「高齢者講習の実技って、具体的に何をやるんだろう?」——免許更新のお知らせハガキが届いて、そんな不安を感じている方は少なくありません。ふだん問題なく運転していても、教習所のコースを走ると聞くだけで緊張するものです。
結論からお伝えすると、高齢者講習の実技(実車指導)は「試験」ではなく「指導」です。段差乗り上げやS字走行など決まった課題を走り、指導員からアドバイスをもらう時間になっています。合否判定はありませんので、落ち着いて臨めば大丈夫です。
この記事では、実車指導で行う課題の一つひとつを具体的に解説し、当日の流れや年齢別の違い、事前に準備しておきたいことまでまとめました。読み終わるころには「これなら安心して受けられそうだ」と思っていただけるはずです。
・高齢者講習の実車指導で行う具体的な課題と走り方のポイント
・70〜74歳と75歳以上で異なる講習・検査の違い
・段差乗り上げやS字走行で焦らないためのコツ
・当日の持ち物・服装・心構えまで網羅
高齢者講習の実技内容は何をする?2時間の講習プログラムを確認

講習は「座学・適性検査・実車指導」の3パートで構成されている
高齢者講習は合計2時間で(参考:警視庁「認知機能検査と高齢者講習」)、大きく3つのパートに分かれています。最初の30分が座学(講義)、次の30分が運転適性検査器材による検査、そして最後の60分が実車指導です。つまり、講習時間の半分は実際に車を運転する時間にあてられています。
この構成になっている理由は、座学や適性検査の結果を踏まえたうえで実車指導を行うほうが、自分の運転の特徴を理解しやすいからです。たとえば適性検査で「動体視力がやや低下している」と分かった方は、実車指導で交差点の確認動作を意識的にチェックしてもらえます。
具体的な時間配分は、座学30分で高齢ドライバーの事故傾向や安全運転のポイントを学び、適性検査30分で視力・動体視力・夜間視力・視野を測定し、実車指導60分でコースを走行します。教習所によって多少の前後はありますが、この流れはどの教習所でもほぼ共通です。
注意点として、講習は予約制のため、ハガキが届いてから早めに教習所に連絡することが大切です。都市部では2〜3か月待ちになることも珍しくなく、更新期限ギリギリに予約しようとすると間に合わない場合があります。
実車指導の60分間は「課題走行+個別指導」で進む
実車指導の60分は、前半で教習所のコースを走りながら課題をこなし、後半でドライブレコーダーの映像を見ながら個別指導を受ける、という流れが一般的です。指導員が助手席に座り、一人ずつ順番に走行します。
この形式が採用されている背景には、2022年5月の道路交通法改正で「高度化講習」が導入されたことがあります。それ以前は講義中心でしたが、改正後は実車指導にドライブレコーダーを活用し、映像を見ながら具体的な運転クセを確認できるようになりました。
走行するコースは教習所ごとに異なりますが、課題として指示速度走行、一時停止、右折・左折、信号通過、段差乗り上げ、S字、クランク、方向転換などが含まれます。1周あたり10〜15分程度で、3〜4人のグループで交代しながら走ります。
ここで大事なのは、実車指導はあくまで「指導」であって「試験」ではないという点です。課題がうまくできなくても不合格になることはありません。むしろ、自分の運転のクセに気づくための時間だと考えてください。
座学と適性検査では何をチェックされる?
