親族の葬式が近づくと、「自分も何か挨拶をしなければいけないのだろうか」と落ち着かなくなるものです。喪主ではないのに親族代表を頼まれた、受付で参列者に何と言えばいいのかわからない、久しぶりに会う親戚との会話も気が重い。悲しみの中で言葉を選ぶのですから、迷うのは当然のことです。
先に結論をお伝えします。親族の挨拶に、立派な言葉は必要ありません。親族代表なら「お礼・故人の思い出・今後のお願い」の3つを1〜3分ほどで、それ以外の親族なら「本日はありがとうございます」の一言で十分に役目を果たせます。大切なのは上手に話すことではなく、自分の立場に合った長さで、感謝を伝えることです。
この記事では、立場ごとの役割の違いから、そのまま使える例文7つ、避けたい言葉、家族葬の場合の考え方まで順番にお話しします。地域や宗教、家ごとのしきたりで違う部分もありますので、「一般的にはこう、でもご家庭によってはこういうこともある」という幅を持たせてお伝えします。
・喪主、親族代表、それ以外の親族で挨拶がどう違うのか
・通夜、出棺、精進落としなど場面ごとの挨拶の例文7つ
・うっかり使いがちな忌み言葉と、言い換えの方法
・家族葬でも挨拶は必要か、お金の話はどこまで触れるか
同じ「親族」でも挨拶の役割は立場で変わります

法律上の親族は広いけれど、挨拶の役割は関係の近さで決まります
葬儀での挨拶の役割は、法律上の親族かどうかではなく、故人との近さと、その家での立場で決まります。民法725条では、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族を親族と定めています。つまり法律上の親族はいとこの子どもなどまで含む広い範囲で、その全員に挨拶の役割が回ってくるわけではありません。親等は親族間の世代数を数えて決めるもので、自分から見た子や親は一親等、きょうだいは二親等、おじ・おばや甥・姪は三親等にあたります。
実際の葬儀では、配偶者や子が喪主を務め、きょうだいや甥・姪などが親族代表を頼まれる形がよく見られます。条文の内容は法令翻訳データベースの民法で確認できます。ただし親等が近いから必ず代表を務める、という決まりはありません。遠方に住む弟より、近所で長年付き合ってきた甥のほうがふさわしい、という判断もごく自然なものです。
喪主と親族代表は、話す相手と目的が違います
喪主は遺族を代表して参列者に感謝を伝える人、親族代表は親族を代表して葬儀の場を締めくくる人です。喪主は葬儀全体の責任者ですから、挨拶の機会も多く、通夜から精進落としまで複数回にわたって話すことがあります。一方の親族代表は、喪主が高齢であったり、悲しみの中で話すことが難しかったりする場合に、代わりに立つことが多い役割です。
たとえば、夫を亡くした80代の妻が喪主を務め、出棺の挨拶だけ故人の弟が親族代表として話す、という分担はよくあります。この場合、弟は「兄に代わりまして」ではなく「喪主に代わりまして」と切り出すと、立場がはっきりします。親族代表を頼まれたら、最初に「どの場面で話すのか」「喪主も話すのか」を確認してください。ここが曖昧なまま当日を迎えると、喪主と同じ内容を続けて話してしまうことがあります。
喪主はどう決まるのか、親族で揉めないための考え方
喪主は、配偶者か子が務めるのが今も一般的ですが、順番が厳密に決まっているわけではありません。もともと家を継ぐ人が務めるという考え方があり、長男が選ばれることが多かった時代の名残で、今でも「長男でなくていいのか」と気にする親戚がいらっしゃいます。ただ、最近は配偶者が高齢で体力面に不安があれば子が務める、子が遠方なら同居の家族が務める、といった事情優先の決め方も増えています。
故人の希望が遺言やエンディングノートに書かれていれば、それを尊重するのがいちばん角が立ちません。何もなければ、配偶者、子、きょうだいの順に、本人の体調や住まいの距離を考えて話し合うとよいでしょう。喪主が高齢であれば、喪主は配偶者のままにして、実務と挨拶を子や親族代表が担う「名前と役割の分担」という方法もあります。地域の慣習が強い土地では、年長の親族に一言相談しておくと後のしこりを防げます。
役割がなくても、一言の挨拶は誰にでも必要です
