばんの贈り物になります。
※本記事で紹介した調査データはPGF生命「2026年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」およびリンベル「もらってうれしい長寿祝いランキング」、体験ギフトの価格はソウ・エクスペリエンス公式サイトによるものです。価格・在庫は変動するため、購入前に各社公式サイトで最新情報をご確認ください。

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