座学では、高齢ドライバーが関わる交通事故の統計データや、加齢による身体機能の変化について学びます。指導員が一方的に話すだけでなく、受講者に質問を投げかけながら進行するスタイルが多く、「最近ヒヤリとした場面はありましたか?」といった問いかけもあります。
座学でこうした内容を扱う理由は、自分の運転を客観的に振り返るきっかけを作るためです。ふだん意識しない運転のクセや判断の遅れは、データや事故事例を通じて初めて「自分にも当てはまるかもしれない」と感じられることがあります。
適性検査では、静止視力だけでなく動体視力(動いているものを見る力)、夜間視力(暗い場所での見え方)、視野(見える範囲の広さ)を専用の機器で測定します。たとえば動体視力検査では、近づいてくるマークがいくつあるかを答える形式で、数値として結果が出ます。
適性検査の結果が悪くても、それだけで免許が取り消されることはありません。ただし、視力が基準を大幅に下回っている場合は、眼科の受診を勧められることがあります。検査結果は実車指導でのアドバイスに反映されるため、正直に取り組むことが大切です。
講習の費用は6,450円——年齢で金額が変わるケースも
高齢者講習の手数料は、70〜74歳の方は6,450円です。75歳以上の方も講習自体は6,450円ですが、別途「認知機能検査」の受検が必須で、その手数料が1,050円かかります。合計すると75歳以上の方は7,500円の出費になります。
この費用設定は全国一律で、どの教習所で受けても同じ金額です。都道府県の収入証紙で納付する場合と、現金で支払う場合があるため、予約時に教習所に確認しておくとスムーズです。
さらに75歳以上で過去3年間に信号無視や速度超過などの一定の違反歴がある方は、「運転技能検査」も受ける必要があり、こちらの手数料は3,550円です。運転技能検査は講習とは別の日に行われることが多く、合格しないと免許の更新ができません。
| 対象年齢 | 必要な講習・検査 | 費用合計 |
|---|---|---|
| 70〜74歳 | 高齢者講習(2時間) | 6,450円 |
| 75歳以上(違反歴なし) | 認知機能検査+高齢者講習 | 7,500円 |
| 75歳以上(違反歴あり) | 認知機能検査+運転技能検査+高齢者講習 | 11,050円 |
免許返納を選ぶ場合は手続き自体は無料ですが、身分証代わりになる「運転経歴証明書」の交付には1,100円がかかります。返納を検討している方は、この証明書も一緒に申請しておくのがおすすめです。
実車指導で行う課題を1つずつ解説——コースで何が求められる?
指示速度走行:指定された速度までスムーズに加速・減速する
指示速度走行とは、指導員から「時速30kmまで加速してください」「時速40kmで走行してください」と指示された速度まで加速し、指定区間を走った後に減速・停止する課題です。これは日常の運転で必要な「速度感覚」が正確かどうかを確認するための課題です。
この課題が設けられている理由は、加齢によって速度感覚が変化することがあるためです。自分では30km/hのつもりが実際には20km/hだったり、逆に40km/hを超えていたりするケースは珍しくありません。速度メーターを確認する習慣と、アクセル操作の正確さがポイントになります。
具体的には、直線区間で指示された速度まで加速し、その速度を数秒間維持した後、指導員の合図で減速・停止します。急加速や急ブレーキではなく、なめらかな操作が求められます。速度は車内のメーターで確認しながら調整すればよいので、感覚だけに頼る必要はありません。
注意点として、緊張のあまりアクセルを踏みすぎてしまう方がいます。教習所のコースは見通しがよいぶん、つい速度が出やすい環境です。「ゆっくり加速して、メーターで確認する」を意識するだけで、落ち着いて走れます。
一時停止と信号通過:見落としがちな「停止位置」に注意
一時停止の課題は、コース内の一時停止線の手前できちんと停止し、左右の安全確認をしてから発進するという、日常的な動作の確認です。信号通過では、信号の変わり目での判断力が見られます。
一時停止で確認されるのは、「停止線の手前で完全に停止しているかどうか」です。ふだんの運転では、停止線を少し越えてしまったり、完全に止まりきらずに徐行で通過したりする方が意外と多いものです。道路交通法では停止線の直前で完全に停止することが義務づけられているため、講習でもこの点が重点的に指導されます。
信号通過の課題では、青信号で交差点に進入するタイミングや、黄信号に変わった際の判断が確認されます。教習所のコースでは信号のタイミングが実際の道路と異なる場合があるため、「黄色に変わったら無理せず止まる」を基本にすると安心です。