代表を頼まれていない親族でも、短い一言だけは用意しておきましょう。親族は参列者から見れば「迎える側」にあたるからです。一般の参列者とは違い、会場では遺族に近い立場として声をかけられることが多く、「このたびはご愁傷様でした」と言われて言葉に詰まる、という場面が起こります。
具体的には、「本日はお越しいただき、ありがとうございます」と、「故人がお世話になりました」の2つで足ります。声が小さくても、頭を下げるだけでも、失礼にはなりません。気をつけたいのは、親しい参列者を見つけて立ち話が長くなってしまうことです。後ろに人が並んでいないか、焼香の案内が始まっていないかに目を配ると、自然に切り上げられます。
親族代表を頼まれたら、喪主か葬儀社の担当者に「話す場面」「話す順番」「持ち時間」の3点を聞いておきましょう。担当者は同じような場面を数多く見ていますので、当日の流れに合わせて具体的に教えてくれます。
親族の葬式で挨拶をする場面はいつ?通夜から精進落としまで
通夜では「閉式」と「通夜振る舞い」の2回が基本です
通夜で挨拶が求められるのは、主に閉式のときと、通夜振る舞いが始まるときです。通夜は仕事帰りに駆けつける方も多く、当日の遅い時間に集まっていただくことになるので、まず足を運んでくれたことへの感謝を伝える流れが定着しました。閉式の挨拶では、参列のお礼、翌日の葬儀の案内、通夜振る舞いへの誘いを続けて伝えます。
たとえば、喪主が「ささやかではございますが、別室にお食事を用意しております」と案内し、食事の席の最後に「明日の葬儀は午前中に執り行います」と添えるような形です。時間は葬儀社に確認した正確なものを伝えましょう。なお、少人数の通夜や、通夜振る舞いを行わない場合は、挨拶が1回で済むこともあります。親族代表が話す機会はこの場面では少なめですが、喪主の体調によっては代わりを頼まれることがありますので、心づもりだけしておくと安心です。
もっとも改まるのは告別式後の「出棺」の挨拶です
親族代表が話すとすれば、いちばん多いのが出棺の場面です。参列者が故人を見送るために集まっている、いわば葬儀の締めくくりにあたるので、一同への感謝をきちんと述べる場になっています。多くの場合、棺を霊柩車に納めたあとに、喪主か親族代表が参列者の前で話します。
内容は、参列のお礼、生前お世話になったことへの感謝、故人の人柄が伝わる短い思い出、遺族へのお付き合いのお願いです。屋外で立ったまま聞いていただくことが多いので、冬の寒い日や雨の日は、用意した話を短くする判断も大切です。遺影や位牌を持った状態で話すこともあり、原稿を持つ手が空かない場合があります。事前に葬儀社の担当者に確認し、難しければ別の親族に原稿を持ってもらう、紙を小さくしておくなどの工夫をしましょう。
精進落としでは「始め」と「お開き」に短く話します
精進落としの挨拶は、改まりすぎず、労いの気持ちを込めて短く話すのが基本です。もとは四十九日の忌明けに合わせて行うものでしたが、現在は葬儀当日に繰り上げ初七日法要を行い、そのあとに席を設けることが多くなっています。僧侶や手伝ってくれた方々へのお礼の席という性格があるため、最初と最後に一言ずつ挨拶をします。
始めは喪主が感謝を述べ、親族の年長者や親族代表が献杯の発声をする流れが一般的です。献杯では杯を高く上げず、声も控えめにして、乾杯のように杯を合わせないのが作法とされています。お開きの挨拶では、参列者の疲れを気遣い、今後のお付き合いをお願いします。親しい身内だけの席なら形式を崩してもかまいませんが、献杯の発声を誰がするかだけは、席に着く前に決めておくとあわてずに済みます。
| 立場 | 話す主な場面 | 長さの目安 |
|---|---|---|
| 喪主 | 通夜の閉式、通夜振る舞い、出棺、精進落とし | 1〜3分 |
| 親族代表 | 出棺、精進落としの献杯やお開き | 1〜3分(献杯は短く) |
| 受付や案内を担当する親族 | 参列者が到着したとき、記帳や香典を受け取るとき | 一言 |
| 役割のない親族 | 喪主や遺族に会ったとき、親戚と再会したとき | 一言 |
高齢者あんしんノート調べ。葬儀関連の解説をもとに整理した一般的な目安で、地域や葬儀の規模によって異なります。
受付や控室の短いやり取りも、立派な挨拶です
受付を手伝う親族にとっては、到着した方への一言が挨拶そのものです。受付は参列者が最初に接する場所で、遺族の印象を左右するため、丁寧に迎える言葉が欠かせません。とはいえ、難しい言い回しは要りません。「お忙しいところありがとうございます」「こちらにご記帳をお願いいたします」の2つで、ほとんどの場面に対応できます。
香典を受け取ったら、「お預かりいたします」と両手で受け取りましょう。控室では、「お疲れでしょう」「何か手伝えることはありますか」と遺族に声をかけるだけで十分です。やりがちなのは、受付の親族同士で話し込んでしまうことです。受付は参列者からよく見える場所ですから、私語は控えめにして、連絡事項は短く済ませると安心です。
話す順番さえ決めれば、挨拶の原稿は迷わず書けます

組み立ては「名乗り・お礼・思い出・お願い」の4つだけです
親族の挨拶は、この4つを順に話すだけで形になります。まず「故人の弟の○○でございます」と続柄を名乗り、次に参列のお礼を述べ、故人の思い出を少し語り、最後に遺族への変わらぬお付き合いをお願いします。順番が決まっている理由は、聞く人が「誰が、何のために話しているのか」をすぐ理解できるからです。特に故人の仕事関係の方など、親族の顔を知らない参列者にとって、名乗りは欠かせません。
書くときは、まず4つの見出しを紙に並べ、それぞれ1〜2文を埋めていきましょう。これなら慣れていない方でも、短い時間で下書きができます。ただし、宗教や宗派によって使わない言葉があること、挨拶の前に喪主が話している場合はお礼を重ねすぎないことには気をつけてください。喪主の話と重なってもかまいませんが、「喪主も申しましたとおり」と一言入れると自然につながります。
長さは1〜3分、文字にすると300〜900字ほどが目安です
長さは1〜3分ほどにまとめるのが一般的です。葬儀は流れが決まっていて、後ろに火葬場の予約などが控えていることも多く、挨拶が長引くと全体の予定に響いてしまうからです。人前でゆっくり話すと1分あたり300字前後になりますので、文字数でいうと300〜900字ほどが目安になります。
親族代表の出棺の挨拶なら2分前後、献杯の発声なら30秒ほどで十分です。書いた原稿は一度声に出して読み、時間を計っておきましょう。当日は涙で声が詰まることもあるため、余裕を見て短めに作っておくくらいがちょうどいいのです。逆に、短すぎるのではと不安になって付け足す必要はありません。参列者は立ったまま聞いていることが多く、長い話より短くまとまった話のほうが、ありがたく受け取ってもらえます。
実は、うまく話せなくても挨拶は失敗にならない
意外と知られていないけれど、親族の挨拶で参列者が見ているのは、話の上手さではありません。身内を亡くしたばかりの人が、それでも前に立ってお礼を述べている、その姿自体が挨拶として受け取られるからです。声が震えても、言葉に詰まっても、それを失敗だと感じる参列者はほとんどいないはずです。
そのため、原稿は見ながら読んでかまいません。「不慣れなもので、紙を見ながら失礼いたします」と一言添えれば十分です。暗記に挑んで途中で言葉が出なくなるより、紙を読み上げるほうがはるかに落ち着いて話せます。B5サイズほどの紙に大きな文字で書き、ふりがなを振っておくと、老眼鏡を忘れても慌てません。ただし、読むときも紙に顔を埋めず、最初と最後のお礼だけは顔を上げて参列者のほうを向きましょう。
思い出話でよくある失敗は「語りすぎ」です
故人の思い出は、1つだけに絞りましょう。話す側は思いが募っているので、あれもこれもと話したくなりますが、聞く側は故人の全体像まで受け止められないからです。「面倒見のいい兄でした。私が上京したときも、毎月のように手紙をくれました」くらいの長さで、人柄は十分に伝わります。
よくある失敗は、原稿なしで話し始め、子どものころの話が止まらなくなって5分を超えてしまう場面です。原因は、話の終わりを決めていないことにあります。対策は、最後の一文を先に決めておくことです。「今後とも変わらぬお付き合いをお願い申し上げます」にたどり着けば終われるとわかっていれば、途中で話が逸れても戻れます。また、闘病の詳しい経緯や、親族間の揉めごと、故人の失敗談は、たとえ笑い話のつもりでも避けておくと安心です。