一時停止線をうっかり越えてしまうケースは、高齢者講習でもっとも多い指摘事項のひとつです。原因は「止まったつもりで実はクリープ現象で動いている」こと。AT車はブレーキを離すとゆっくり前に進むため、しっかりブレーキを踏んだまま左右を確認し、意識的に「1・2」と数えてから発進する習慣をつけると安心です。
右折・左折:内輪差とウインカーのタイミングがカギ
右折・左折の課題では、交差点での曲がり方と安全確認の手順が見られます。結論から言えば、「ウインカーを30m手前で出し、巻き込み確認をしてから曲がる」という基本動作が正確にできているかがポイントです。
右折・左折が課題に入っている理由は、高齢ドライバーの事故で最も多いパターンのひとつが交差点での出会い頭事故や右折時の対向車との衝突だからです。警察庁の統計でも、75歳以上のドライバーの死亡事故は交差点内が約4割を占めています。
具体的には、左折時はあらかじめ道路の左端に寄り、内輪差を意識しながらゆっくり曲がります。右折時は交差点の中心付近まで進んでから曲がるのが基本です。コース内では対向車がいない場面も多いですが、本番(公道)を想定して確認動作を丁寧に行うことが大切です。
注意点として、ウインカーを出すタイミングが遅い方や、曲がりながらウインカーを出す方がいます。法律上は30m手前で合図を出す決まりですが、ふだんの運転でこれが曖昧になっている方は講習で指摘を受けやすいポイントです。
方向転換(バック):後方確認とハンドル操作を丁寧に
方向転換の課題は、いわゆる「車庫入れ」に近い操作です。指定されたスペースにバックで入り、元の方向に向きを変えて出発するという課題で、後方確認の徹底とハンドル操作の正確さが確認されます。
この課題が設けられている背景には、駐車場での接触事故が高齢ドライバーに多いという実態があります。バック時にアクセルとブレーキを踏み間違える事故もこのパターンに含まれ、ゆっくりとした操作と目視確認の習慣が重要になります。
具体的には、バックに入る前にまず周囲の安全確認をし、ミラーだけでなく直接目視で後方を確認しながらゆっくり後退します。ハンドルを切るタイミングは車種や車体の大きさで異なりますが、「早めに切って微調整する」のが失敗しにくいコツです。
注意すべきは、緊張してハンドルを切る方向を間違えるケースです。バック時は通常の感覚と逆に感じる方も多いため、不安がある方は講習前に自宅近くの広い駐車場で練習しておくと安心です。
段差乗り上げで焦らないための3つのコツ

段差乗り上げとは?——アクセルとブレーキの「踏み替え」を見る課題
段差乗り上げは、高齢者講習の実車課題のなかでも特に緊張しやすい課題です。AT車のクリープ現象(ブレーキを離すとゆっくり進む力)だけでは越えられない高さの段差にアクセルを踏んで乗り上げ、すぐにブレーキに踏み替えて停止するという内容です。
この課題が設けられている理由は、近年問題になっている「ペダル踏み間違い事故」を防ぐためです。コンビニの駐車場で車止めを乗り越えて店舗に突っ込むといった事故は、アクセルとブレーキの踏み替えが正確にできていないことが原因の一つです。段差乗り上げ課題では、まさにこの「踏み替え動作」が正しくできるかを確認します。
具体的な手順は、①段差の手前でいったん停止、②アクセルを軽く踏んで段差に乗り上げ、③乗り上げたらすぐにアクセルからブレーキに踏み替えて停止、という3ステップです。停止時にタイヤの中心から段差の先端までおおむね1m以内で止まることが求められます。
注意点として、アクセルを踏みすぎて勢いよく乗り上げてしまい、そのまま前に進んでしまうケースがあります。段差を越えるのに強い加速は不要で、クリープよりやや強い程度の軽いアクセル操作で十分です。
コツ①:アクセルは「じわっと踏む」——強く踏む必要はない
段差乗り上げで最も大切なのは、アクセルを強く踏みすぎないことです。段差の高さは5〜10cm程度で、コンビニの車止めや歩道の段差をイメージするとわかりやすいでしょう。この程度の段差であれば、アクセルを「じわっ」と踏むだけで十分に越えられます。
強く踏みすぎる方が多い理由は、「段差を越えられないのでは」という不安から、つい力が入ってしまうためです。実際には、AT車のクリープ現象にほんの少しアクセルを足すだけで段差は越えられます。
具体的なイメージとしては、アクセルペダルに足を乗せてから、卵を踏んでも割れない程度の力でそっと押す感覚です。エンジン回転数でいえば1,200〜1,500回転程度まで上がれば十分です。急にドンと加速する必要はまったくありません。
教習所によってはAT車だけでなくMT車で講習を受ける方もいますが、MT車の場合は半クラッチの状態で段差に寄せ、少しアクセルを足すのが基本です。ふだんMT車に乗っている方であれば、いつもの発進操作の延長と考えれば問題ありません。