- Step1: 喪主か葬儀社に、話す場面と持ち時間を確認する
- Step2: 名乗り、お礼、思い出、お願いの4つを1〜2文ずつ書く
- Step3: 声に出して読み、時間を計って忌み言葉がないか見直す
- Step4: 大きな文字で清書し、喪服のポケットに入るサイズに折る
そのまま使える親族の葬式の挨拶例文、場面別に4つ
例文1:親族代表が出棺のときに話す挨拶
もっとも使う機会が多いのがこの形です。喪主に代わって話す場合は、最初にその旨を伝えると立場が明確になります。
「故人の弟の○○でございます。喪主に代わりまして、親族を代表してご挨拶申し上げます。本日はご多用のところ、最後までお見送りいただき、ありがとうございます。兄は面倒見のいい人で、私が上京したときも毎月のように手紙をくれました。皆さまにも、生前は大変お世話になったことと存じます。家族は不慣れなことも多いかと思いますが、今後とも変わらぬお付き合いをお願い申し上げます。本日はありがとうございました」
これで1分半ほどの長さです。故人の思い出の部分は、自分の言葉に差し替えてください。喪主の子が話すなら「父」、配偶者が話すなら「夫」のように、続柄を自分の立場に合わせて変えましょう。
例文2:少人数の家族葬で話す短い挨拶
身内中心の葬儀なら、形式ばった言い回しは減らしてかまいません。顔なじみばかりの場で硬い言葉を使うと、かえって距離を感じさせることがあるからです。
「皆さん、今日は集まってくれてありがとうございます。母は賑やかなことが好きな人でしたので、こうして顔がそろったことを喜んでいると思います。これからも家族のことを気にかけていただけるとうれしいです。今日は本当にありがとうございました」
30秒ほどの短い挨拶ですが、身内の集まりならこれで十分です。ただし、家族葬であっても故人の友人や仕事関係の方が同席している場合は、例文1のような丁寧な言い回しに寄せると安心です。「お母さん」のような普段の呼び方になってしまっても、親しい方々の前であれば問題にはなりません。迷ったときは、参列者の中でいちばん遠い関係の方を基準に言葉を選びましょう。
例文3:精進落としで献杯の発声をするとき
献杯の挨拶は短いほど好まれます。杯を持ったまま待っている方がいらっしゃるため、長い話をすると手が疲れてしまうからです。
「故人の甥の○○でございます。ご指名をいただきましたので、献杯の発声をさせていただきます。叔父は穏やかな人で、私たちにもいつも優しく接してくれました。叔父を偲び、皆さまのご健康をお祈りして、献杯」
皆さんが「献杯」と続いたら、杯を胸の高さほどに軽く持ち上げて口をつけます。乾杯と違い、杯を打ち合わせたり拍手をしたりしないのが一般的です。声も張らず、落ち着いたトーンで発声しましょう。地域やご家庭によっては献杯をせず、喪主の挨拶のあとにそのまま食事を始めることもあります。また、仏式以外の葬儀では作法が異なることもありますので、頼まれたら担当者に流れを確認しておきましょう。
例文4:精進落としをお開きにするときの挨拶
締めの挨拶は、参列者の疲れを気遣う言葉を入れると、席を立つきっかけを作りやすくなります。この日は朝から続く長い一日になりますので、感謝とともに、無事に帰っていただくための一言を添えるわけです。
「皆さま、本日は長い時間ありがとうございました。おかげさまで滞りなく葬儀を終えることができました。お疲れのことと存じますので、このあたりでお開きとさせていただきます。今後とも変わらぬお付き合いをお願いいたします。どうぞお気をつけてお帰りください」
話し出す前に、会計や引き出物の配布が終わっているか確認しておくとスムーズです。四十九日法要の日程が決まっていれば、ここで「改めてご案内いたします」と添えてもよいでしょう。ただし日程が未定の段階で「また四十九日に」と言い切ると、案内しない親戚が出たときに気まずくなります。声をかける範囲がはっきりしないうちは、「改めてご連絡いたします」くらいに留めておくと安心です。