コツ②:ブレーキへの踏み替えは「段差を越えたら即」を意識
段差を越えた直後にアクセルからブレーキに踏み替えて停止する——これが段差乗り上げ課題の核心部分です。踏み替えのタイミングが遅れると、車が前に進みすぎて1m以内に止まれなくなります。
踏み替えが遅れがちになる理由は、段差を越えた安堵感で一瞬気が抜けるからです。「越えられた」と思った瞬間に足がアクセルの上で止まってしまい、その間に車が前に進んでしまいます。
具体的な対策としては、「段差を越えたらすぐブレーキ」と声に出して(心の中でもOK)リズムを作ることです。「アクセル→乗り上げ→ブレーキ」をワンセットの動作として体に覚えさせるイメージです。
ふだんの運転でも、コンビニやスーパーの駐車場に入るときに段差を越える場面は多いものです。そのたびに「段差→ブレーキ」と意識するだけで、自然とペダル踏み替えの練習になります。講習前の1〜2週間、買い物の駐車場で意識してみてください。
コツ③:座席の位置を合わせてからスタートする
意外と見落としがちなのが、乗車後の座席位置の調整です。教習所の車はふだん乗り慣れた自分の車とはシートの位置やペダルの感覚が異なります。座席が遠すぎるとブレーキを踏み切れず、近すぎるとアクセルを踏みすぎる原因になります。
座席調整が重要な理由は、ペダル操作の精度に直結するからです。自分の車では無意識にできている踏み替えも、座席の位置が合っていないと足の角度が変わり、操作が不正確になります。
具体的な調整方法は、ブレーキペダルを奥まで踏んだときにひざが軽く曲がる位置にシートを合わせることです。足がピンと伸びきる状態はペダル操作に力が入りにくく、逆にひざが深く曲がりすぎるとペダルを踏みすぎてしまいます。
教習所の指導員に「座席を調整してもいいですか」と声をかければ、快く対応してくれます。遠慮せずに自分の体格に合った位置に調整してから走り始めましょう。
S字・クランクが不安な方へ——内輪差の感覚をつかむコツ
S字走行:ハンドルを「切りすぎない」のがポイント
S字走行は、S字型に曲がった狭い道をはみ出さずに通過する課題です。結論から言えば、S字でもっとも大切なのは「ハンドルを切りすぎないこと」です。切りすぎると内側の縁石に後輪が乗り上げ、戻そうとして反対側にはみ出す、という悪循環に陥ります。
S字が課題に含まれている理由は、狭い道でのハンドル操作と速度調整が加齢とともに難しくなる傾向があるためです。生活道路やショッピングモールの駐車場など、実際の運転でもS字に近いカーブを通る場面は多く、実用性の高い課題と言えます。
具体的な走り方としては、カーブの外側に沿うように車を寄せ、ゆっくりとした速度(クリープ程度)で進みます。目線は車のすぐ前ではなく、2〜3m先のカーブの出口あたりを見ると、自然に滑らかなハンドル操作になります。
注意点として、S字で脱輪(縁石に乗り上げる)してしまっても、講習では不合格にはなりません。指導員が「ここでハンドルを切りすぎましたね」と教えてくれるので、2回目は修正できることがほとんどです。
クランク走行:直角に曲がるコツは「手前で止まる勇気」
クランクはL字型(直角)に曲がる狭い道を通過する課題で、S字よりも角度が急なぶん、内輪差の影響が大きくなります。クランクを上手に通過するコツは、曲がり角の手前でいったん止まるくらいの気持ちで、十分に速度を落とすことです。
クランクが難しいと感じる方が多い理由は、直角に曲がるときに前輪と後輪が異なる軌跡を描く「内輪差」を体感しにくいからです。前輪は曲がり角を通過できても、後輪は内側を通るため、角の縁石に接触しやすくなります。
具体的な通過方法は、曲がり角の手前で十分に減速し、外側いっぱいに車を寄せてからハンドルを切り始めます。ハンドルを切るタイミングの目安は、自分の肩の位置が曲がり角に来たあたりです。切り始めが早すぎると内側に寄りすぎ、遅すぎると外側にはみ出します。
実は、S字やクランクは高齢者講習の受講者だけでなく、一般のペーパードライバー講習でも苦手とする方が多い課題です。つまり加齢のせいとは限らず、もともと苦手意識のある方が多い課題なので、うまくいかなくても落ち込む必要はありません。
実は内輪差は日常運転でも重要——駐車場や生活道路での活かし方
S字やクランクで体験する「内輪差」の感覚は、講習のためだけの知識ではありません。日常の運転でも、狭い道での左折や駐車場での切り返しなど、内輪差を意識するべき場面はたくさんあります。
内輪差が日常運転でも問題になる理由は、車体の大きさを正確に把握していないと、電柱やガードレール、隣の車に接触するリスクがあるためです。特に最近の車はボンネットが短くなり前方の感覚がつかみやすい反面、後方の見切りが難しくなっています。
具体的な活かし方として、左折時には曲がり角から50cm以上離れた位置から曲がり始める、駐車場で隣の車との間隔が狭いときはドアミラーで後輪の位置を確認する、といった習慣が効果的です。
講習で「内輪差を意識して走る」経験をしておくと、ふだんの運転でもサイドミラーで後輪の位置を確認する習慣が身につきやすくなります。講習はあくまでスタート地点で、本番はふだんの運転だという意識を持つと、講習の効果が長続きします。
- Step1: ふだんの運転で左折するとき、サイドミラーで後輪と縁石の距離を意識して確認する
- Step2: スーパーの駐車場で、隣の車との間隔を見ながらゆっくりバックする練習をする
- Step3: 講習当日は「うまくやろう」ではなく「指導員のアドバイスを聞こう」の気持ちで臨む
70〜74歳と75歳以上で実技はどう違う?年齢別に比較

70〜74歳は「高齢者講習のみ」でOK——実車指導に合否なし
70〜74歳の方が免許を更新する際に必要なのは、高齢者講習(2時間・6,450円)のみです。実車指導は講習の一部として行われますが、合否判定はなく、受講すれば「講習修了証明書」が交付されます。この証明書を持って免許センターや警察署で更新手続きをすれば、免許の更新が完了します。
70〜74歳の方に合否判定がない理由は、この年齢層の講習が「教育・指導」を目的としているためです。自分の運転の特徴を客観的に知り、今後の安全運転に活かしてもらうことが主眼であり、ふるい落とすことが目的ではありません。
具体的な流れとしては、教習所に電話で予約→講習日に受講(2時間)→修了証明書を受け取り→免許センターで更新手続き、というステップです。講習は更新期限の6か月前から受けられます。
注意点として、二輪免許のみの方や原付免許のみの方は実車指導が不要で、座学と適性検査のみの1時間講習(2,900円)になります。普通自動車免許を持っている方が対象です。
75歳以上は「認知機能検査」が加わる——検査の結果で講習内容が決まる
75歳以上の方は、高齢者講習の前に「認知機能検査」(1,050円)を受ける必要があります。この検査は、記憶力や判断力が一定の水準にあるかを確認するもので、講習とは別の日に実施されることが多いです。
認知機能検査が75歳以上に義務づけられている理由は、認知症が原因の重大事故を防ぐためです。2017年の法改正で強化され、2022年の改正でさらに制度が見直されました。
検査の内容は、「手がかり再生」と「時間の見当識」の2種類です。手がかり再生では、16枚のイラストを覚えて後で思い出す課題が出ます。時間の見当識では、検査時の年月日や曜日、時刻を回答します。100点満点中36点以上で「認知症のおそれなし」と判定されます。
36点未満の場合は「認知症のおそれあり」と判定され、医師の診断を受けることになります。ただし、診断の結果「認知症ではない」と判断されれば、免許の更新は可能です。検査で低い点数が出ても、それだけで免許が取り消されるわけではありません。
75歳以上で違反歴がある方は「運転技能検査」——こちらは合否あり
75歳以上で過去3年間に信号無視、速度超過、横断歩行者等妨害などの一定の違反歴がある方は、「運転技能検査」(3,550円)を受けなければなりません。こちらは高齢者講習の実車指導とは異なり、100点満点の採点方式で、70点以上が合格です。
運転技能検査が2022年5月に導入された背景には、75歳以上の重大事故のうち一定の違反歴がある方の事故率が高いというデータがあります。講習だけでは防ぎきれない事故を減らすため、実技の「合格基準」を設けた制度です。
検査の課題は、指示速度による走行、一時停止、右折・左折、信号通過、段差乗り上げの5項目です。高齢者講習の実車指導とほぼ同じ課題ですが、こちらは減点方式で採点されます。たとえば、一時停止線を越えた場合や段差乗り上げ後に1m以内で止まれなかった場合に減点されます。
運転技能検査は更新期限までに何度でも再受検できます。ただし、更新期限までに合格できなかった場合は免許の更新ができず、免許は失効します。再受検のたびに3,550円の手数料がかかるため、1回目で不合格だった場合は、指摘された課題を練習してから再受検するのが賢明です。
実は意外と知られていない「二輪免許だけの方」の講習内容
意外と知られていないのが、普通自動車の免許を持たず二輪免許や原付免許のみを持っている方の講習内容です。この場合、実車指導は不要で、座学と適性検査のみの1時間講習(2,900円)で済みます。