- ☐ 故人との続柄を最初に名乗っているか
- ☐ 故人の呼び方は参列者に伝わる形か
- ☐ 思い出話は1つに絞れているか
- ☐ 声に出して読み、3分以内に収まっているか
- ☐ 原稿をポケットやバッグにすぐ出せる形で用意したか
遺族や参列者、久しぶりの親戚にかける一言はこれで十分
例文5:遺族にかける言葉は「短く、ねぎらう」が基本です
親族として遺族に声をかけるときは、一言のお悔やみと、体を気遣う言葉があれば十分です。遺族は多くの人に対応しているうえ、悲しみの中にあるため、長いやり取りはそれだけで負担になってしまうからです。「ご愁傷様です」という決まり文句も、近い親族の間ではよそよそしく響くことがあります。
「大変だったね。少し休めている?何か手伝えることがあったら言ってね」
このような普段の言葉で声をかけてかまいません。年長の方や、あまり親しくない親族には「このたびは残念なことでした。お疲れが出ませんように」と少し改まった形にします。避けたいのは、亡くなった原因や最期の様子を尋ねることです。遺族が自分から話し始めたら、聞き役に回りましょう。また「しっかりしてね」「早く元気を出して」という励ましは、気を張っている相手を追い詰めることがあります。励ますより、そばで聞くほうがずっと力になる場面が多いのです。
例文6:親族として参列者に声をかけられたときの返し方
参列者から「このたびはご愁傷様でございます」と言われたら、感謝で返せば問題ありません。お悔やみの言葉に対して、気の利いた返事を考える必要はないからです。迎える側の親族は、会場に来ていただいたことへのお礼を伝えるのが役目になります。
「恐れ入ります。本日はお越しいただき、ありがとうございます。生前は故人が大変お世話になりました」
喪主ではないので、故人の呼び方は自分との続柄に合わせて「兄」「叔父」と言ってかまいません。相手が誰か分からないときは、「失礼ですが、故人とはどのようなご関係でいらっしゃいましたか」と尋ねても失礼にはなりません。そのうえで、喪主につないだほうがいい方だと感じたら、「喪主を呼んでまいります」と案内しましょう。ただし、喪主が僧侶との打ち合わせ中など手が離せないこともありますので、無理に呼ばず、後で伝言するのも立派な気遣いです。
例文7:久しぶりに会う親戚には、近況より先にお礼を
何年も会っていなかった親戚にも、再会の挨拶は短くしましょう。葬儀は久々に親戚が顔をそろえる機会なので、つい話が弾みますが、参列者や遺族の目もあり、大きな声で笑い合うのは控えたい場だからです。
「ご無沙汰しております。遠いところをありがとうございます。○○(故人)も喜んでいると思います」
こう伝えておけば、続きの話は精進落としや控室で十分です。話題は故人の思い出や、相手の健康を気遣うことに留めるのが無難です。「まだ結婚しないの」「お孫さんはいくつになったの」といった質問は、普段なら何気ない話題でも、葬儀の場では相手を困らせることがあります。また、遺産や家の今後の話を切り出す方がいらっしゃいますが、その場では「今日は故人を見送る日ですので、また落ち着いたら」とやわらかく止めておきましょう。
読者の立場別に考えると、遠方から駆けつけた親族なら「遅くなりました、ありがとうございます」、同居の親族なら「お手伝いできることはありますか」、配偶者側の親族なら「このたびはお世話になります」が使いやすい一言です。迷ったら「ありがとうございます」に戻れば失礼にはなりません。
つい口にしてしまう忌み言葉と、言い換えの方法
重ね言葉は、会話の中に紛れやすいので要注意です
葬儀の場では、不幸が重なることを連想させる言葉を避けるのが習わしです。「重ね重ね」「たびたび」「くれぐれも」「ますます」「いよいよ」などが代表的で、いずれも日常の丁寧な言葉として身についているだけに、つい口から出やすいものです。言葉に縁起の力を感じてきた日本の文化から生まれた作法で、法律上の決まりではありません。
言い換えは難しくありません。「重ね重ねお礼申し上げます」は「心よりお礼申し上げます」、「たびたびお世話になり」は「いつもお世話になり」、「くれぐれもお気をつけて」は「どうぞお気をつけて」で意味が通じます。また「続く」「再び」「追って」も避けることがあり、「追ってご案内」は「改めてご案内」と言い換えられます。とはいえ、気にする度合いには地域や世代で差があります。うっかり口にしても、言い直さずそのまま話し続ければ大丈夫です。