実車指導が不要になる理由は、高齢者講習の実車指導が「普通自動車」で行われるためです。二輪車での実車指導は設備や安全面の問題から実施が難しく、座学と適性検査で身体機能の変化を自覚してもらう形になっています。
ただし、75歳以上の方は二輪免許のみでも認知機能検査(1,050円)は必要です。また、普通自動車免許と二輪免許の両方を持っている方は、実車指導ありの2時間講習を受けることになります。
「自分はどのパターンに該当するのか」は、免許証の左下に記載されている「免許の種類」で確認できます。不安な場合は、更新ハガキに記載されている連絡先に問い合わせると、必要な講習内容と費用を教えてもらえます。
高齢者講習の実技で「不合格」はある?採点の仕組みを正しく理解
高齢者講習の実車指導には合否判定がない——安心して受講できる
繰り返しになりますが、高齢者講習の実車指導には合否判定がありません。70〜74歳の方も、75歳以上(違反歴なし)の方も、講習を最後まで受ければ「講習修了証明書」が交付されます。段差乗り上げで止まれなくても、S字で脱輪しても、不合格にはなりません。
合否判定がない理由は、高齢者講習の目的が「免許の可否を判断すること」ではなく、「加齢に伴う身体機能の変化を自覚してもらうこと」にあるからです。自分の運転のどこに注意すべきかを知り、今後の運転に活かすための時間です。
具体的には、実車指導の後にドライブレコーダーの映像を見ながら、「ここで確認が遅れていましたね」「このカーブではハンドルを切りすぎていますね」といった個別のフィードバックがあります。指摘を受けた内容をふだんの運転で意識するだけでも、事故リスクは下がります。
ただし、講習中に明らかに安全な運転ができない状態(たとえば、ペダルの位置がわからない、信号の色が識別できないなど)が見られた場合は、指導員から免許の自主返納について説明されることがあります。あくまで「説明」であり、強制ではありません。
「合否あり」の運転技能検査と混同しないで
高齢者講習の実車指導と混同されやすいのが「運転技能検査」です。この2つはまったく別の制度で、運転技能検査には明確な合格基準(100点中70点以上)があります。
混同されやすい理由は、どちらも教習所のコースで車を運転し、似たような課題を行うからです。しかし、運転技能検査は75歳以上で一定の違反歴がある方のみが対象であり、該当しない方には関係がありません。
| 項目 | 高齢者講習(実車指導) | 運転技能検査 |
|---|---|---|
| 対象者 | 70歳以上の普通免許保持者 | 75歳以上で一定の違反歴あり |
| 合否 | なし(受講すれば修了) | あり(70点以上で合格) |
| 費用 | 6,450円(講習に含まれる) | 3,550円(講習とは別途) |
| 不合格の場合 | 不合格の概念なし | 再受検可(期限内に合格が必要) |
| 再受検 | — | 何度でも可(毎回3,550円) |
更新のお知らせハガキに「運転技能検査」の記載がない方は、高齢者講習だけで免許の更新ができます。ハガキの内容をよく確認し、自分がどの手続きに該当するかを事前に把握しておくことが大切です。
「講習を受けたくない」場合の選択肢——免許返納と経歴証明書
講習を受けること自体に不安がある方や、「そろそろ運転を卒業しようか」と考えている方には、免許の自主返納という選択肢があります。返納の手続き自体は無料で、最寄りの警察署や免許センターで行えます。
免許を返納すると身分証明書がなくなることを心配される方が多いですが、「運転経歴証明書」を申請すれば、免許証とほぼ同じ形の身分証明書として使えます。交付手数料は1,100円で、有効期限もありません。
運転経歴証明書を持っていると、自治体やバス・タクシー会社が提供する「運転免許返納者向けの割引サービス」を利用できることがあります。内容は自治体ごとに異なりますが、コミュニティバスの無料乗車券やタクシー割引券などが代表的です。
返納を検討する際は、家族と相談のうえで決めるのが理想的です。お住まいの自治体の窓口に問い合わせると、返納後に利用できる交通支援サービスの一覧を教えてもらえます。
当日までに準備しておきたい持ち物と服装
持ち物は4つだけ——忘れると受講できないものがある
高齢者講習の当日に必要な持ち物は、①運転免許証、②講習のお知らせハガキ(更新連絡書)、③講習手数料(6,450円または7,500円)、④眼鏡・補聴器(免許条件に記載がある方)の4つです。特に免許証を忘れると受講できません。
この4つが必要な理由は、本人確認と手数料の納付が講習の受付で行われるからです。ハガキには受講すべき講習の種類や予約日時が記載されているため、教習所側が受付を進めるうえでも重要です。