「死ぬ」「急死」など直接的な表現は、やわらげて伝えましょう
生死に関わる直接の表現は、別の言い方に置き換えるのが一般的です。遺族の前で生々しい言葉を繰り返さないための配慮として、昔から言い換えが使われてきました。「死亡」は「ご逝去」、身内のことなら「他界」や「永眠」、「急死」は「急なことで」、「生きているころ」は「生前」「お元気なころ」と言い換えます。
注意したいのは敬語の向きです。「ご逝去」は他人の死に使う敬語なので、親族代表が身内について話すときは「父が他界いたしました」のように、敬語を外します。また、「ご冥福をお祈りします」「成仏」は仏教の言葉で、キリスト教や神道の葬儀にはそぐわないことがあります。キリスト教なら「安らかな眠りをお祈りいたします」、神道なら「御霊のご平安をお祈りいたします」が使われます。宗教が分からないときは、「心よりお悔やみ申し上げます」にしておけば広く使えます。
「四」「九」の語呂合わせより、気をつけたい一言があります
語呂合わせのほうも、控えられる場面があります。「四」は死に、「九」は苦に通じると考えられてきたため、古くから葬儀の場で気にする方がいらっしゃいます。特に年長の親族がいる席では、こうした言葉に敏感な方がいても不思議ではありません。
とはいえ、「四十九日」のように仏事の言葉として使うものは問題なく、挨拶の中の数字を神経質に避ける必要もないでしょう。原稿を書くときに気づいた範囲で調整すれば十分です。むしろ気をつけたいのは、「大往生でしたね」「もう年だったから」といった言葉です。悪気がなくても、遺族の受け止め方はさまざまです。「大往生」は本人や遺族が自分から使うのは自然ですが、周囲から言うのは控えたほうが無難でしょう。
励ましのつもりで言いがちな失敗と、その防ぎ方
親族の間でよくある失敗は、親しさゆえの一言が遺族を傷つけてしまう場面です。たとえば、夫を亡くした姉に「これで介護から解放されて楽になったね」と声をかけ、後から関係がぎくしゃくしてしまう、というようなことです。原因は、相手の気持ちを先回りして決めてしまうことにあります。介護の疲れと喪失の悲しみは、一人の中に両方あるからです。
対策は簡単で、「本当によくやったね」と事実をねぎらう言葉に留めることです。「長い間お疲れさまでした」のように、これまでの労を認める言い方であれば、相手の気持ちに踏み込まずに済みます。また、「もっと早く病院に行っていれば」のような「もしも」の話も、遺族を責める形になりがちです。親族だから何でも言える、と思わないことが大切です。もし言ってしまったと気づいたら、後日「あのときは言葉が足りなくてごめんね」と伝えるだけで、たいていは解消できます。
避けたい言葉の例:重ね重ね、たびたび、くれぐれも、ますます、いよいよ、再び、続く、死亡、急死、生きているころ
言い換えの例:心より、いつも、どうぞ、さらに、改めて、他界、急なことで、生前
気にしすぎて言葉が出なくなるより、心を込めて伝えることのほうが大切です。
家族葬や費用の話では、何をどこまで伝えればいいのか
家族葬でも一言あると、気持ちの区切りがつきます
家族葬でも、喪主が短く一言述べるのが基本と考えておきましょう。少人数なら改まった挨拶を省いても失礼にはあたりませんが、集まった人に感謝を伝える機会が一度もないと、参列者も遺族も区切りをつけにくいからです。ごく身内だけなら、例文2のような30秒ほどの言葉で十分です。
親族が多めに集まっているときや、故人の親しい友人が同席しているときは、改まった挨拶を用意しておくと丁寧です。親族代表を別に立てるかどうかも、人数に合わせて決めてかまいません。身内だけなら喪主の挨拶で済ませ、親族代表は省くことも珍しくありません。また、葬儀に呼ばなかった親戚や知人には、後日「故人の遺志により家族葬で執り行いました」と知らせる必要があります。誰に知らせるかは、参列者の範囲を決めるときに一緒に確認しておくと安心です。
香典返しや法事の費用は、挨拶の場で細かく語らなくて大丈夫です