手数料の支払い方法は教習所によって異なり、現金のみの場合と、収入証紙を事前に購入して持参する場合があります。予約の電話をした際に「当日の支払い方法」を確認しておくと、当日慌てずに済みます。
筆記用具は教習所で用意されていることが多いですが、メモを取りたい方は持参してもかまいません。指導員からのアドバイスをメモしておくと、後日の運転で参考になります。
- ☑ 運転免許証(忘れると受講不可)
- ☑ 講習のお知らせハガキ(更新連絡書)
- ☑ 講習手数料(金額を事前に確認)
- ☐ 眼鏡・補聴器(免許条件に記載がある方)
- ☐ 筆記用具(メモを取りたい方)
服装は「ふだんの運転に近い格好」がベスト
高齢者講習の服装に特別な決まりはありませんが、実車指導があるため「ふだん運転するときと同じ格好」で行くのがベストです。ペダル操作に影響しない靴と、動きやすい服装を選びましょう。
服装選びが大切な理由は、ふだんと違う靴や服だとペダル操作の感覚が変わり、本来の運転の実力が発揮できないからです。講習の目的は「ふだんの運転のクセを知ること」なので、いつもと違う条件で走っても意味がありません。
具体的には、靴はスニーカーや運転靴など底が薄くてペダルの感覚がわかりやすいものがおすすめです。厚底の靴、サンダル、ヒールの高い靴は避けてください。また、サングラスは適性検査で外すことになるため、ふだんの眼鏡で行くのが無難です。
季節によっては厚手のコートやダウンジャケットを着ている方もいますが、運転席では脱いだほうがシートベルトがしっかり装着でき、ハンドル操作もしやすくなります。教習所の教室は空調が効いているので、脱いだ上着は教室に置いておけます。
予約は「2〜3か月前」が安心——混雑時期に注意
高齢者講習は完全予約制で、特に都市部では予約が取りにくくなっています。更新期限の6か月前からハガキが届きますので、届いたらすぐに教習所に電話して予約を入れるのが安心です。理想は更新期限の2〜3か月前に受講を完了しておくことです。
予約が混み合う理由は、教習所のキャパシティに対して受講対象者が増えていることにあります。高齢ドライバーの数は年々増加しており、都市部の教習所では3か月待ちということも珍しくありません。
具体的な予約のコツとして、1つの教習所にこだわらず、近隣の複数の教習所に電話してみることをおすすめします。住所地に関係なく、どの都道府県の教習所でも受講できます。隣の市区町村の教習所のほうが空いている場合もあります。
注意点として、更新期限を過ぎてしまうと免許が失効する可能性があります。やむを得ない事情(病気・入院・海外渡航など)で期限内に更新できない場合は、事前に免許センターに相談すれば期限延長の手続きができることがあります。
講習後に「運転が不安」と感じたらどうする?
講習で指摘を受けた内容を「ふだんの運転」で意識する方法
講習で指導員から受けた指摘は、ふだんの運転で意識的に改善していくことが大切です。たとえば「一時停止が甘い」と指摘された場合は、その後1週間、一時停止のたびに「完全に止まる」「左右を見る」と声に出して確認する習慣をつけると、自然と体に染みつきます。
講習後の改善が重要な理由は、講習は「気づき」を得る場であって、それだけで運転技術が向上するわけではないからです。気づいた課題をふだんの運転で実践してこそ、事故のリスクを減らせます。
具体的な改善方法として、講習でメモした内容(または記憶している指摘事項)を紙に書き出し、車のダッシュボードに貼っておくという方法があります。「確認動作を大きく」「ブレーキは早めに」など、短い言葉にまとめると目に入りやすくなります。
家族と一緒に運転する機会がある方は、助手席の家族に「一時停止ちゃんとできてた?」と聞いてみるのも効果的です。自分では気づきにくいクセも、隣で見ている人には分かることがあります。
ペーパードライバー講習やシニア向け運転教室を活用する
高齢者講習を受けて「もう少し練習したい」と感じた方には、教習所が提供するペーパードライバー講習やシニア向けの運転教室がおすすめです。高齢者講習とは別の有料サービスですが、自分のペースで苦手な課題を練習できます。
シニア向け運転教室が増えている背景には、高齢者講習だけでは十分な練習時間が確保できないという声があるためです。講習の実車指導は1人あたり10〜15分程度と短く、「もっとS字を練習したい」「駐車の練習をしたい」というニーズに応えきれていない現状があります。
費用は教習所やコースによって異なりますが、1時間あたり5,000〜8,000円程度が目安です。マンツーマン指導が基本なので、自分の苦手な部分を重点的に練習できます。教習所のコースで練習するため、公道のような危険もありません。