挨拶の中で香典やお金の話に触れる必要はありません。香典を辞退する場合に「ご厚志はご辞退申し上げます」と事前に案内する程度で、それ以外は受付や案内状で伝える話だからです。「香典返しは後日お送りします」のような連絡も、挨拶より案内状や個別の連絡に任せるほうがすっきりします。
なお、葬儀後の手続きで親族から「これも葬式費用になるの?」と聞かれることがあります。国税庁のタックスアンサーNo.4129(2026年度時点)では、火葬や埋葬、納骨の費用、読経料などのお礼は葬式費用として挙げられています。一方で、香典返しのためにかかった費用、墓石や墓地の買入れの費用、初七日など法事のための費用は含まれないとされています。個別の事情で扱いが変わることもありますので、判断に迷うときは税理士や税務署に確認してください。領収書をひとまとめにしておくだけでも、後の手続きが楽になります。
費用のトラブルは、親族の関係にも影を落とします
葬儀費用の見積もりは、親族で分担するなら特に、事前に内容を確認しておきましょう。国民生活センターによると、葬儀サービスに関する相談は年間で900件前後あり、2025年度は917件でした。そのうち料金が想定を上回って納得できないという「高価格・料金」の相談の割合は、2019年度の33.2%から2025年度は52.6%に増えています。
よくある失敗は、喪主が一人で葬儀社と話を進め、請求額を見てから親族の間で「そんな内容は聞いていない」と揉めてしまう場面です。原因は、見積もりの内容を共有していないことにあります。神奈川県の注意情報では、契約に含まれる項目と別料金になる項目、参列者数で金額が変動する項目を見積書でよく確認し、疑問があれば葬儀社に問い合わせるよう呼びかけています。分担の話し合いが必要なときは、見積書を見ながら、葬儀の前に短時間でも話しておくと後のしこりが残りません。
葬儀サービスの相談件数は、2019年度632件、2020年度686件、2021年度800件、2022年度951件、2023年度886件、2024年度978件、2025年度917件と推移しています(消費生活センター等からの経由相談を含まず、2026年3月31日までに登録された分)。
出典:国民生活センター、確認項目は神奈川県 かながわ消費生活注意・警戒情報 第169号
職場への忌引の連絡と、復帰後の一言も挨拶のうちです
葬儀のあとに意外と迷うのが、職場への連絡と挨拶です。休む連絡はまず電話など早く伝わる方法で行い、葬儀の日程と休む期間、緊急時の連絡先を伝えます。忌引の日数は勤め先の就業規則によって異なりますので、確認しておきましょう。参考までに、人事院の国家公務員の休暇制度の資料(2026年度時点)では、親族に応じて連続する日数の範囲内の期間とされ、父母の場合は7日という例が示されています。
民間企業でこれと同じ日数が保証されるわけではなく、会社の規定で決まる点に注意してください。職場に復帰したら、上司や同僚に「ご迷惑をおかけしました。おかげさまで無事に見送ることができました」と一言伝えれば十分です。香典や供花をいただいた場合は、それへのお礼も添えましょう。故人の詳しい話を自分からする必要はなく、聞かれたら話せる範囲で答えればかまいません。定年後で職場がなければ、地域の自治会や趣味の仲間に、同じように短く伝えるとよいでしょう。
まとめ
原稿を完璧に仕上げる必要はありません。今できる最初の一歩は、喪主か葬儀社に話す場面と持ち時間を聞き、紙に名乗りとお礼の2行だけ書いてみることです。その2行があれば、当日の気持ちはずいぶん楽になるはずです。例文は、ご自身の言葉に置き換えながら使ってみてください。遠方の親戚の予定や地域のしきたりが気になる場合も、年長の親族に一言相談すれば、たいていのことは解決します。上手に話そうとせず、故人を一緒に見送ってくれる方々へのお礼を、落ち着いて伝えてください。
※作法は地域や宗教、家ごとに異なります。制度や数値は記事内に記載した時点の情報ですので、最新情報は公式サイトでご確認ください。

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