自治体によっては、シニア向けの交通安全教室を無料で開催しているところもあります。お住まいの市区町村の交通安全課や地域包括支援センターに問い合わせてみると、近くで開催予定の教室を紹介してもらえることがあります。
「そろそろ卒業かな」と思ったら——返納のタイミングと家族との話し合い
講習を受けて「運転に自信がなくなった」と感じたら、それは運転を卒業するタイミングを考える大切なサインかもしれません。免許の自主返納は、自分と周囲の安全を守るための前向きな選択です。
返納のタイミングに「正解」はありませんが、一つの目安として「ヒヤリとする場面が月に2回以上ある」「家族から運転を心配されるようになった」「夜の運転や雨の日の運転が怖くなった」といった変化が見られたら、真剣に検討する時期と言えます。
具体的な進め方としては、まず家族と率直に話し合うことが第一歩です。いきなり「返納しなさい」と言われると反発を感じるものですが、「一緒に考えよう」という姿勢であれば、冷静に話し合いやすくなります。運転をやめた後の交通手段(バス、タクシー、家族の送迎、移動支援サービスなど)を具体的に調べておくと、話し合いがスムーズに進みます。
返納を決断された方は、お住まいの自治体の運転免許返納支援制度を確認してみてください。タクシー利用の補助やコミュニティバスの無料パスなど、返納者を支援するサービスが年々充実してきています。
免許を返納したあと「やっぱり不便だ」と後悔するケースもあります。返納を検討中の方は、まず1か月間「車を使わない生活」を試してみるのも一つの方法です。バスやタクシー、家族の送迎で生活が回るかどうか、実際に体験してから判断すると後悔が少なくなります。
安全運転を長く続けるための3つの習慣
「まだまだ運転を続けたい」という方にとって、講習は安全運転を見直す絶好のきっかけです。講習後に3つの習慣を取り入れるだけで、安全運転の質は大きく変わります。
1つ目は「定期的な視力チェック」です。加齢とともに視力は変化しますが、変化が緩やかなため本人は気づきにくいのが特徴です。年に1回は眼科を受診し、必要に応じて眼鏡の度数を合わせることで、見え方の不安を解消できます。
2つ目は「運転する時間帯を選ぶ」ことです。夜間の運転や、通勤ラッシュ時の運転を避けるだけでも、事故のリスクは減ります。朝9時以降〜夕方4時までの明るい時間帯に運転を集中させると、視界が確保しやすく、交通量も比較的穏やかです。
3つ目は「体調が悪い日は運転しない」というルールを家族と共有することです。風邪薬を飲んだ日、睡眠不足の日、気分が落ち込んでいる日は、判断力や反応速度が低下します。「今日は調子が悪いから運転はやめておく」と言える環境を作っておくことが、長く安全に運転を続けるための土台になります。

まとめ:高齢者講習の実技は「試験」ではなく「安心のための時間」
高齢者講習の実技(実車指導)は、免許のふるい落としではなく、自分の運転を客観的に見つめ直すための時間です。段差乗り上げやS字走行など課題の内容を事前に知っておくだけで、当日の緊張はずいぶん和らぎます。
70〜74歳の方は合否判定のない講習のみで免許更新ができ、75歳以上の方は認知機能検査が加わります。違反歴のある75歳以上の方のみ、合否ありの運転技能検査が必要です。自分がどのパターンに該当するかは、更新のお知らせハガキで確認できます。
大切なのは、講習を「受けて終わり」にしないことです。指導員からのアドバイスをふだんの運転に活かし、安全運転の習慣を一つずつ積み重ねていきましょう。
この記事の要点をおさらいします。
- 高齢者講習は座学30分+適性検査30分+実車指導60分の計2時間で、費用は6,450円(75歳以上は認知機能検査1,050円が別途必要)
- 実車指導の課題は、指示速度走行・一時停止・右折左折・信号通過・段差乗り上げ・S字・クランク・方向転換など
- 実車指導に合否判定はなく、受講すれば修了証明書が交付される
- 段差乗り上げのコツは「アクセルをじわっと踏み、越えたら即ブレーキ」の3ステップ
- S字・クランクは「ゆっくり走って、目線を先に向ける」ことで落ち着いて通過できる
- 75歳以上で違反歴のある方のみ「運転技能検査」(合否あり・70点以上で合格)が必要
- 予約は更新期限の2〜3か月前に入れるのが安心。都市部では混雑が続いている
まずは更新のお知らせハガキを手元に用意して、お近くの教習所に電話で予約を入れることから始めてみてください。早めの予約が、余裕をもって講習に臨むための第一歩です。
※制度の詳細や最新の手数料については、お住まいの都道府県の公安委員会または最寄りの運転免許センターにご確認ください。
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